部下の育成に携わる中で、その難しさを痛感されている方も多いと思います

「過去と他人は変えられない。変えられるのは自分と未来だけ」

この言葉の通り、他人は変えられないからこそ、「もう無理だ」と諦めたくなってしまうお気持ちは、本当によく分かります。

「知識がないからどうしようもない」
「性格に難があるからどうしようもない」
「すぐに言い訳ばかりするから、もう手の打ちようがない」

そう思ってしまうのも無理はありません

では――「本当に、それだけなのでしょうか?」

いま見えているその姿は、その人のたった一面に過ぎないのかもしれません


少し私自身の体験をお話しさせてください

以前、ある方(Aさん)から「コーチングをしてほしい」とご依頼をいただいたことがありました

Aさんとは過去にセミナー等でご一緒したことがあったのですが、正直なところ、当時の私にとってAさんは「苦手なタイプ」でした。発言といえば自慢話や武勇伝ばかりで、延々と自分語りを続けるような方だったのです

私はAさんに対して、人として好感を持てず、当初はお引き受けを断ろうかとも悩みました

しかし、独立してコーチの仕事を始めたばかりの頃で、実績も自信もまだない時期。「いただいた依頼を断るわけにはいかない」という焦りもありました

とはいえ、Aさんに対するネガティブな印象やイライラ感はどうしても拭えません

そこで私は、自身のコーチにセッションでこのことを扱うことにしました

私の中に溜まっていたモヤモヤやイライラ、Aさんへの苦手意識を一通りすべて吐き出しました。

じっくり聴いてくれたコーチは、こう言いました。

コーチ:「あねごの気持ち、すごく伝わってきたよ。それくらい相性が合わないと感じているんだね。……ところで、そのAさんについてもう少し聞かせてほしいのだけれど、Aさんってどんな人?」

私:「どんな人、ですか? ええと……年齢は何歳で、どこに住んでいて、ご家族は奥様とお嬢さんがいて……?? ……うーん」

思わず言葉に詰まった私を見て、コーチから

コーチ:「いま『うーん』と止まったけれど、あねごの中で何が起きている?」

私:「……いえ、Aさんに対してイライラする気持ち自体はまだあるんです。でも、奥様やお嬢さんがいて、家庭がある。ということは、私はイライラするけれど、イライラしない人もいるし、家族として愛し、生活を共にしている人たちがいる。だとしたら、私にはまだ見えていない、その人の愛される部分や魅力があるかも……と思ったんです」

コーチ:「なるほど、視点が変わったということ?」

私:「そうですね。。。私には『自慢話』に聞こえていたことも、見方を変えれば『自分から場に話題を提供する力』や『相手に熱量を持って伝える力』がある、とも言えるのかもしれません」

コーチ:「Aさんのネガティブに感じていた側面を、別の角度から捉え直すことができているようですね」

私:「そうですね。『嫌い・苦手』という感情に囚われていた状態から、別の視点で相手を見つめ直せるようになりました」

セッションはそこで終了し、その後スタートしたAさんとのコーチングは、結果として4年もの間、伴走を続けさせていただく深いご縁となりました


「あの人はこういう人だ」「分かりきっている」

そう思っているときほど、実は自分自身の見方や枠組みが凝り固まっていることがあります

そしてその固定観念が、自分自身の世界や、相手との可能性を狭めてしまっているのかもしれません

対話を通じて、自分の中の「決めつけ」や「観察の枠」に心地よい揺らぎを与えてみる

 

 

部下の才能や能力を逆の角度から見てみると、どんな未来が立ち上がりますか?



そのとき、目の前の相手との関係に、一体どんな新しい未来が立ち上がってくるでしょうか。