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mean と music

music や musique の語源はほかでもないミューズの女神たち Muses である。
これらの語のもととなったラテン語の musica は、"art des sons" 「音の技法」を意味するとともに、"art de la poésie" 「詩学」を意味する。そのラテン語 musica も、ギリシャ語で「詩的霊感(ミューズ)の」を表す mousikê, mousikos といった語の借用である。

だが、肝心なその "muse" を意味するギリシャ語 moûsa の語源については、あまり明らかにされていないようだ。Petit Robert には "d'origine obscure" 「起源が不明」とされている。

ところが、 Online Etymology Dictionary で mean を調べていた時に、中庸を意味する mean が古くは music を意味したという記述を見つけた。

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英語の mean は多義語。たいていの辞書は3つの項目を立てて説明している。そのうち3番手の「中間(の)・手段・財産」を意味する名詞および形容詞は、仏語の moyen と equivalent である。

古いフランス語で moyen は meen や meien。これらが英語に mean を与えた。
meen や meien はラテン語の medianus 「真ん中にあるもの」から。まあメディア・媒介か。

そもそも印欧語には「中間」の意味をもつ -medhi という語尾があった。
これはギリシャ語 mesos ドイツ語 Mittle 英語 middle と結びつくわけである。

ここで先の music の話に戻ろう。
今日「両極の中庸」を表す mean がその昔は music を表していたならば、music は何らかを伝える媒介だったということになる。ミューズの神様は媒介だったということか。だが、Muse が詩人の口を借りて語るのだから、詩人こそが詩的霊感の媒介者ではなかったか?

とりあえずギリシャ語の mesos と moûsa とは、関わりがあるのだろうと想像したというお話でした。