GWに入ってここ最近を振り返ってみると、アンプの修理というかメンテが続いてしまい、スピーカーのセット数よりもアンプの数のほうが多い始末。
アンプ修理などでスピーカーの繋ぎ変えが頻繁になり、音出し確認に使うための中古スピーカーを激安で買おうと思ったのがコトの始まりです。
仕込みとして、GW前にONKYO D-152Eが4400円で買ってきたのですが、そのまま放置。買ってきた時点では、こいつの本当の実力には気づいていませんでした。
4400円の個体は、①天板の色むらがあって、②裏面から見たときに、パネルの小口を隠すための黒い艶消しの樹脂シールが剥がれてなくなっていて、外板のMDFが丸見えな状態でした。
裏面には銘板があり、基本諸元が書かれています。
インピーダンス4Ω、Max Power handling 80W。そしてMade in Japan。
ダンピングファクターを高くとれない真空管アンプには
4Ωのスピーカーは、ちと厳しいなと思うが、
パワートランジスタやFETなどでドライブする分には問題ないだろう。
しかし、
最大入力 80W (本当か?) 。
まあ、一回り小さいD-112NFXだって最大80Wだけど、、、、、
最大入力ではなく連続耐入力が何ワットなのかが重要。
Made In Japanって、さすがに眉唾物である。
同年代のONKYOのD-112Eや後発D-112ELTDなどは中国製造にシフトしている。
いつまで日本国内で製造していたのか知らんけど、
その前後で製造場所が変わったにしても、設計と品質管理がしっかりしていれば、
MDFの箱をわざわざ日本で作るのは意味がないような気がする。
ネットの口コミを頼りに特徴を探ると、D-112Eよりも上の機種で、同価格帯のD-112ELTDよりは評判がよく、D-212EXのレベルには達していないけれど、D-212EXよりも音に艶(つや)があるそうな。
まあ、価格帯とかスペックで並べた模範解答のような口コミである。
うーん、間違っちゃいないだろうけど、正しくもないのだろうな。
それから
艶 ?
ツヤなんじゃそりゃ。
艶とやらが何なのかは家に持ち帰って、アンプにつないで鳴らしてみれば
判るのだろうか。判るといいな。
D-112Eよりも上位機種なら、それなりの音は出るだろうと思う。
そしてD-112EXTよりも良い音が出る可能性があるのならば、
税込み4400円は安い。まあ、音が悪かったとしても、アンプの音出しチェック用には充分である。
瑕疵があるのは天面と裏面だけど、これも常に見える場所ではない。
むしろこのおかげで相場よりも安いならお買い得である。
メインユニットのコーンには薄い焼け色を感じるけれど、
20年ぐらい昔のスピーカーなので相応のレベル。
コーン面に変なシミ、汚れ、破れ、変形は無いので、脱色はしなくてもいいかな。
これでまともな音が出たら、お得だったな、と思えるだろう。
D-152Eのメインユニットのエッジは布エッジなので、とりあえず穴がいなければ張り替える必要もないかな。
この口径のスピーカーだと、そこまでコーンやボイスコイルが重いわけでもないので偏芯することは無いと思っていましたが、さすがに20年前のスピーカーなので、エッジが下側に若干偏芯している様子。コイルはタッチしていないけれど、手を打ったほうがいいかな。
手を打つといっても、こんなのは、メインユニットを180°回して取り付ければ済む話。20年かけて垂れてきたのなら、天地を入れ替えれば(20年後とは言わなくても)そのうち元に戻るだろうという、
気の長い話。
チャチャっと作業。
ん?ユニットの裏をを見ると、チープな板金の防磁シールド(?)仕上げ風の
Made in Chinaのユニット。
これ、ペア(2本)で発売当時6万円のスピーカーだったと思うのだけど、
本当にペア6万円の中身かどうか不安に思う。
