連載小説更新しました。
よろしくお願いします。
 
まずわが巨人軍のお話から。
強い!
逆転勝ちができる!
投手陣も新しい顔ぶれ、そして、眠っていた顔ぶれが登場している!
打撃も 外国人がいい働きをしてくれている!
ビエイラ様が2軍なのは残念だが、大勢の勢いすごいですね!
日本人投手の抑えを待っていました。まだまだ若い!
肘に注意して長く抑えをやってほしいです!
 

 

連載についてですが、不定期のため 連載の時間の流れと使っているツール(携帯、メールなど)などのギャップがあるかと思いますがご容赦ください。

連載小説はマッキー連載小説のカテゴリーからもお読みいただけます。


 幸せとはなんぞや。
 少なくとも親戚にやっかいになっていた幼少期は決して幸せとは言えなかった。
 が、兄三門が将来不幸から連れ出してくれるかもしれないというかすかな希望は持っていた。
 確かに、三門は、プロ野球に入り、ちえたちは意地悪だった親戚との生活から脱却でき、あの頃はきょうだい水入らずで気兼ねなく生活できることが幸せだと感じたのは事実である。
 ちえは思うように家事をして、食べたいものを作ることができ、年が離れたきょうだいの面倒を見る、いわばおかあさんがわりの生活を由としていた。
 が、きょうだいの手がかからなくなり、かつ、三門がおきゅうと結婚してから、ちえが思うしあわせは遠のいていったように思う。
 一方周囲は、一般論的にちえのしあわせを願って、ちえに自由を与えた。
 家事からの自由、きょうだいからの自由。
 自由とはなんぞや。
(私の価値って何?)
 ちえは模索し、やはり人の世話をする方向の介護施設での仕事を選び、それなりに満足して生きて来たけど、結婚というものも、ちえの人生にあるだろうことは疑問にも思っていなかった。
 それに、結婚して新しい家族を持てばまたその世話をすることで生きがいを見出せる。
「愛してる」<「お世話ができる」
 こんな心境だったことも、ちえの判断を狂わせたのかもしれない。

 そこまで三門に話すと、ちえの身体がぶるぶる震えてきた。
「どうした?」
「ごめんあんちゃん・・・本当の本題はこのあとの話なので・・・ちょっと、かいつまんででもいい?」
 そう。
 ちえの過去からの話は、現在の三門に、いくらおきゅうを好きでもだめなものはだめという話をするためのものである。
「もうよか。ちえ、もうよか。わしはきゅう子とどんなことをしてでも一緒にいたいから」
 ちえの顔はいまだ青ざめ、冷や汗すら流れている様相だが・・・。
「いいよ、大丈夫。本題への流れでこの話も必要だと思うから・・・」
 ちえは、タオルで顔をぬぐい、水を飲むと深呼吸して話を続けた。

 信彦との付き合いはうまく進んだ。
 が、当時はあまり普及していない携帯電話を信彦は所持していて、ちえは珍しがり、
「すごいですねー、お仕事に使うの?」
「え・・・ああ・・・いやその・・・まあそうかな・・・」
 なぜか言葉を濁す。
 そして、信彦は男性のわりにやたらトイレに行くことが多かった。
 そして、デートはだいたいランチデートが多かった。
 そして、神野光子はデイサービスに来なくなった。
 当然 ちえは信彦に光子の様子を聴いたりするも
「大丈夫。母は、ちえさんと一緒に生活できるのを楽しみにしてて、それで頭がいっぱいで、家の中をどうしようかとか考えているんですよ」
 ちえはわざと敬語とため口を混ぜるも、信彦は一貫して丁寧語だった。
(より親しくなれば意識しなくても丁寧語じゃなくなるのかもしれない・・・)
 やはり、用心深いはずのちえのアンテナは、そのときはうまく作用していなかったのだ。
 ちえは、信彦から、交際にあたってこれだけはと頼まれたことがある。
「母と一緒にいさせてほしい、つまり、一緒に暮らしてほしい」
 というものだった。
 大家族があたりまえだったこともあったし、光子のことも知ってたちえは、深く考えずにOKをだす。
 母と一緒にいさせてほしいという言葉の意味を知らずに。    つづく

 

連載小説を更新しました。

よろしくお願いします。

 

プロ野球がいよいよ開幕しました!

わが巨人、3連勝できるはずが、惜しくも逆転負けしてしまいました😢

でも、2試合目は逆転勝ちをした。

そういうこともだから、あります。

まだまだ始まったばかり。

2勝1敗ならまずます。

明日からのヤクルト戦も勝ち越しあるいは3タテして、週末の阪神戦に臨んでほしい。

 

★投手陣

私が応援していたビエイラ様が二軍落ちです。

スピードはいいからコントロールなんとかしてほしい

じゃなければ、大勢に居場所奪われちゃう😿

もちろん、新しい 山崎、赤星、大勢と台頭してきたことは、今後の巨人にとって明るい出来事です。

でも、まだ、守護神はビエイラ様にしてほしい。

あと、今村が中継ぎで一軍に残りました。

いいんだけど、それでいいのか、今村!

 

★野手

野手は外国人がいいですね。

ウォーカーのあの髪型はいいのかって思いました。

巨人軍は「長髪ひげ禁止」じゃないの?て。

でも、絶対でもないみたいですね<m(__)m>

新巨人の星のときは、長髪のテスト生星飛雄馬に対して、支配下に採用という意味で「巨人は長髪ひげ禁止」といってたシーンがあってそれ以来私はそう思っていましたが<m(__)m>

ウォーカー、よくみたらかっこいいですね♪

 

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神野信彦。

神野光子の息子、もっといえば、「職場の利用者である神野光子の息子

かたくなに拒否していただけ。

職場関係はめんどくさい。

そう思っていただけ。

お茶出してゆっくり飲んでいってもらいたい・・・。

初対面じゃないから、ひとめぼれとはいえない・・・

(二度目ぼれ?)

違うかと、小首を傾げようとしたときだった。

 

 

「あの・・・もう少しお時間よろしいですか?」

おずおずとした信彦の物言いに、ちえは待ってましたとばかりに傾げかけた小首を戻し、縦に思い切り首を振る。

「じゃ、じゃあ、ほんと、お茶でもいかがですか?今日は利用者さんのご家族からいただいてるお菓子もあるんですっ」

 嬉々としてちえは立ち上がり、お菓子はクッキーだったので、お茶ではなく、コーヒーを入れて持っていく。

「あ、かえってすみません・・・こんなにまでしていただいて・・・」

「いいえいいえ、いいんです。コーヒー、なかなか飲んでくれる人がいないから、ちょうどよかったわ・・・」

 いらんこと言ったかと脳内が汗ばむちえ。

 こんな気持ち、いつ以来か・・・。

 いや、初めてかもしれない。

(となると、初恋?)

 とんでもなく遅すぎる初恋・・・

(仕方なか・・・親戚の家にやっかいになったあげく、あんちゃんが結婚するまでは家のことやってて誰かとつきあうとか、そんな感情を持ったことがなかった)

 

「三門さん・・・僕が無礼な態度をとってしまったのは、僕には好きな人がいるからです・・・」

「ええっ」

 思わず叫ぶちえ。

 勝手に暴走し、ピンク色に染まっていた脳内が一気に真っ暗になってしまった。

 ところが、信彦は 違うというように小さく首を振り

「僕には、好きな人がいた からでした・・・」

 信彦が言い直したこと、語尾が弱弱しいことにも、まったく疑問も持てないほど、ちえはがっかりしている。

「好きな人、いや、好きだった人ですが、どうにもならないのです」

 またも言い直しているのだが、

「そうですか・・・どうにもならないんですね」

 職業がらか、つい繰り返してしまう。

「でも、ちょっと気持ちが変わってきました」

「気持ちが変わった・・・って、は!?」

「ご無理を承知でお願いがあります」

「オネガイ?」

「僕と、お付き合いしていただけませんでしょうか」

 真っ黒だったちえの脳がまた一気に活性し始めた。

 だめかと思っていたのに望む展開になった、嬉しいけど、展開早すぎ。

 だいたい、今までの人生において、そうそう思い通りになったこともなかったし・・・。

 だから、こんな簡単に幸福が転がってくるなんて いいのだろうか。

 用心深さが顔を出す。

 

 

 だったら、その前の、信彦が言い直したところに気づけば 違っていたかもしれない。

 つづく

 

 

連載小説を更新しました。

前回更新のときは、プロ野球キャンプイン前日でした。

今は季節が進み、オープン戦も始まっています。

早咲きの桜は先始めています。

でも、世の中はコロナも含み不安定で、早く平和な世の中になってほしいものです。

オープン戦、わが巨人は、特に投手陣はフレッシュな面々が台頭しています。

うかうかしてられないと思うのは、戸郷、高橋優貴、今村。

今村は応援してるのになー・・・日曜日も精彩を欠いていました。

こんな調子は今季オフあぶない!

