4400円で買ってきた中古のD-152Eをマルチアンプ駆動してなんか意味があるのか。
まあ、そんなのはやってみないと判りません。そして意味なんてあっても無くてもいいのです。
趣味なんてそんなものです。
①まずはD-152Eを改造。
D-152Eのスピーカー内部のネットワーク(クロス周波数 2.5KHz)を通さずに、エンクロージャの外までツイーターとウーハーの配線をそれぞれ引き出しました。
上側がツイーターの端子。そこら辺い落ちていた陸軍端子を使いました。下側がウーハーの端子。もともとD-152Eの端子を流用しました。
バイワイヤ仕様風にも見えますが、HPFもLPFも通していないので、実験終わったら戻しておかないと、間違えそうです。
だから復元可能なように、もともとのスピーカーターミナルの枠の固定用のねじ穴を使って暫定のターミナル固定板を取り付けました。
②アンプをつなぎます。
PCのDACから出力したオーディオ信号をチャンネルディバイダ+マルチアンプ経由でスピーカーに流し込みます。
チャンネルディバイダはとりあえずテーブルの上に置いてそのまま使います。
取り合えず音出し優先で、配線をつなぎこみます。
かなり雑に配線作業を済ませていますが、暫定結線ということで。
そしてウーハー駆動用のTA-F555ESR (1号機)
ツイーター駆動用TA-F555ESR (2号機)
ここから先はいろいろ音楽を聴きながら、聴感だけでセッティングを決めていきます。
実際にはベンチマークのスピーカー(某 2way )を基準に音を聞き比べながら、それよりも再現性を高めるような音作りを心掛けました。 その結果、ベンチマークのスピーカーの音(メーカーの吊るしセッティング)よりも、いい音出せたかなと思えるレベルまで煮詰めました。
③どんな特性になったか。
ここ最近セッティングをほとんど変えずに運用できているので、暫定の成果確認として「とある日のD-152Eのf特(チャンネルディバイダ+マルチアンプ駆動)」 を測定してみました。
私の感覚的には若干ハイ上がりにしたつもりでしたが、、、、、ちょっとディップが出ているけど、
思ったよりフラットでした。
アンプ側の設定でLow側はおおよそ25Hz以下をカットしていますが、低温側は40Hz付近でもそれなりに音が出ています。
1か月程度、いろいろいじって、どんな音楽もそれなりによく聞けるように耳を頼りに合わせていった結果が、まさかフラットな特性に収束してしまったことに驚きというか、感心してしまいました。
ちなみにD-152Eの本来のパッシブネットワークのクロスポイントは2.5KHzですが、私は最終的に2KHzぐらいにクロスポイントを設定しました。
もちろん、本来のパッシブネットワークのLC構成の減衰特性(12dB/Oct)と、今回使ったアクティブネットワークの24dB/Octの減衰特性だと、セッティングが違って当然です。
ちなみにチャンネルディバイダで2KHz付近にクロスを設定した状態で、ウーハーだけ鳴らしたときの図。2KHzから上で本当は-24dB/Octの減衰がでているかな、と思ったのですが、諸々の理由で、そこまでの減衰は見られませんでした。
同様にチャンネルディバイダを生かした状態で、ツイーターだけ鳴らしたときの図。24dB/Octの減衰なので、2KHz付近を基準(0dB)にすると、1KHzでだいたい-24dBです。
④ボツになったネタ
個人的にD-152Eのクロス周波数の設定で面白かったのは、1.2KHzぐらいにクロスを設定するか2KHz付近にクロスを設定するかでかなり悩んだことです。
ツイーターとウーハーの音量バランス次第では、1.2KHzクロスでもいいと思う音楽ソースというかジャンルが結構ありました。
まあ、1.2KHzクロス周波数は、高音と低音がリッチなセッティング、とでも言いましょうか。
世間一般では中音域がスッカスカというか、いわゆる
ドンシャリ
です。
悩ましいのは世間一般「ドンシャリ傾向の音とは安いスピーカーで頑張って出している音=安っぽい音というネガティブなとらえ方が普通ですが、 80年代から90年代のロックとか意図的なドンシャリの音作りです。お金をかけてドンシャリな音をを作りこんでいます。 そりゃあクラッシックとかを再生するのに、お金かけて作りこんだドンシャリな再生環境で聴いたら、、、、、そりゃあバランスが悪くて仕方ないでしょう。 でも、世の中にはドンシャリな再生環境で聴いたほうがいい音楽もあります。そういう音楽を聴くのならば1.2Kにクロス周波数を動かして、ツイーター側の音量を少し増やし気味にするのも悪くない(むしろご褒美)と思いました。
ただ、ウーハーとツイーターのバランスとしてツイーター側の音量を上げる必要があるので、全体の音量を上げていったときに、D-152Eのツイーターの限界というか、飽和してしまっていて、音が割れて苦しそうなので、音量の上限が、若干下がります。 ということで、1.2KHzのクロス周波数での煮詰め検討を断念しました。 D-152のユニットの組み合わせでは、音量を上げていっても破綻しない(しにくい)2KHz付近のクロス周波数で良しとして実験を終えました。
⑤結論、
D-152エンクロージャーとD-152Eのユニットで、周波数的にはかなりフラットな再生特性にセッティング可能であることと、D-152Eを効率よく鳴らすにはドンシャリのセッティングではなく、f特としてはフラットなセッティングが好ましいと感じました。
スピーカーからの出音でフラットなf特性のセッティングが一番よかった、ってオチは予想していませんでした。 フラットな特性は、やはり面白みがないと思っていましたが、少なくとも私の視聴環境(6畳の部屋)では、フラットにしても、D-152EらしさというかONKYOのスピーカーらしさはしっかりと残った結果になりました。
エンクロージャーのフロント下方のスリット状のバスレフポートについては一切いじっていないことがONKYOらしさになっているのかもしれません。
f特性を測定して貼り付けておきながら今更言うのはちょっと「脳が残念なヤツ」を自認するような話ですが、スピーカーの聴感上のキャラクターは、f特で語れない部分の影響のほうがはるかに多く、かつf特以外のパラメーターこそが重要なのだと思います。
まあ、2way スピーカーをステレオで使うということは、部屋の中で4つの電気式アクチュエーターをオープンループ(フィードバック無し)で駆動して部屋の中の空気をかき混ぜている仕事です。4つのスピーカーユニットの位相や応答性などのほうがより大きな影響を及ぼしているといえますが、このあたりの測定は大変めんどくさいです。いずれそういったところまで検証できれば面白いかなと思いますが、まだまだ先の話になりそうです。
チャンネルディバイダを使ったマルチアンプ化は小さな2wayスピーカーのドライブであっても、音に変化があることと、そのセッティングは面白いということが分かったのは収穫です。折を見て家にあるほかのスピーカ-でも試してみたいなと思いました。エンクロージャーまで設計して作成したり、スピーカーユニットへの入れ替えなどのハードルの高さと比べれば、エンクロージャー内のネットワークを外して、各スピーカーユニットの配線を引っ張り出しさえすれば、自分の好みでスピーカーの音を作りこむ面白さを味わえるということを感じました。