25W そして 3.5Ω の記載が。
インピーダンスなんて周波数で変わるとはいえ、
3.5Ωは低いなぁ。もしかするとアンプを選ぶかもしれない。
耐入力は25ワットか? 多分そうだろうな。
まあ、このサイズのスピーカーに80Wの信号を流し込んでも、音が割れてまともな音なんて出ません。
そもそも、瞬間でも25ワットも流し込んだらボイスコイルが一発でブチ切れてご臨終かな、と思えるレベルの作りのしょぼい ユニットに見えます。
最初から耐えられそうなイメージが湧いてきません。
(註:まだD-152Eの音を聞く前の感想です)
磁気回路はむき出しではなく板金の防磁シールド(?)がされているようだけど、
ゴムダンパーなどがついているわけでもなく、変な共鳴音が出そうです。今どきブラウン管のモニターを使っているわけではないので、磁気シールドとか要らないけど、
この辺りの部分は、音出しする前にとやかく言うことではないかもしれないけれど、
そこはかとなく
クセの強いスピーカー
の予感。
ちなみにエンクロージャーの内面をのぞき込むと、しっかりと吸音材が入っています。目の粗い比較的硬めの吸音材で4.5面分ぐらい貼られていました。貼られていない部分は、正面の板の内面、ツイーター周辺の左右側板の天面から下に向かってわずか5cmぐ程度の長さ。MDFむき出し。正面の板の裏側には吸音材が貼られていないが、こちらは普通の処理。
ツイーターの周辺の側板に吸音材を意図的に貼っていない理由は減衰を考えてあえて貼っていないのか、どうかは知らんけど、6万円のスピーカーで吸音材の長さを10cmかそこらケチってどうするという話。意図があって貼らなかったのだろうと思い込むことが精神の安定には必要です。
まずは音出しのため、メインユニットの天地を変える以外は元通りに組付けていきます。
そして アンプに繋いで、音出し開始です。
。。。おいおい、D-112NFXよりも自然な臨場感がありながら、
全然良い音を出しているぞ、
これ。
ニアフィールドでの比較で、D-112NFXが完全に負けている。
しかも、D-152Eのほうが中高音が前に出ている。総じて華やか。だけど締まって聞こえる。
よく情報量が多いとか、少ないとかそういう言い方があるけれど、D-152Eはこもったり、もやもやするような余計な情報がD-112NFXよりも少なく、解像度が高く感じます。
ツイーターも自然な鳴り方で、近くで聴いても、しっかりとメインのユニットをサポートしている。
低音もこのサイズのスピーカーにしては驚くぐらいに出ている。
確かに、D-112NFXのほうが音に包まれているし、ボーカルも近く感じるけれど、D-152Eと比べると、残念ながらD-112NFXはピントが合っていない感じがする。
いつの間にか、D-152Eを基準にD-112NFXを評価してしまった。
うれしい誤算。
良い意味でD-152Eの内部の見た目に騙されました。
D-152Eのメインのユニットを裏から見ると、D-112NFXと比べて、しょぼいのです。おもちゃみたいなチープなユニットです。エンクロージャの銘板にはMAX POWER HANDLING 80Wと書いてあるのに、25Wと書かれた中国製 の板金フレームのユニットが出てくるのですから、まともな音が出なくても、「ネタ」に使えるかな、と思っていたのに。
音だけ聞いたらめちゃくちゃコスパが高い。
ペアで6万円のSPに入っているユニットには見えないが、音は極めてまともです。
ただ、ユニットのインピーダンスが低いので、トランジスタ/FETを増幅素子に使うアンプならば、そこそこパワーの余裕は必要かな。見た目しょぼいし、25Wのユニットだけど(苦笑。
真空管アンプは、OPTに4Ωタップがあれば使えるかな。でも、真空管で鳴らすのならば、動作点と負帰還量を見直したいかな。まあ、動作点が適当でもどうにかなるのが真空管のいいところだけど。。。。 おっと、脱線してしまった。今日はスピーカーネタでした。