野手では、中山らいと

キャッチャーでは、山瀬に注目したい。

かわいそうというか、小林は二軍戦でも打てないようですが、なんでこんなことになってしまったのかと思います。

走塁では、増田だいきが昨年からいまいちであるうえに、彼は代走一本で行けばいいと思うのに、本人の意向なのか球団の意向なのか普通扱い。

守備もよくないし打てないし、でも、走塁だけを磨けばこの人は残れるのにと思います。

今季こそ優勝してほしい!がんばれ!巨人軍!

 

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 ちえの本意ではないが、確かに事実ではあるので、仕方なくちえは

「すみません」

 頭を下げるも、施設長の出方によっては、望まぬことであったことは言わなければ。

「今、息子さんが来てるんだよね」

「は?」

「いや、息子さんが、ちえさんに会いたいっていうんだよね。で、事情を聴いたら昨日3人で会ったことについてだっていうから・・・なんか問題でもあるの?」

 光子から息子と結婚しろと強要されてる、問題と言えば問題。

「まあでも、怒ってる感じでもないけど・・・で、ちえさんと2人だけで話せないかって言われてて」

「え、それはちょっと・・・施設長も同席していただけますか」

「もちろん、ちえさんがそれでいいなら。ちょっと待ってて」

 なんなのか。

 ちえのことになんか本当に無関心に見えた息子信彦。

(まさか結婚してくれなんか言わないよね・・・)

 だったらなおさら、第三者に同席してもらい、こういうお願いはやめてほしいと言ってもらわねば。

 

 ほどなく施設長が戻ってきた。

「二人で話したいそうです。でも、攻撃的な雰囲気ないし、もし何かあったらすぐ呼んでください、で、内容は必ず報告してください」

「はあ・・・わかりました」

 足取り重く、面会室に向かうちえ。

 面会室に入ると、スーツ姿の信彦が立ち上がり、深々と頭を下げるのにちょっと驚いた。

「昨日は申し訳ありませんでした」

 こんな声だったっけ。

 昨日のイメージとはずいぶん違う。

 こんなにしっかりした声だっけ。

 ちえは改めて信彦を凝視する。

 昨日の投げやりっぽい、かつ、頼りなげなイメージが一変、別人みたいになんだか意思を感じる表情。

 ある意味神野光子の子供だなって思った。

「少しだけお時間頂戴してよろしいでしょうか」

 へえー・・・常識的・・・感心しながら口が勝手に

「はい」

 肯定していた。     

「あ、お茶お持ちします」

 いいかけたちえは信彦に手で制される。

「お仕事中のうえに、お手間取らせるわけにはまいりません」

 そんなことが言える男なのか。

(だったら 私この人とつきあってもいいかも)

 神野光子はちょっと小うるさそうだけど、光子自身もそれを望んでいるのだから、嫁姑の関係もなんとかやっていけるのでは。

(そうよ、親戚にやっかいになってたときよりは ましだわ)

 場合によっては、ちえこそ昨日勝手に切り上げて帰ってきてしまったことを詫びすらしなければならないかも。

 脳内でどんどん話が進んでいく(笑)

「やはり、三門さんには私の思いをお伝えしておかないと失礼かと思いまして・・・」

 私の思い・・・。

 ごくりとつばを飲むちえ。

 心臓がバクバクしてきた。

 つづく

 連載小説を更新しました。

 よろしくお願いします。

 明日からいよいよプロ野球界キャンプイン。

 コロナ禍ではありますが、無事キャンプを行っていただきたいものです。

 明日から日テレG+ではわが巨人軍のキャンプ中継がスタートします。

 またこの季節がやってきた!

 優勝目指して頑張れ、巨人軍!! 

 

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なお、現在の更新と並行して、前回からですが、第1話めからもご案内していきますので、ご興味ありましたら、お読みいただければ幸いです。(前回は第3話も合わせて紹介しています)

よろしくお願いします。

その4:波乱の年賀状 連載小説はマッキー連載小説のカテゴリーからもお読みいただけます。

 

喫茶店に入り、ちえは つい光子の介助をしようと手を出しかけた。

息子の信彦がいるなら余計なことかと様子を見るも、信彦は光子の方を見ずに店員の後についていき、さっさと座ってしまったので、ちえは光子の手をとり、席につかせた。

「ちえさん、強引なことしてごめんなさい。でも、一度息子とどうしても会ってもらいたかったの。どう?息子と結婚したら一生生活には困らないし、私は脚は悪いけど、迷惑はかけないどころか、もし、子供ができても私も一緒に面倒見ることできるし、どうかしら?」

 どうかしらって・・・今時そんな言葉がけじゃ逆効果ってことがわからないのか。

「あの、本当にそんなご立派な息子さんなら、もっとつりあったお嬢さんとかたくさんいらっしゃいますよ。私にはもったいないですって」

「そんなことないわよ。あなたは人の話をよく聴いてくれるし、家庭的であるのは見ててわかっているの。優しいお嬢さんと息子には結婚してほしいんです。ただそれだけなの。息子にもいろんなお話あるのよ、でも、あなたが一番なの」

「いろんなお話あるならまだこれからも優しい方は現れますよ」

「いいえ、ちえさんが一番いいの」

 光子と会話しながら、肝心な信彦が一言も発しないのが気になった。

 信彦は我関せずという感じでコーヒーを飲み終えて窓の外なんか見ているし。

「ねえ光子さん」

 ちえは信彦に視線をやりながら質問する。

「息子さんは結婚する意志はあるんでしょうか?」

 正直ちょっと辟易していた。

「もちろんあるわよ」

 光子が答える。

「いえ、私が伺いたいのは、信彦さんご自身にです」

 本当はこんな質問などせずに終わりにしたかったが、あまりに光子が一方的に信彦を売り込み続け、ちえがつきあうというまで口撃をやめないんじゃないかと危惧したので仕方がない。

「ノブくん、あなたからもお願いしなさい」

 携帯をいじっている信彦が、顔をあげた。

「ああ・・・よろしくお願いします」

 全然感情がこもってない。

 さすがにちえは腹が立ってきた。

「光子さん、ごめんなさい。息子さんは私とはそういうおつもりはなさそうですので、これで失礼します。本当にもっとふさわしいお嬢さんを見つけてあげてください」

 伝票をつかんで立ち上がる。

「ちえさん、息子はお願いしますって言ってるじゃないの!」

 光子の口調がきつくなった。

「ごめんなさい、でも今も息子さん携帯いじってて私の顔もろくにご覧になられてないですよね。だから、私なんかじゃなくてほかの方のほうがいいと思います。失礼します」

 会計をして外にでた途端、若干後悔するちえ。

 もっとうまくかわせなかったのか。

(あーもしかしたら職場辞めなきゃいけないかもなー)

 居心地よかったし、傾聴だけやっていいなんて条件のところはもうないだろうし。

 

 翌日。

 職場に行くと施設長から呼び出された。

「昨日神野光子さんと会いましたよね」

「はい・・・」

 なぜ施設長がそんなことを知っているのか、光子がなんかいいつけたのか。

「勤務時間以外に利用者と会うのは禁じられているはずです」

 つづく         

明けましておめでとうございます。

本年も不定期ながら、昨年よりはなんとか多く更新できるようにしていけたらと思います。

皆様のご健康とご多幸をお祈り申し上げます。

そして、今年こそは、コロナが落ち着くこと、わが巨人軍が日本一になること

これを願いつつ・・・。

 

連載小説を更新しました。

不定期のため 連載の時間の流れと使っているツール(携帯、メールなど)などのギャップがあるかと思いますがご容赦ください。

なお、現在の更新と並行して、前回からですが、第1話めからもご案内していきますので、ご興味ありましたら、お読みいただければ幸いです。(前回は第2話も合わせて紹介しています)

よろしくお願いします。

 その3:左腕修復のウラ 連載小説はマッキー連載小説のカテゴリーからもお読みいただけます。

 

 

