タイトルを直訳すると、『人々は見えざる手を切断した!』ドミニク・ドンブル
Chronique
On a coupé la main invisible !, par Dominique Dhombres
LE MONDE | 24.10.08 | 14h07
聖教団(ローマ法王の高等諮問機関)の枢機卿たちが突然、ローマ法王を釈明の場に召喚するところを想像してみよう。「結局、神は本当に存在するのですか?」と彼らは法王に尋ねる。「私は疑いを抱いています」、ベネディクト16世は彼らに答える。「それでも、神学を研究しなかったせいではありません!しかし私は恐らく間違っていました、そして私が弁解することを赦していただきたい。」 必要な変更を加えれば、これがワシントンで起こったばかりのことである。アメリカのニュースチャンネルで、金融市場におけるローマ法王と同等の、アラン・グリーンスパンが10月23日木曜日、下院の専門委員会で質問に答えるのを見るのは魅惑的だった。
尋問の場は全く愉快という以外の全てだった。不快でさえあった。しかし最も驚くべきことは、当事者の告白だった。銀行家の利己主義が金融システムの安定の最良の保証であると推測して、本当に過ちを犯したのである。「銀行家の個人的利害が、株主を守るために最も良い立場にあったと思い込んで、私は過ちを犯した」、元連邦準備制度理事会FED議長は後悔しつつ言った。「私は18年間、調整者として働いてきた。私の経験では、銀行の融資担当者は、リスクについてFED(FRB)の最も優秀な調整者の誰よりもずっと良く知っていた」と付け加えた。
したがって彼は間違っていた。しかしそれが全てではない。彼は理由を全く知らない!「崩れたばかりなのは市場経済システムの基本的な柱だ。私はそのことに衝撃を受けている、そしてどうしてこのようなことが起こったのかまだ理解できない」、と告白した。アラン・グリーンスパンは陽気さで評判なのではない。愉快な男でもない。しかしそこで、彼は今にも泣き出しそうに見えた。誰かに玩具を壊されたかのように。国民の富を監視するとされている見えざる手を容赦なく切断されたかのように。各個人の利己主義的な性向は、自身も気づくことなく、社会全体の利益のために行動するように、不可避的に導かれるはずだった。明らかに銀行家にとってはそうではない!アラン・グリースパンは完全にそこに立ち返っていた。彼はニューヨークで、母親だけに育てられ(両親は離婚していた)、困難な子供時代を過ごした。父親はウォールストリートの証券仲買人だったのに。ロナルド・レーガンは1987年8月11日、彼をFRB議長に任命した。
2006年2月1日に退任するまで、後継の全アメリカ大統領によって、彼はそのポストに据え置かれた。彼は、金融市場を可能な限り最小限にしか規制すべきではないと常に信じてきた。今日、彼は自らが間違っていたことを認めている。
Dominique Dhombres
Article paru dans l'édition du 25.10.08
こうして、一つの時代は(日本以外では)終わりを告げようとしています。
日本ではまだ、しぶとく「カイカクが足りない」だのと言い続ける勢力が存在しますが。
また、総選挙の洗礼を受けていない3人目の総理大臣に代表される極端な右側の勢力は、新自由主義の次には国家社会主義を持ってきかねません。既に特定勢力へのバラマキという形で現れつつあります。
当の新自由主義の側は、自らを「新自由主義者」と呼ばれることをなぜか嫌う傾向があるようです。
話は脱線しますが、『週間東洋経済』の今週号は「医療破壊」特集で、大変読み応えのあるものでした。是非一読されることをお勧めします。この大変力の入った特集の影で見過ごされるかもしれませんが、150ページからの『新刊で読む経済古典・時代が求めたハイエクの「新自由主義」思想』の最後のコラム、「政府で仕事をした経済学者は堕落する」(高橋伸彰)を読むと納得できるものがあります。
小泉政権下で構造改革の舵取りをした竹中平蔵氏は『中央公論』の2008年11月号で、政治学者の山口二郎氏と「新自由主義か社会民主主義か」というテーマで討論するなかで、「私のどこが新自由主義者なのか」と言って、「新自由主義」のラベルを貼られることを強く拒否した。新自由主義者として市場を信じたハイエクとは違い、竹中氏は改革を進めるために市場を利用したに過ぎないのだろうか。竹中氏に限らず、新自由主義者のラベルを嫌う経済学者やエコノミストは、口をそろえて「私は市場が万能だとは思っていない」と反論する。しかし、ハイエクは、市場より人間が万能だとは思っていなかった。だから、政府を介して万能ではない少数の人間に行動を規制されるよりも、市場を通して可能なかぎり多くの人間と知識を交換し、自由に行動するほうが望ましいと主張したのだ。ハイエクは『ハイエク、ハイエクを語る』で「私の理論では、政府で仕事をした経済学者はみんな、政府で仕事をする結果として堕落する」と語った。なぜなら「経済学者ではなく、政治家になってしまう」からだという。もっとも、最初から政治的な経済学者であるなら、それも関係のない話である。
竹中といえば、かつて「市場原理主義者がいたら連れてきてください」と言ったこともありました。その場で鏡を見れば住んだのでしょうけど。グリーンスパンのように、議会で