さて、中間結論。
D-152Eが思ったよりも
まともなスピーカー
だということ。ちょっと前の自分に「内部のユニットのしょぼい見た目に惑わされるな」、と言いたいです。
一方で残念な点として、低音側で音程の繋がりが悪いというか、
低音域でやたら響く音とまったく響かない音があって、
低音側のf特性がガタガタしているというか、暴れん坊状態。
この辺りは、もう少し吸音材やバスレフポートまでの音の経路、部屋の中でスピーカーを置く位置を見直していけば改善できそうな感じです。
先ほどユニットをエンクロージャから外した際に内部の吸音材を見たときには問題ない感じだったが、気になったのは吸音材の硬さです。もっとグラスウール寄りの繊維の細かさと柔らかさが欲しいかな。
このままD-152E標準の吸音材のままでチューニングするのは、調整の方向性の予測が立てづらいので、早々に使い慣れた銘柄の吸音材に変更することにしました。
ということで吸音材を入れ替えるために、スピーカーをサクサク分解していきます。
スピーカーを正面から見ると、底部に黒い袴状態の全面バスレフポートがありますが、エンクロージャ底面奥にバスレフポートを設けて、そこから、黒い袴部分でフロント側にバスレフポートから出る音をを導いているのだけど、これが2000年以降のONKYOのスピーカーらしい音を作っていると感じています。
底面の4本のねじを外すと、エンクロージャーの底面にあけられた本来のバスレフポートがあります。ポートの中を覗き見ると、エンクロージャー背面下方にメインで使っている吸音材よりも低密度で薄い(10mm程度)のスポンジ状の吸音シート(モルトフィルタ)が貼られていましたが、劣化が激しく、触っただけでぼろぼろ崩れてしまいます。背面のMDFが透けて見えるような目の粗い吸音材というか、まったく役に立っていないようなスポンジの密度です。加水分解も進行しており、手でつぶすとべたべたして始末に悪いので、掃除機ですべて吸い取りました。
ちなみにオリジナルに近い密度のスポンジは、100均などで販売している使い捨ての台所用スポンジでも代用できそうかな。
色は全く違いますが、厚みも目の粗さもオリジナルのD-152Eのモルトフィルタにかなり近似しています。
いや、ちゃんとモルトフィルタを買ってもいいけど、おそらく120mm×40mmぐらいを2枚とか、少なすぎです。シート1枚単位で、入手しても、数年で加水分解とかするから、オリジナルにこだわる必要はないかな。
ただ、こんな後ろが透けて見えるようなスポンジだと、低音域の減衰はほとんど期待できません。今回私が目指している方向性には合いませんので、使いません。
エンクロージャ内に貼ってあるメインの吸音材も取り外します。
写真手前にある白い吸音材がD-152純正の吸音材です。天面-背面で1枚、側面-底面-側面で1枚。左右分なので、合計で4枚です。
こちらは、熱帯魚の水槽の濾過用のフィルター材の硬さや密度に近いです。
上の写真の左上にもちょっと見えていますが、新しい吸音材はミクロンウールを使います。
個人的には、吸音材をエンクロージャ容積で中型から大型はグラスウール、小型はミクロンウールという感じで使い分けています。小型スピーカーにグラスウールを入れると、変化が大きすぎて微調整が難しいです。
ミクロンウールのいい点は、若干多めに入れても、低音が不足するようなことはない。詰め込めば中音域がどんどん下がっていく。いわゆる「かまぼこ」カーブのf特の補正にはこれ一択。あとは、エンクロージャ内の場所場所で厚さや膨らませ方を変えて、調整していきます。
吸音材を完全に撤去した後のD-152Eのエンクロージャ内の写真。ツイーターの取付穴から覗き込んだ形。右側が底面(底板)。底板内面側に斜めの梁を入れているのは底板の下をバスレフポートとして使っているので、共振を防止する目的かな。。