 光子から見せられた息子、信彦の写真。
 スーツを着てかしこまって佇んでいるその体はまるで見合い写真。
「・・・素敵な息子さんですね・・・」
 言いながらも、写真に写っている息子は笑みを浮かべるでもなく、表情がない。
 光子がちえの傾聴を求めた目的がわかった。
 見合い写真というものも、かつて見たことはある。
「あなた、この子どう?」
 やはりそうきたか。
 施設におけるちえの評判はよく、まだ若くて独身ということで、そのような話はいくつか舞い込んできたのだ。
 だが、ちえは、どれも受けなかった。
 うまくいかなかったら利用者と面倒なことになるだろうし、うまくいったら、やはり、うまくいかなかった利用者との関係悪化は避けられないかもしれない。
 うちの孫はどうか、息子はどうか。
 かといって、「見合いお断り」とぴしゃっとシャットアウトする、彼氏がいるんです、などというのも、大人げないし、結果利用をしぶられたり、やめられたりするのもまずいので、のらりくらりとかわしている。
 結婚願望は一応あるけど、しがらみのないところで見つけたいのが本音だった。
 正直言えば、会ってみたかった男性もいないでもなかった。
 でも、上記の理由をはねのけてまで会いたいとは思えなかった。
 今回、神野光子の息子 信彦も同様であり、断る理由を考えなければと頭を巡らせるちえ。
「私にはもったいないですよ もっと高学歴のお嬢さんとか見つけられたらいかがですか?」
 やんわり断って収めた・・・つもりだった。
 が、数日後。
 施設から出て自宅最寄り駅で降りたときだった。
「ちえさん」
 聞き覚えのある声に振り向くと・・・
「光子さん!?」
 神野光子が若い男性と一緒に杖をついて立っている。
 なぜ、光子はこの駅をちえが使っていることがわかったのか。
「ちえさん、ごめんなさいねこんなところまでおしかけて。でも、どうしても、息子に会ってほしくて、息子を連れて来たのよ」
「はあ・・・」
「ほら、ノブくん、挨拶しなさい」
 若い男性、つまり、息子信彦が、かすかに頭を下げた。
(よくあるパターンか?)
 ちえは親子にわからぬようため息をつく。
 お見合いあるある、親はその気でも子は全くその気なしというパターン。
 まあ、ちえとて、母親から公の場で「ノブくん」なんて呼ばれて平気でいるような男は勘弁だ。
 とはいえ、光子とは今後も関わっていかなければならない。
(だからしがらみのある見合いは嫌)
 仕方なく
「ここじゃなんですから、お茶でも・・・」
「まあ、いきなり・・・でも、私がいるから、ノブくんと2人というわけじゃないからいいかしらね」
 意味不明。
 どういうこと?
「ちえさんのおうちはここから近いのかしら?」
 言われてやっと、ちえの家でお茶すると勘違いされていることがわかった。
「いえいえ、近くに喫茶店があるからそこでお茶でも・・・テーブルも広いし、光子さんも座りやすいと思います」
 即座に訂正提案しながらも、超気が重くなるちえであった。
 つづく


 

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なお、現在の更新と並行して、前回からですが、第1話めからもご案内していきますので、ご興味ありましたら、お読みいただければ幸いです。(前回第1話も合わせて紹介しています)

よろしくお願いします。

年内の更新はこれが最後かもしれません。

寒波やコロナなどまだ落ち着きませんが、来年は自由に行動できればいいなと願っています。

わが巨人の優勝も願っています。

よろしくお願いします。

 

その2:恐怖の健康診断 連載小説はマッキー連載小説のカテゴリーからもお読みいただけます。


 介護施設では高齢者の話し相手も仕事のうち。
 かつて弟妹が喧嘩したときや、言うこと聞かないときなど、言い分などを辛抱強く聴いてやった経験も生かされる。
 「ちえちゃんに聴いてもらいたい」
 そんな老人たちが増えて、やがて、ちえは、傾聴専門で働くようになった。
 
 専門で働くことによって、より傾聴に関して学ぼうと、何か疑問があった際は、カウンセラーであるおきゅうを頼ろうかとも思ったが、せっかく家を出たのに、また、無駄に三門たちのことが気になってしまったりするのはしんどかったので、やめた。
 ただ、おきゅうからは時々安否確認の連絡はあったので、通り一遍の返事をしてやりすごした。
 三門から言われてやっているのか、それも義務的っぽくてもやもやするし、かといって、おきゅうの独断でというのも、素直に喜べなかった。
 一番いいのは・・・もちろん、三門が幸せでいること、そのためには三門とおきゅうが腹の底から仲良くしてくれること。
 でも、おきゅうに頼んだところで、おきゅうも社交辞令でわかったと返事をするだけだろう。
 あまり突っ込めば、三門の心も傷つけてしまうかもしれない。
(だから、そういう余計なことを考えないために離れたんだから)
 ちえは、仕事に精をだす。
 
「へえ、息子さんがいるんですね」
「そうなのよ。私がいうのもなんだけど、ほんとにいい子なの。国立大学出て今会社の係長なんだけど、同期ではトップなのよ」
「すごいですねー、神野さんが立派に育てた結果ですね」
 ちえは、新しい利用者である神野光子の話し相手をしている。
 素性も含めてどんな人物なのかも確認するのも役目。
 光子は、一日おきに利用しはじめた。
 一応来ている利用者には声をかけ、傾聴予約があれば別室で話を聴く。
 利用開始後3か月目 光子から傾聴予約が入った。
 傾聴予約をしてくる利用者の目的は、家族の愚痴、施設利用者との人間関係、施設職員との人間関係、施設の不便さなど。
 初回に話を聴いて以来は、特段不満そうな様子も見せず、挨拶もにこやかにしてくれる光子にも聴いてほしいことがあるのか。
 まあ、中には、過去の自慢話を聴いてほしいという利用者もいるので、光子もそのたぐいかもしれない。
(出来がいい息子のことは自慢に思っているようだし)
 ちえは、お茶を持って部屋へ入った。
「光子さんこんにちは」
「三門さん、今日はあなたにお願いがあるの」
 ほう、お願い。
 やはりなんか、ここかなんかに不満でもあるのか。
 傾聴内容は、施設内だけで共有し、改善につなげるべきものは改善している。
 光子はカバンの中を少しあさりはじめる。
「・・・?」
「あーあったわ。忘れてきちゃったかと思った・・・」
独り言ちながら、光子は一枚の写真をぺらっと机に置いた。
「この方は?」
「息子よ。信彦っていうの」
「そうなんですね」
 家族の写真を見せられることは今までもないわけではなかった。
「かっこいいでしょ?」
 つづく

 

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その1:信州は寒い 連載小説はマッキー連載小説のカテゴリーからもお読みいただけます。

 

 

 

改めて、三門はおきゅうを心底愛しているも、おきゅうは違う。

三門のことは嫌いではないだろう。

でも、嫌いではないと、好きは全然違うし、ましてや愛しているなんていう領域におきゅうはいない。

生理的には三門を受け付けられているだけまだ三門にとっては、ましなことなのかもしれない。

ほかの兄弟は、そんなとところまで気づくほど大人ではないし、みんな男。

(女が演技できるところまでなんかわからないだろう)

三門のためには、おきゅうに、もっと三門を愛してやってと懇願したい気持ちと、そんなことしたら三門のプライドが傷つくだろうという葛藤で、しばらくもんもんとしていた。

(でも、先がある。2人の気持ち、いや、きゅう子さんがあんちゃんを愛してくれる日もくるかもしれない)

願いをこめて、何も言わずにちえは家を出た。

表向きは、好きなことをしていいと三門に言われたから

「じゃあ私も自由な生活を謳歌するね」

という理由で。

真実はちえの存在がかすかにでもおきゅうにうっとうしさを感じさせているかもしれなければ、それも解消されるかもしれないというかすかな期待が大きく、自由な生活はどうでもよかった。

 

 

「じゃあ・・・ちえは、わしたちのために家を出たっていうのか!おきゅうはわしとのことを喜んでいなかったっていうのか!」

 かけ離れた質問を連投する三門。

「心を鬼にしていえば、どっちもイエスよ」

 吐き捨てるように言うちえ。

「ちえ・・・ちえ・・・」

 わなわなと絶句している三門に、ちえは続ける。

「さっきも言ったけど、私も相いれない人を愛しちゃったの。相いれない人はだめなの。あんちゃんにもわかってほしいから、私の話を聴いて、そして、あんちゃんも、苦しくても、きゅう子さんのことは、あきらめたほうがいいと思うの」 

