ちいさな海のエトセトラ | 冷やし蜥蜴

ちいさな海のエトセトラ

冷やし蜥蜴-ナガレハナ


が家の海水魚用水槽には性質がおとなしい魚やエビの仲間が数種類と、サンゴが所狭しと混在している。変化のすくない世界で彼らは毎日退屈なりに精一杯生活しているようだが、たまに何らかの事情でその命を終えて水槽を去って行く。骸になった魚は、水を傷めるのですぐさま取り出したほうが良い。しかし夜中にひっそりと亡くなっている時は、私が翌朝気が付いた時はエビなどが我が子たちに魚の食べ方を指南願いたいほど見事な「骨と皮」にしてしまっていたりする。

それでも辛うじてカシラや尾ひれの周りの身が残っている場合、こうなってはもはや水の汚れを気にするには遅すぎるので、ご馳走の残りはオオバナサンゴなどの口に押し込んでやる。実は今朝ハナゴイが落ちたのもそのパターンだった。

引き結んだやや淫靡なカタチの口に残骸を乗せると、オオバナサンゴは唇を軽く開き、からだをギュウと縮めて丸のみしようとする。ゆっくりだが普段アクションの少ない彼女にとっては最速の動きなのだろう、全身全霊をかけて体内に摂り込もうとしている姿が微笑ましい。「いあや、残り物ですまないね」と声を掛けて見守っていると、のそのそとヤドカリがやってきて、そのハサミでオオバナサンゴがすでに半分以上のみ込んだ残骸を引きずり出し、悠然と横取りしていった。突如食べ物を奪われたオオバナサンゴは未練がましくその口をポッカリとあけたままだったが、私もあんぐりとあけた口を閉じることができなかった。

もしかすると今夜は、オオバナサンゴの悔し涙で人工海水のナトリウム値が若干上がるかも知れない。












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