さて、ミクロンウールを内部に敷き詰めて固定していきます。
次の写真は、上記写真を時計方向に90度回した画像になっていますので、
下方奥が、エンクロージャの底部にあけられたバスレフのポートになります。
ちゃんとバスレフポートに向けて空間を確保し、吸音材が障害物にならないように注意します。
寸法的には、エンクロージャ内部の天面から背面を150mm×500mm1枚で成形しながら貼り付け。
側面と底面は、180mm×500mmに切り出した吸音材で側板上部50mmから70mmほどの空間は板が露出した状態になるように調整。背面内側に貼る吸音材は、効率よく吸音させるために、若干しわが寄るぐらいに貼り付けます。均質にしわを作るのが結構難しい。
ここまでくれば、あとは元通りにユニットを仮組で組みつけて、そしてひたすら音楽を鳴らしてみて吸音材を足したり引いたり、膨らませたり、薄くしたり、隙間に吸音材を追加したり、厚みを変えたりして再び鳴らす、を繰り返す。
今日は邦楽中心に節操のない選曲になってしまいましたが、
踊り子/村下孝蔵
さらばシベリア鉄道/大瀧詠一
Nostalgia/浜田麻里
Cry for the Moon/浜田麻里
木枯らしに抱かれて/The Alfee
バラと雨/布袋寅泰
Yes-No /オフコース
ほか昭和から平成初期の曲を中心に。。。。
で、D-152Eの吸音材変更前と比べると、吸音材変更後は、中音域をかなり絞った状態にしました。おかげで中音域の解像度が高くなったことと、低音が相対的に大きな音になったので、ここから変に響く帯域をつぶしていきましたが、 最初は音楽聞きながらカット&トライでやっていましたが、音楽聞きながらではすべての低音域での暴れを解消できませんでした。
で、1時間ほどかけて、アンプに正弦波を入れて周波数を変えていきながら、エンクロージャが共鳴する波長と、共振位置を触って調べて、エンクロージャ内の一部に鉛シートを貼ったりして、ハコ鳴りをコントロールしたりと、吸音材以外の改造も必要でしたが、そのあと再び音楽をかけて聴いてみてとりあえず納得できるレベルに仕上げました。
欠点は、、、、、、スピーカーとしての効率はかなり落ちた状態です。吸音材で減衰させている部分が増えているので、同じ音量で聴くのに、アンプのアッテネーターを今までよりも開け気味にしないといけないです。、
そして、今日1日D-152Eをいじり続けていたら、D-112NFXの音について(ニアフィールドで単独で聴く限りでは)不満がなかったはずなのに、D-152Eと比べると、なんだか音がこもっているように聞こえてしまうという不満を持つようになってしまいました。
D-112NFXで音がモヤモヤしているように聞こえる原因は、D-112NFXは200Hz以下、特に120Hz以下の音が入ってくると、音質がこもる癖があるようだということまでは突き止めました。その辺りの帯域をカットすると、濁りが消えますが、低音がスッカスカになるので、あとはどうやって両立させることができるか、です。
いままでニアフィールドでD-112NFXで聴いていて感じていた包まれるような臨場感は、D-152Eと比べてしまうと、臨場感ではなく、エンクロージャ内で余計な音を殺しきれていなかった濁りがニアフィールドで聴く音量で鳴らしている分には、臨場感っぽく聞こえるバランスが成立していた、ということかなぁ、と想像します。
何にせよ、D-152Eのチューニング(というか、ほとんどデッドニング)を通じてD-112NFXで感じていた臨場感は、エンクロージャー内のコントロール不足で、たまたま小音量・ニアフィールドで臨場感を感じるような残響に聞こえただけだった、といえます。
チューニングしたD-152E、メインスピーカーとしてしばらく使おうと思います。