 

 ちえの話は続く。

大家族に囲まれて世話をする生活しかしたことなかったので、アパートの一室にひとりきりという状況下で、ちえは正直寂しかった。

「金のことは気にせんでよか。好きなことを見つけてやったらよかと」

 三門はそう言ってくれたけど、そのような余剰資金は、おきゅうとの楽しみに使ってほしかった。

 もちろん、三門は野球で稼いでいるから、おきゅうが不満になることはないだろうけど。

 好きなことと言っても、本当に、実際のところ、何をしていいのかわからず、食材を買っても、一人分の分量がわからず、余らせてしまい、同じものを食べ続けるか、ちょうど夏場だったので、腐らせてしまったりした。

(弟が好きだからたべさせよう・・・ああ、ひとりなんだった・・・)

 がっかりして、スーパーに行っても、何も買わず帰ってくることも。

 一人で食べるなら、作るよりも総菜を買う方が経済的かもと思ったら、なんだか涙が出てきた。

(家にいるからいけないんだ・・・)

 外に出よう。

 家族がちえを必要としないなら、ちえを必要とするところを探せばいい。

 ちえは、介護関係の仕事を始めた。

 人の世話には慣れていたから、とはいえ、最初は戸惑いや疲労も半端なかったが、かえって余計なことを考える間もないのがよかったかもしれない。

 仕事が終わった後は、食べたいものを買って帰り、入浴、洗濯したら睡魔に見舞われ、あっという間に朝が来る。

 老人の話し相手や、下の世話も、数が多いので大変だったが苦ではない。

「ありがとねー」

 お礼を言ってくれる老人すらいて、ちえは、やりがいを感じ始めた。

 つづく  

 

 

大変申し訳ございませんでした。
連載小説「マッキーS湖ナチュラルズの男たち」の前段階、今で言えばエピソードゼロ的作品である
「その後のひょうま」

よく見たら消えていたことがわかりました<m(__)m>
なので、改めて載せさせていただきます。
かなーり古い設定になっています。
しかし、連載をリアルに掲載できなかったため、時代設定がずれて行ってしまいました。
申し訳ありません。
なので、時代設定のずれ 使用しているツールなどのずれなどはご容赦いただき、温かい目で読んでいただければ幸いです。<m(__)m>



(読まれる方へ。これは私の独断と偏見にみちみちた小説です。(笑)ご了承の上、お読みいただければ幸いです。
尚、作品の無断転載はご遠慮願います。よろしくお願いします。(~o~))

その後のひょうま
 
 200×年のある夜、人気の無くなった東京ドームをぼんやり眺めている男がいる。
(自然の風はなくなってしまった・・・)
 ほとんど声にならぬつぶやき。
 観客席に半ば放心状態でいる、この光景、どこかで見た光景だ。
(大リーグ3号の投げすぎで医者から左腕崩壊を予言されたときも、俺はここにきて・・・)
 左腕崩壊を示唆されても、大リーグ3号を投げ続けようと悲壮な決意を固めた。30数年前、まだ二十歳前の頃のこと。東京ドームも「後●園球場」だった。
(心地よい風が俺の決意を後押ししてくれたものだ)
 
 50歳過ぎた今、星ひょうまは強烈な孤独感に見舞われている。
(あの時はまだましだった!)
 30年余り前は、いわゆる「死刑宣告」を受けながらも心配してくれる友、在籍していた巨●軍メンバーらがいた。心配して自宅マンションに訪れた親友・半ちゅうた(当時●日ドラゴンズ捕手)に対し、ありがたいとおもいつつ、心のどこかで実はわずらわしさを感じていたのも事実。
 今は誰もいない。

