狙われる「シラク税」【2】 | PAGES D'ECRITURE

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フランス語の勉強のために、フランスの雑誌 Le Nouvel Observateur や新聞の記事を日本語に訳して掲載していました。たまには、フランス語の記事と関係ないことも書きます。

前回の 狙われる「シラク税」【1】 の続きです。

今回は原文Jeu étrange à l'Elysée で始まる段落からです。


SIDA : QUI VEUT
LA PEAU DE LA TAXE
CHIRAC ?



(つづき)

Jeu étrange à l'Elysée

(エリゼ宮での奇妙なゲーム)


 アリエット・マルティネスを含む、一部の議員にとって、それは余りにも巨額だ。あるいは少なくとも、十分にフランスのためのフランス的ではない。この夏、オートザルプの女性議員、マルティネスは、「確実に我国の」非政府組織に割り当てられる援助の「5%を留保する」ことを提案する。この考えはこれらの団体の大多数で激しい怒りを引き起こした。政府の方は、意見を表明していない。2008年以来、世界基金は他ならぬ人を大使として迎えたことを、言っておかなければならない・・・カルラ・ブルーニ=サルコジである。アンリエット・マルティネスもシラクの別の「赤ちゃん」に批判の矛先を向けているのは、この理由によるのか?「Unitaid がその活動をフランスの非政府組織に委任できることを私は望む」と、この国民議会議員は言う(「必要な規模を持った組織が全くない」!と、引き続いて認めつつも)。

 人道主義、そう、しかし青・白・赤の。共和国大統領府副官房長、グレゴワール・ヴェルドーが行うのもまた、同じ言説である。彼はまた・・・特に世界基金の大使としてしての活動において、自らが助言するカルラ・サルコジの側近でもある。エイズ対策の活動家を揺さぶる、驚くべき激突。ヴェルドー氏は何に賭けているのか?「ニコラ・サルコジは」、彼は『Le Nouvel Observateur』に言う、「私に、開発に取り組むフランスの団体を、より目に見えるようにするという使命を与えた。」 Unitaid への補助を犠牲にして? グレゴワール・ヴェルドーは曖昧な態度のままだが、断言する、「ジャン=ダヴィッド・ルヴィット Jean-David Levitte (大統領府外交顧問)はいつも言っていた、“フランスはUnitaidを愛している、しかしUnitaid も我々を愛さなければならない”と。その批判者の意見を聞く限り、Unitaid は、アメリカ人、殊にビル・クリントンに少しのぼせ上がりすぎている。

 合衆国元大統領の財団は実際、ユニセフや他の「メード・イン・フランス」のスタンプが押されていない機関と同じ程度に、Unitaid から資金を受けた計画の23%を実施している。これらの機関はしかし、フランスの団体とは逆に、現地での仲介者になることができる。特に、クリントンは抗レトロウイルス薬の大部分を生産する国を率いていた。「当初から、我々はそれをパートナーにすることに決めていた」と、シラクの元顧問、ロラン・ヴィジエは主張する。「成功するためには、アメリカ側に背を向けないようにしなければならなかった。」 Unitaid の創設の時、フィリップ・ドゥスト=ブラジはしたがって、ニューヨーク州チャパクア Chappaqua にある自宅まで「ビル」に会いに行った。「彼は私に言った。エイズと闘う唯一の方法は、製薬産業と交渉し、治療薬の価格を下げさせることだ、と。我々は一種の購買センター、市場のメカニズムを当てにして公衆衛生を改善する最初の国際組織になった。これは完全に革命的であり、その考えを私に与えたのはクリントンだ。」


Les labos au pied du mur

(決断を迫られる製薬会社)


 3年前から、ドゥスト=ブラジは、小さな作業班とともに、ほとんど同じ言葉を繰り返して製薬会社を巡回している。我々には金があり、あなた方が貧困国には決して高値で売ることのできない薬品に金を払うことができる、我々に割引すれば、あなた方はこうした薬品を売りさばくことができる。ウィン・ウィンだ、と。こうしてUnitaid は、抗エイズ薬の価格を50%から70%下げることに成功した。こうして、最初の小児治療薬の生産を獲得した(それまで、市場は製薬会社に興味がなかった。豊かな国々にはエイズを患う子供はいない)。そして、全ての人々が治療を受けられるための活動家たちが何年も前から夢見ていたことを、彼は実現しつつある。Patent pool initiative、あるいは正しいフランス語で、「 communauté de brevets (特許共同体) 」である。Unitaid の求めに応じて、そして貧困国のために、製薬会社は、エイズ、マラリア、結核に対する医薬品の特許を共同のものにするだろう、このことが一つだけの錠剤で(そして現在のように、複数個ではなく)投与可能な薬の製造を可能にする。この変動にもう一つが加わる。製薬会社は最新の(したがって最も有効な)特許をジェネリックに「貸し出す」(もちろん、ロイヤリティーと引き換えに)ことを受け入れるようになる。科学の最近の進歩に由来する治療を、Unitaid と貧困国にとって、より低価格で発展させることができるようになる。「我々がそれに成功すれば、以前のようなことは全くなくなる」と、ドゥスト=ブラジは言う。