 197×年。20代後半のひょうまは二度目の恋をした。一度目は、巨●軍左投手時代の宮崎キャンプで。相手は高校中退して看護婦をしていた同い年の故・みーな。ところが恋に夢中になるあまり、野球に対し「人並みのトレーニング」しか出来なくなっていたひょうまは、監督から二軍行きを命じられ、実質的に野球をとるか恋愛をとるか二者択一を迫られた。「巨●の星をつかむ」という壮大な夢を抱いているひょうまは、みーなに別れを告げることに。ところがみーなはメラノーマというガンに冒され、余命いくばくも無いという。ひょうまは驚き、悲しみ、嘆き、野球のことなど吹っ飛んでしまった。みーなのことが100パーセント頭から離れず、亡くなってからは「生ける屍」状態に。
 以後、立ち直るも、恋はすまいと自らに誓って過ごしてきた・・・のに。右投手として巨●軍にカムバックしていたひょうまの前に、けーこという女優が現れる。高校時代の仲間で漫画家として成功した牧はるひこの伝で。ひょうまとけーこは互いに一目ぼれをしていた。が、相手の気持ちを知らないためにひょうまもけーこも悩む。しかも親友・半ちゅうたがけーこを好きだと公言して、自社のCMに起用、さらにはプロポーズまでしてしまうという大暴走。亡きみーな以外誰も愛さぬと誓ったはずなのに、毎朝目覚めるとけーこを思ってしまう、若いひょうま。野球にも集中できなくなり、思い余って父、いっかつのアパートへ。恋愛相談を父親にする息子もどうかと思うが。(こわい)(笑)いっかつはいっぱつでひょうまの恋の相手がけーこであることを見抜き、ひょうまを驚かせる。
「わしなら友情をとる!そしてみーなを不死鳥としてを心の中にすまわせる」
 断言するいっかつ。
「そうか、確かに相手の気持ちもわからないし」
 妙に納得して、ついでに投球フォームの注意も受けてアパートを辞したが、今思えば、このときに
「ひょうまよ!おまえも若いのだから力いっぱい恋愛しろ!親友から女を奪い取ってもかまわん!いけいけひょうま」
 とけしかけられていたら、或いは今頃、違う気持ちでドームを眺めているか、ドーム自体にも足を運んでなかったであろう。
 半の大暴走に終止符を打ったのはけーこ。けーこは半の気持ちがわかると、CM契約を解除し、プロポーズを断り、牧にひょうまを好きである旨を伝える。いっかつから事実を聞かされたひょうま(父親から聞かされるというのもちと恥ずかしいかも)は、喜びながらも、親友・半を心配する。半の家に行くと、自棄酒で家のものをぶち壊している半の姿が。
「おまえは俺のために死ねるか?」
 尋ねるひょうま。イエスと答える半。涙を流しながらひょうまも
「俺もお前のために死ねる」 
 涙がぼろぼろ流れ、ひょうまは恋より友情をとったのだ。後日けーこと遭遇するも、ひょうまは無視し、己の恋愛を断ち切った。   
 以後、ひょうまは野球に打ち込み、今一度宮崎にあるみーなの墓前で
(俺の心の中に君をすまわせておく)
 手を合わせるのであった。
 翌年には、右投げ大リーグ一号も開発、左腕投手時代のように巨●軍に傾倒していくひょうま。しかし、やがて魔球も永遠のライバルであり、いまや姉・あきこの夫でもある鼻形みつるに打倒される日が。
 鼻形にも、もう一人のライバルでもある三門ほうさくにもジャストミートされ、限界を感じ始めた。
 左腕投手時代のようにそう簡単に二号を生み出すことも出来ず、己の限界を感じるように。当時監督のN嶋からも、来季の戦力には入っていないと告げられてしまった。
(これが恋も捨て、青春のすべてを、いや、俺のすべてを野球にささげてきた結果なのか!)
 そんなひょうまに追い討ちをかける出来事が。
 本シーズン終了と同時に、本当にひょうまはN嶋から戦力外通告をされる。
「来季は一軍投手コーチをしてもらいたい」
 承知するしかなかった。野球以外、何も出来ないのだから。
 半主催でひょうまの現役引退お疲れ会が開かれた。
「主役は勿論星、おまえだが、俺も報告することがあるんだ。ふふふ」
 意味深な笑いをする半。
 お疲れ会には、鼻形夫妻、三門夫妻(妻は、元番長おきゅうさん)、牧、いっかつが出席。
 すでに三十歳目前のひょうまは場をわきまえており、タキシードを新調して会に臨む。
「本日はわたくしのために、このような盛大な会を開いていただきまして、ありがとうございました・・・」
 無難に挨拶もこなした。
 なごやかなうちに宴も進み、グラスとビールを持ち、各テーブルを回るひょうまだが
(半も報告することがあるとか話していたっけ・・・一体何なんだろう)
 気になっている。
「さて、宴たけなわですが、この辺でひとまずお開き・・・と行きたいところですが、わたくし、半より報告がございます。えー、実は、本日、もう一人招待している方がいるのです」
「お!もしかして半クンの彼女かい?」
 鼻形が野次を飛ばす。瞬時に顔を真っ赤にする半。
「えー、いわゆる、そうであります」
 場内爆笑。ひょうまも笑ってしまった。
「一応、結婚を前提に付き合ってもらっております。では、入ってきてください、どうぞ!」
 女性登場と同時に一気に爆笑が止んだ。
 ひょうまはまばたきもできずに女性を凝視する。
「ま・・・まさか・・・」
 登場したのは、けーこ。ひょうまが半のために恋の気持ちを封印した相手。ブラウン管を通して以外は最早会うことはないと思っていた女性。
 けーこはひょうまを見ると一瞬顔がこわばったようだが、それでもさすが女優、にこやかに微笑む。
「一度は振られたこの半でありますが、男たるものあきらめてはいかんと、親父に説教されまして、おしておしておしまくったわけであります」
 出席者は皆、いきさつを知っているだけに複雑な表情だ。特にひょうまの顔は化石のようにかたまり、寒い空気に包まれている。
「半さんの優しさに気がつきました。安らかな暮らしをして、女優業にも励みたいと思います」
 半に寄り添うようにたたずむけーこの姿をこれ以上見ることが出来ず、ひょうまは会場を抜け出す、気がつくと多●川グラウンドにいた。マウンドに駆け上がると、頭を抱え込み、
「うああああああああ!」
 絶叫する。
(半のために、俺はけーこをあきらめた。半のためなら俺はあきらめるって・・・。なのに、半はそんな俺の気持ちをわかっていながらけーこと?)
 いっかつに相談したときのことが脳裏をよぎる。
(かあちゃんしか知らない男に、恋の相談をしたのが間違いだったのか!?)
 確かに大間違い。(大笑)
「やはりそこにいたか」
 その声は・・・
「父ちゃん!」
 最近はやっと「親父」と呼ぶようにしていたのに、意識がけーこにぶっ飛んでいて、呼び方を忘れてしまった。
「あの時なぜ、あんな助言をしてくれたんだ!?」
「それは違う。わしはお前にけーこの気持ちを伝えた際、“己の器量で対処せい”と言ったはずじゃ。わしには責任はなーい!」
「俺は、とうちゃんの言うことに従わないと生きていかれないように教育されてきたんだ!教育したのは自分だろうが!仕方ないじゃないかあ」
 号泣。
「ふっ・・・。お前も完全試合やったり、右投手としてのカムバックも果たしたり、いい思いもしたんだろうが。みーなで満足できなければ、別の女を見つけろ。そのうち酒でも飲もう。ふふふ」
 いっかつは忍び笑いをしながら立ち去ってしまった。    
 なんという無責任な親なのだろう。いっかつの後姿を恨めしそうに眺め、またも涙が零れ落ちる。
 やがて朝が訪れる。沈み行く月、昇り行く太陽を同時に見た。
(みーなの死を乗り越えたときもこんな朝だった・・・)
 月は沈んでも、また太陽は昇り・・・自然の雄大な摂理に触れ、17歳のひょうまは野球を再開したのだった。
 大の字に倒れていたひょうまは、すっくと立ち上がる。
(けーこは生きている!)
 ひょうまはそのまま半のオフィスへ。
「よう、星じゃないか。どうした?」
「半、おまえ、けーこに振られて自棄酒飲んでたときのこと覚えているか?」
「ああ、自棄酒飲んだことは・・・。なんか、星、来てくれたよな。で、なんか口走って泣いてたよな」
「言った言葉を覚えてないのか?」
「・・・知らん。わかっていることは、けーこはお前に振られたってことだ。だから俺は死ぬ気で再チャレンジした。悪いか」
 確か、鼻形か牧がひょうまの真の気持ちを半に代弁してくれたと聞いていたのに。
「ああ、星もけーこを好きだったちゅうのは聞いたが、星が振ったのも事実だろう。いまさら何を蒸し返したいんだ?」
 半はひょうまが泣く泣くけーこをあきらめたことがわかってないようだ。
「はっきり言わせてもらうが俺はお前のためにけーこをあきらめたんだぞ!」 
「なに!?」(T陽にほえろのボス風に)
「酔っ払った半に、“お前は俺のために死ねるか?”と聞いたらお前がイエスと答えた。俺はそれで友情を取ることに決めたのに」
 半、絶句。
「半、俺ははっきり気持ちが決まった。今からけーこに伝えに行く。じゃあな!」
「ま、待て!」
「半、決めるのは彼女だ。自信があるなら俺が何しようと平気だろう。ははは」
 ひょうまは、けーこの事務所に行く。
「けーこさんは本日は撮影で宮崎です」
 宮崎・・・。みーなが眠っている場所・・・。何という因縁(勝手に思いこむ)。ひょうまは即羽田空港に行き、宮崎行きの飛行機に乗り込んだ。
 初冬とはいえ、さすが南国宮崎。気温も高く、昼間は汗ばむほどで、ひょうまは昨日からずっと着ているタキシードの蝶ネクタイをはずし、袖を捲り上げる。撮影場所は青島海岸。牧原作のドラマで、けーこは海辺で犯人と対峙する場面らしい。リハーサルを経て本番終了までかなりの時間を要す。ひょうまは微動だにせずけーこの動きを見続ける。ロケ見物客たちにまぎれながら。
 本番スタート直前、けーこがロケ客に向かって振り向いた。多分サービスのつもりだったのだろう。微笑が広がっていくけーこの口元が瞬時に固まる。ひょうまの存在に気がついたらしい。そりゃあびっくりするわな。けーこはひょうまに振られたと思い込んでいるわけだから。
 それでもさすが女優。動揺を見せたのはほんの一瞬で、本番も一発OK。
「はい!日没になりますし本日のロケは終了でーす!」
 ADらしき男が見物客を帰しにかかる。勿論ひょうまはその波にのまれるわけにはいかない。ふんばってふんばって人波をやり過ごした。
 けーこは椅子に座り、付き人から飲み物なんかを手渡され、のんびり他の共演者と談笑している。
(早く話したい!)
 じれるひょうま。
 ひょうまにとっては気が遠くなるほどの時間が流れ、(しかしながら実際は10分程度)やっとけーこが腰を上げた。こちらにむかって優雅にしゃなりしゃなりと歩いてくる。会釈するひょうまは思い切り無視された。
(・・・そんなー)
 が、忘れてはいけない。同じ仕打ちをひょうまはけーこにしているのだ。
 ひょうまはとぼとぼけーこの後をついていく恰好になる。が、ロケ中まったく肉体を動かさなかったのでなんか動きがロボットのようにカクカクしている。
 やがてけーこはロケバスに乗ってしまう、ひょうまはその場に取り残された、と、思ったが、バスがバックしてきくるではないか。
 けーこが飛び降りてくる、ひょうまは両手を広げてけーこを抱きしめた・・・。日南海岸に沈み行く大きい夕陽に見守られながら。
 普段、けーこは仕事の後も気さくにスタッフらと夕食をともにしたり、酒を飲んだりするらしいのだが、この日は部屋にこもり、付き人に立ち入り禁止を告げたようだった。
「電話も何も取り次がないでね」
 そう言って部屋の鍵をロックする、「ガチャ」音が妙に響き渡り、ひょうまは己の行動の大胆さに気づかされ、しかしながらもう後戻りをするつもりもない。
 その晩、二人が合体を果たしたのは言うまでもない。注釈をつけると、ひょうまは初体験。おまけに野球野球野球で性教育なぞ誰からも受けてこなかったはずだが、ノープロブレムで遂行できた。さすが人間が欲する三大本能のひとつ。ついでに快楽も得てしまったひょうま。
(こんなにいいことをしてこなかったなんて、なんて俺は無駄な時間を過ごしてきたんだ!?)
 いっかつもこんな快楽を得ていたのか。結婚している鼻形も、三門も・・・?じゃあ、ひょうまだけ仲間はずれだったわけだ。
(いや、一人忘れていた)
 半ちゅうたは多分違う。危なかった。タッチの差で半に快楽ともども奪われるところだった。
 東京に戻った二人は半に謝罪。
「ごめんなさい。私、ひょうまさんと結婚するわ」
「そういうことだ、半」
 途端、
「うおおおおおおおお!」
 叫びながら半は部屋のものを手当たりしだい窓から外に放り投げ、ウイスキーを一気飲みして大の字に倒れて涙を流しながらいびきをかき始めたのを機に二人は半に向かって拝みのポーズをとると部屋を辞したのである。
      
 ひょうまとけーこの結婚報道は大々的に取り上げられた。
 何せ、スター女優さまのけーこと、最後は尻すぼみの感もあったものの、巨●軍の左右投手として完全試合達成、引退したばかりの投手、ひょうま。渋谷の女子高生にテレビアナウンサーが二人の写真を見せたら100パーセント名前を言い当てたという知名度の高さ。おまけに半との交際も一部で報じられていて、半自身の知名度も多少あったから、報道以外でもいろんな憶測が飛び交ってしまった。
「ひょうまがかすめとった」
「半が不細工だからけーこが乗り換えた」
「できちゃった結婚?」
 などなど。
 結婚式、披露宴も盛大なものに。二人の意思よりけーこの事務所の意思で。巨●軍御用達のNテレビとタイアップし、披露宴は土曜日ゴールデン枠三時間生中継された。新婚旅行も取材が同行する、なかなか二人きりになれない二人は内面で興奮状態。
 新婚旅行先のハワイのホテルのスイートルームでの夜だけが、二人に与えられた実質的なプライベートタイム。
 もう口言葉でなく、ボディ言葉のみなわけで。(笑)多分けーこはストイックなイメージがあったひょうまの
ある意味人間らしさに触れ、ある意味ほっとしつつもその極端さに驚いていたようだ。一方のひょうまは快楽追求のみに心血を注ぐ。
 今まで“ためて”いた分を取り戻すかのように・・・。
 
 二人の新生活は順調に滑り出した。
 ひょうまは巨●軍一軍投手コーチ、けーこは女優業。すれ違いも結構多い。女優という職業柄、料理などはできない。手が荒れるし、ひょうまもそういうことは理解し、鼻形みつるに頼み、鼻形が頼んでいる家政婦協会から通いを一人派遣してもらうように手配。
 だが・・・。

 四十歳を過ぎた辺りからひょうまの心にかすかないらだちが芽生え始める。
 もともと寡黙なひょうま。少年時代は無邪気さもあったし、まだ若かった巨●軍左投手時代は、喜怒哀楽も結構見せていたが、右投手にカムバックした頃からは、喜怒哀楽を内にしまいこむようになり、寡黙さに拍車がかかる。インタビューなどには相手を気遣い、まあまあのコメントを出すが、プライベートでは無駄口はたたかない。あの、日南海岸でのホテルにおいて、けーこに告白した夜も、一言、
「ほんとはずっと愛してたんだ・・・!」 
搾り出すような声を発したのみで、すぐ行動で実証してしまった。
けーことの生活でも、予定など、必要なことを言うだけで、あとはけーこのおしゃべりを聞いている感じ。
いや、二人の生活にいらだちを覚えたのではない。
己自身に、である。
投げられなくなった自分。大観衆の声援をバックにマウンドに立てなくなってしまった自分。
けーこは女優としてけーこ自身が活躍している。周りを見ても、そう。牧はるひこは漫画家として自身が活躍している。鼻形みつるも、会社経営者。半も同様。
(みんな自分でやっている・・・)
 なのに、ひょうまは、投手をコーチするだけ。活躍するのは自身ではない。
 コーチした投手が脚光を浴びればうれしい。が、一方で嫉妬心も。
 が、誰にもいらだちをぶつけることはしなかった。いつものように内にしまいこむのは得意だし。
(一生野球ができるわけじゃない)
 頭ではわかっている。今のポストも野球人としては恵まれていることだって重々承知。
 表面上は何事もなく、年月がすぎて行く。
 もしかしたら、周囲の環境もひょうまにとってはよくなかったのかもしれない。けーこ、牧、鼻形、半・・・みんな、極端なことをいえば死ぬまで同じ仕事ができるからだ。ひょうまの中で己の意思でないところで引退させられたというくやしさだけが頭の中で増幅していく。
 たとえば、有名著名人行事のひとつにお誕生会がある。一般人は子ども時代の思い出として過去に葬り去っているお誕生会。ひょうまの周りは当然みな、有名人。「超」をつけてもいいくらい。特にけーこの場合は何人集まったか、招待客の服装チェックなどワイドショーで放送されるため、皆気合が入ってる。
 ちなみに、鼻形みつる、半ちゅうたのは財界関係者が集まり、重厚な雰囲気で、いろんな情報交換に余念がない。三門ほうさくのはプロ野球関係者や、オフのテレビ出演で知り合った芸能人などがやってくる。牧はるひこも交友関係は広いからいろんな話題が交錯する。
 それらいずれにも出席可能な人間の一人に、いわば数学の集合のまじわり部分にいる人間のひとりに、ひょうまがいた。スーツに身を包み、それ相応のプレゼントを用意し、控えめにグラスを持ってたたずんでいる姿は周囲にはごく自然に映り、どんなパーティーにも同化できていた。
 が・・・ひょうまの心は不自然になっていったようだ。現役ではないひょうま自身の誕生会は公では行われない。
(そんなことはどうでもいい!)
 各人の誕生会を観察すると、主役は生き生きと、自身の現状やビジョンを語っている。それを見るのが耐えられなくなってきたのだ。
(俺には語るものがない!)
 あると思うけど。いろいろあるだろうが。投手陣の指導、起用法に関してもひょうまの意見だって反映されてたはず。シーズン中は語れなくたって、語れないなりになんとか言うことも可能だろう。
「XX投手のフォームは俺が改造したんだ」
 高らかに笑いながらしゃべれるくらいなら悩みも起きなかったのかもしれない。
 ひょうまの脳内がもう少し柔軟なら、半も、鼻形も、プロ野球引退経験者で第二の人生を送ってることを思い出し、まだ慰めになっていたのかも。それに、三門ほうさくの存在だって・・・。三門ほうさくは、確かにひょうまよりもはるかに長く現役を続けたが、四十二歳で引退、監督候補といわれながらも現在はTテレビ局専属の解説者、朴訥な解説が定評だ。
 一番身近にいるけーこが年をとるごとにどんどん女優としての腕をあげ、ドラマにひっぱりだこという状態がひょうまの心を暗くさせてしまったのかもしれない。
 なら、素直にけーこに女優業をセーブしてほしいなり、頼めばいいだろう。
(現役時代のときならともかく、コーチ業では、例えば食事管理が大事ということを盾にセーブしろだの、やめて欲しいなんて・・・いえない!)
 言えないし、言って仮にけーこが従ったとしても、今度はひょうまがけーこの才能を、将来を奪い取った自己嫌悪に陥ってしまうだろう。
昔みたいに父いっかつに相談したくても、もういっかつは他界してしまっている。
 
 寡黙なんだが“行動力”は抜群のひょうまは、超久々にやってしまうのだ。
 その名は、“雲隠れ”。イコール失踪。選手時代、やってたね。速球投手として命を立たれたとき、大リーグ三号を編み出すとき・・・。
 当時は周囲も、ひょうま失踪に対し、理由が思い当たり、一応納得はできていた。が、しかし、However!今回はだーれも理解できないだろう。
 だって、ひょうまが何のシグナルも発しなかったのだから。
 
 気がつくと、ひょうまは北海道の寒村にある旅館の一室からぼんやりとオホーツク海を眺めていた。
 失踪から一週間が経過。
 考えていたことは、どうしたら現役復帰できるか、のみ。
 筋肉増強剤を使って若き日の肉体を取り戻すか?もしかしたら昔と違って今は医学も進歩しているから壊れた左腕の筋肉も復活できるかも・・・。だが、手づるがない。最早半に協力は頼めない。けーこを奪い、(正確には取り戻したのだが)(多少の人の好さからか忘れてしまっている)(笑)この上また未来の栄光への手助けを、なんて。
「駄目だ駄目だ!」
 頭を抱え、バンバン!とテーブルに打ち付ける有様。
「お客さん、大丈夫かあい?」(Kの国から風に)
 仲居さんもびっくり。 
 だが、この失踪に関してひとつだけ後悔が。
(けーこ・・・)
 けーこと会えないこと。けーこと合体できないこと。パーセンテージから言えば、合体できないこと80パーセントってとこ。
 じゃあとっとと戻れ。素直に現実すべてを享受しろ。
 再びひょうまはテーブルに頭を打ちつけ、テーブルが頭の形にへこむまで打ち続けるのであった・・・。
 