 シラクとは反対に、元トゥールーズ市長は不人気の坂を再び登ることはなかった。彼はフランス政界のレーダー・スクリーンから脱出した。それでも数日後に、クリントンが前書きを書いた本、『 Power in Numbers 』をアメリカで出版する(Editions Public Affaire)。2008年以来、革新的資金調達に関して、国連事務総長バン・キムンの特別顧問でもある。内閣では、彼を知っていれば実に正当である。「エイズ対策において、フランスは世界のリーダーの一つだ。そのことを十分に言っていない」と、世界基金の局長で、国際的名声(なおもこの闘いの最先端にいるフランス人)に関する専門家、ミシェル・カザチュキヌ Michel Kazachkine は説明する。彼は時代遅れの議論の再出現を嘆く。「多国間に反対して二国間を称賛すること」、と彼は言う、「それは、1970年代の見方だ。」 援助を外交的、さらには経済的利益だけに基づいて調整することは、「パパ流の(あるいは、ゆっくりとした)」開発である。今日、世界基金は、しばしば無視されるが、Unitaid (400万人の血清陽性患者が南側諸国で治療されている、2002年には20万人に過ぎなかった)と同じくらい目覚しい成果を挙げている。そのことについてニコラ・サルコジはどう考えているのか?「9月16日」、Act Up のポリーヌ・ロンデ Pauline Londeix は語る、「彼は妻とともに、対エイズ団体を全て招待した。彼は我々に、地球温暖化とコペンハーゲンの首脳会議のことしか話さなかった。」 気候の税対エイズの税?一人の大統領につき、全く別の一つの闘い・・・


MARIE-FRANCE ETCHEGOIN


La TAXE que je paie sur les billets d'avion doit servir à acheter des médicaments GENERIQUES pour soigner plus de malades. ACT UP PARIS



私が航空券に支払う税は、より多くの患者を治療するためのジェネリック医薬品を買うのに役立つに違いない。 ACT UP PARIS


その企画立案者によれば、航空券に対する税は「痛みのない」課税であるという(フライトに1000ユーロ以上払うとき、クラスに応じて2ユーロから40ユーロ)。そして、世界化の果実を享受する地球の「エリート」と、しばしば旅行予約を利用する人類のその他との、一つの連帯の象徴である。航空会社の予想に反して、この税は輸送量を減らさなかった。今日、18カ国がUnitaid に資金を供給し、16カ国がそうすることを約束している。


Carla Bruni-Sarkozy - Grégoire Verdeaux

混線・・・ カルラ・ブルーニ=サルコジは、世界エイズ(・結核・マラリア)対策基金の大使であり、この基金は2010年、深刻な資金不足に陥ろうとしている。フランスはそれでも、他の全てのG8諸国と同じく、分担金を増やすことを拒否する。ファーストレディーの顧問、グレゴワール・ヴェルドーは、Unitaid に割り当てられているフランスの資金拠出を減らそうと思っていると、非政府組織に疑われている。


Philippe Douste-Blazy

Unitaid 会長、フィリップ・ドゥスト=ブラジは、ビル・クリントンとその財団の支援により、医薬品の価格を下げさせるために製薬会社と交渉している。「Unitaid は未来のモデルだ」と、元大統領は言う。


Bill Gates

税を支持するもう一人のアメリカ人!そもそも、毎年1000万ドルをUnitaid に寄付しているビル・ゲイツである。「フランス人は本当に、その貢献を誇りに思うことができる。彼らの税は毎日、100万人の子供たちのマラリアに対する一日分の治療の費用を支払うのに十分な金額を集めている。」 



Le Nouvel Observateur 2358 14-20 JANVIER 2010

http://hebdo.nouvelobs.com/hebdo/parution/p2358/articles/a416540-sida__qui_veut_la_peau_de_la_taxe_chirac_.html