 同じ頃、東京では・・・。
 けーこは憔悴しきっていた。ひょうまが失踪したことを知ったのは、けーこがロケから戻ったときだから、失踪三日目にあたる。留守電が三十件も入っていて、どれもみーな巨●球団関係者からだった。
(ひょうまが遠征に帯同していない。断りもなく?)
 最初、ひょうまが事故に遭ったのではないかと思った。
(いや、事故に遭えば連絡が入る・・・)
 強盗とか。
(部屋は荒らされてない)
 巨●軍一軍投手コーチ長期不在に関して、球団側はマスコミには病気ということにしていたのでけーこは警察に家出人捜索願を出すわけにもいかない。最も、そんなことしたら、マスコミのいい餌食になること間違いない。
 幸か不幸か北海道の寒村ではひょうまの顔は認知されていないようで、ひょうまは一抹の寂しさに「フ・・・」自嘲気味な笑みを浮かべ、旅館を拠点にスポット的な仕事を見つけての生活。
 そうはいってもいい加減、スポーツ関係記者らはひょうま不在に不信感を抱き始める。
 自宅では泣いてばかりのけーこは外ではすべてを隠して仕事を続けた。見せ掛けだけは楽しげに。
 そんなとき、手を差し伸べてきたのは、なんと半だった。
「知り合いに探偵がいる。信用できるし極秘に探させるよ」
「え・・・なぜ?私、昔あなたにひどいことを・・・」
「俺は記憶力悪いからな、十日以上前のことは忘れちまうんだよ」
 半の優しさに涙するけーこ。
 本当に半は極秘に調査を依頼し、ほどなくひょうまを見つけ出した。
 けーこには調査結果が理解できない。
「なぜ、こんな生活をしなきゃいけないの!?」
 悲鳴に近い声をあげるけーこに半は問う。
「どうしますか?北海道に行きますか?」
「けーこさん、困ります。そんな時間はありませんよ」
 横からマネージャーが。
「じゃ、俺がいって必ずつれて帰ってきますよ」
 どんと胸をたたき、半はその足で北海道に旅立っていった・・・。

 低く垂れ込めた雲の隙間から薄日が弱々しく差し込むオホーツク海を背に、ひょうまは半と向かい合っている。  
「半が来るとは・・・?」
 少々うろたえ気味のひょうま。
「おまえ、どういうつもりだ!」
「・・・・・」
「けーこさんと一緒にいたくなくなったのか!それを知りたい」
「・・・いや、そんなことは。けーこと離れたことだけは今も後悔してるんだ。だが、けーこよりも俺の精神的不満をどう始末したらよいのかわからなくて・・・」
「なんなんだ?」
 ひょうまは、初めて己の胸のうちをぶちまける、途端、半にぶん殴られ、一メートルほど後ろに吹っ飛んでしまった。
「ばかじゃないか!そんな気持ちを何十年も引きずるなんて!なんでも満足して生活できる人間なんかいやしないんだ!俺だって!おまえら夫婦と普通に話せるように努力した。本意じゃないさ。俺は今だって、けーこさんを好きなんだ!だが、あきらめ、胸の奥深くしまいこんでいるんだ!」
「・・・確かにけーこはいい女だ。精神も、肉体も・・・」
「肉体!?フン!おまえ、俺へのあてつけか!」
 今にも死にそうな顔をしていたひょうまがこのときとばかり、目に光を帯びた。
「半、まさか・・・え・・・?まさか、いまだに童貞・・・?」
 またもやぶっ飛ばされてしまった。が、ひょうまは先ほどは違い、すぐ起き上がり、追及を続けるのだ。
「だって、半、今いくつだ?俺より年上だから五十は過ぎたよな。やばいだろう、そりゃやばいだろう」
 声にもチカラがこもってくる。
「そんな話をしに来たんじゃなーい!」
 怒鳴る半。
「いや、大事な話だぞ。人間の本能にかかわる話だからな。宮沢賢治じゃあるまいし。俺だって、たかだかここしばらくけーこと離れて肉体的には気が変になりそうなくらいだからな。ま、俺は宮沢賢治と違って、自己処理は行ったがな。ははは!だがな、一生自己処理だけじゃ、半の体も悲鳴をあげるぞ」
「もうとっくの昔から悲鳴が聞こえっぱなしだ!」
「わかったわかった。そうか。みんないろんな悩みを抱えてるんだ。わかった。俺、帰るよ。いやあ、半の悩みに比べたら俺の悩みーなんて、ある意味高尚で、ある意味ちっぽけなものだったんだ!」
 ひょうまは目からうろこが落ちた感じ。
「半、来てくれて感謝するよ。早速東京に帰る」
「ちょっと待った!」
 新たな声が飛び込んでくる。
「・・・けーこ?」
 二人に向かってけーこがしゃなりしゃなりと歩いてくる。
 そして、またもやひょうまはけーこにぶっ飛ばされてしまった。
「こう見えても女優になる前は柔道やってたのよ」
「え!?柔道?俺もやってたんですよ。それを、星いっかつ、こいつの親父の差し金で野球に転向するはめになりましてな・・・」
「そうなんだ!」
 柔道談義に花が咲く半とけーこ。
「おいおい!みんな俺のために集まったんだろうが・・・」
 三回もぶっ飛ばされ、さすがに足腰立たず、這いずって二人に近寄るひょうま。
「ひょうまさん、私は女優業なんかより、あなたといることのほうがずっと重要だったのよ。あなたもそうだと思っていた・・・。違ってたのね。それに・・・」
 けーこは涙声になり、言葉を続ける。
「半さん相手だと、ひょうまさんってこんなにとうとうと喋るのね。今の会話だけで私と暮らした数十年間余りの、あなたの総会話量を遥かに超えてたわ・・・ショックだわ・・・」
 後は言葉にならず本格的に号泣する大女優けーこ。
(真実の涙か?演技か?)
 ひょうまと半は心の中で同じ疑問を持ち、そっとけーこの顔を覗き込む。まったく意味なき行為だが。(笑)
 一時間ほど泣き続けたけーこは思い切りハナをかむと、
「ああ、すっきりした。女優だからハナかむとそこが赤くなるから禁じられてたのよね。でも、一回しっかりかんでみたかったのよ」
 これまた意味なき行為。
 なので、もとへ。(笑)
「まじめな話、私、二度も半さんに救われたわ。一度目は、ひょうまさんに振られて落ち込む私を励まし、そしてプロポーズしてくれたこと。二度目は今回の件。だから私、半さんと人生やり直すことにするわ。半さんさえよければ」
 半にとってはひょうたんから駒。
 ひょうまにとっては晴天の霹靂。
「けーこ、だから、一度目は違うんだ!俺が君をふったんじゃあなくて、半も君を好きで、君に振られてしまったから、俺は半を出し抜いて君とは付き合えないと思い、泣く泣くあきらめたんだ!半のために、あきらめたんだ。なのに半はしゃあしゃあと再度君にアタック(死語?)したのを見て冗談じゃないって、あの引退パーティーの翌日、わざわざ宮崎まで告白しに行ったんだ!」
 けーこの表情は変わらない。
「今のお言葉、その宮崎で聞きたかったわ。当時の私は若かったこともあったし、あなたが宮崎に来てくれて、愛してるって一言でころっと気持ちひるがえっちゃって、関係持って、結婚しちゃったわ。あなたはなーんにも語らなくて、でも、一緒にいるだけでいいと思ってたけど、どっかで気疲れしてた。何を言いたいのか、何を求めているのか、私はあなたの様子で判断しなきゃいけなかった。言葉にださなきゃわかんないのにね。で、結局そのツケが今回ってきたのよ。私はあなたを正しく理解できなかったし、あなたも都度、言葉で私に伝えるべきだったのよ。もう遅い。更年期も間近に迫ってることだし、私自身、もうお気楽に過ごしたいわ。半さん、今度は私からプロポーズするわ。結婚してください」
 
 けーこ再婚報道は、ひょうまとの結婚より何十倍も世間を震撼させた。
 再婚の裏事情が事情なだけに。
 あらためて半、ひょうま、けーこの生い立ちから、半とひょうまの関係歴史がさまざまな媒体経由で紹介され、「へー、あの人、有名人だったんだねー」
 ひょうま失踪時に投宿していた際世話した仲居さんもびっくり顔でインタビューに応じたのでひょうまが病気でなく失踪していたことも詳細に暴露されてしまった。
 ひょうまはシーズン終了と同時に辞任。巨●軍内部では解雇しろとの意見もかなり出たが、一応左右投手として粉骨砕身、巨●軍のために尽くしたということで、辞任という表現使用許可がひょうまにおりた。
 ま、辞任だろうが、解雇だろうが、その後の保障についてはいずれにしても全くないので、五十歳過ぎてひょうまは失業者になってしまったのである。
 リストラの嵐が吹き荒れている中での失業。
 プロ野球でさえも、合併話がでている。
 ひょうまは、生まれて初めて「ハローワーク」に足を運んだ。が、高校中退、野球しか知らない男に仕事が見つかるわけがない。
「巨●軍の投手コーチ、いい職業だったのにねー。まあ、何をトチ狂って失踪したのか、あなたも、もっと世の中の情勢を知ってればねえ、失踪なんかしなかっただろうにねえ」
 職員から同情&小ばかにされ、
「ごもっともでございます」
 うなだれるだけのひょうま。 
 行くとこもないので毎日同じことを言われることを承知の上でハローワークに通い続けてしまう。
 
 電話もこない。
 本当に、今のひょうまを気にしてくれる人物は皆無らしい。
 夜更けの東京ドームでひょうまは今まで関わってきた人物の顔を一人ひとり思い浮かべる。
 三門夫人となっている元番長、おきゅうさん。
(みーなだけを愛するなんて決めなければ、簡単に付き合えた。結婚にはいたらなかったろうが、あの時は俺も18歳で親の承諾なくしては結婚できなかった身なんだから、欲望の赴くままに遊んじゃえばよかったんだ。18歳で快感を覚えられたのに!)
 鼻形みつる。
(左腕崩壊した時点で、野球をあきらめ、第二の人生を歩もうと決意していたならば、確か鼻形の会社でしかるべきポストを与えてくれると言ってくれた。従っていれば、今頃、K人のためじゃなくて、鼻形モータースのために鼻形の右腕(みぎうで)として活躍、雑誌「Pジデント」にも“明日の自動車業界を支えるかつてのライバル”と題して取材を受けていたことだろう)
 半ちゅうた。
(何回言ってもいい足りない。まずはあいつがけーこを好きにならなきゃよかったんだ。次は、この俺がお人よしなばかりに半のためにけーこをあきらめたこと。週刊誌の記者からも“今時珍しい、バカが着くほどの大友情ですな”嘲笑される始末)
 三門ほうさく。
(カムバックの際には、“三門メモ”が役にたった。が、もし、それがなければ、俺はカムバックをあきらめていたかもしれない。あきらめていれば、鼻形モータースに入社していたかもしれない。そういう意味では余計なお世話をしてくれたもんだ)
 牧はるひこ。
(けーこを紹介してくれなければ、今の俺は投手コーチでいられた・・・はず!)

 まあ、ひょうまも50過ぎると自分勝手な人間になるもんなのだな。(妙に感心)(笑)
(・・・明日にでも鼻形に会って、鼻形モータースの掃除係りでも何でもいいから仕事をもらえるように頼むか)
 深いため息をつくと、
「よっこいしょ」
 声をかけて立ち上がった。最近時々腰が痛むのだ。
 けーこが残していってくれたマンションに戻ると、玄関前に人だかりが。
(またマスコミ連中か?)
 うんざりしながら仕方なく玄関に近づく。
「あ!」
 マスコミではなかった。鼻形、三門、牧、半の四人がうXこ座りしながらタバコを吸っているではないか。
 鼻形以外は会いたくない人物たちだが、マスコミよりはましか。
 ひょうまは皆を部屋に上げた。
「金がないからお茶もないよ」
 なんか、みんなの表情が暗い。半までも、泣き出しそうな顔。
「ひょうまくん、ここに住まわせてもらえないか?」
 鼻形が頭を下げる。ほかの三人も追随する。
「鼻形さん、俺を鼻形モータースで雇ってくれませんか?今更ですが・・・」
 今の四人の頼みを聞いてないらしいひょうま。
 鼻形は弱々しく首を振る。
「頼みを聞くことはできんのだよ」
 ひょうまはどこまでも世間に疎かった。
 鼻形モータースも、半自動車工業も、不況のあおりをくらい、倒産してしまったのだ。
鼻形の自由になる金はない。家も借金のかたに取られてしまい、妻・あきこは現在地方旅館で住み込みで働いているとのこと。
半も同様、妻、けーこは相変わらず女優業を続けているが、会社が倒産した亭主がいるとイメージが悪くなると事務所から吹き込まれ、離婚だけは免れるも、無期延期の別居を強いられることに。
三門は、来季からK●コーチを引き受ける予定だったのに、K●が●ックスと合併することになり、白紙になってしまった。解説者としての契約も終了するよう処理してからの出来事に、再度テレビ局に契約を頼んだが時すでに遅しで、後任が決まっていた。おきゅうさんは、過去の自己体験(番長)から、不良と呼ばれる子どもたちを救おうと、いまやカウンセラーとして各地を飛び回っていて、ほとんど別居状態。今の住居も解説者をやめたらローンが払えなくなり、おきゅうさんも承知で近々手放す予定。たくさんいた弟妹もみんな家庭を持ち、皆子供の養育に金がかかると散々聞かされているのでさすがに迷惑はかけられないという。
牧だけは、ほかの3人とちょっと事情が違い、今まで住んでいたマンションが老朽化したため、取り壊し、新しく建て直すのでその期間だけひょうまの家に住みたい。じゃあなぜ暗いのか?今までのマンションは本当に住みごごちがよく、アイディアもどんどん浮かんできて、いわば縁起がいい部屋だったのだ。新しくなるマンションがどんな雰囲気になるのか、再び元通りの気持ちで漫画を描けるのかという不安にかられているのだ。
「芸術家は繊細なんだ。ペン先一本変わったって、イメージ狂っちゃって同じ漫画は描けないのだ」
(わかりにくい論理?)(笑)
「すごいことになったな」
 開いた口がふさがらないひょうま。
「まず、明日から4人でハローワークに行こう。失業者の先輩としてひょうまくん、いろいろレクチャーしてくれたまえ」
「はあ・・・」
 ハローワークで肩身の狭い思いをしているだけなのだが・・・。
 ま、予想通りといおうか、何日たっても皆職にありつけない。牧にたかる生活。家事労働だけはどんどん上達していく4人。
「いっそのこと、このまま牧に稼いでもらって俺ら主夫に徹するか。そんなドラマもあったしな」
「いや、マンションが建つまでだからな。あと半年のうちには皆、身を立てられるようにしてくれよ」
 牧からしっかり釘をさされてしまった。
 
 プロ野球界が新たな動きをはじめている。
 前述のK●と●ックスの正式合併、新規球団参入の話、そして、元プロ野球監督が構想を練った独立リーグ。スポーツニュースでは日々話題にしているけど3人は蚊帳の外で、だらだらとせんべいをかじりながら視聴するだけ・・・だった。
 ところが、とんでもない案を思いついた男がいた。
「僕も新規球団作るよ」
 こんなことが今言える資格があるのは牧ひとり。
「ふうん、頑張れば?」
 最初は誰も本気にしなかったのだが・・・。
 牧は自身のホームページを持っているが、ホームページを通じて最近アンケートをとったというのだ。漫画家がプロ野球球団を持つことについて。
「牧先生が持つなら応援します!」
 なんと、8割強の支持を得たらしい。
 勿論、牧は野球漫画をメインに描いているし、野球界にも伝もあれば、事情も詳しい。
「でも、先立つ資金はどうするんだ?」
 やっと世間ズレしてきたひょうまが問う。
「フッ・・・」
 小さく笑うと牧は新聞を差し出す。
「君たちは高額納税者ランクリストを見てないのかね?」
「ああ!」
 鼻形、半のふたりはいっせいに叫ぶ。
 ひょうまと三門は新聞を見てから同様のリアクションを。
 高額納税者トップ100の中に牧が堂々ランクインしている。しかも、現在プロ野球に参入希望を出しているIT関連企業2社社長よりも上なのだ。
「じゃあ、本拠地はどこにする?」
 またもや牧は一枚の写真を差し出した。
「ここはどこ?」
「信州S湖。県で一番大きい湖だ。このほとりにスタジアムがあってな。IT2社がブッキングしているS台球場同様、かなりの補修が必要だが。東京にも特急一本で二時間強だし、条件として人口面で100万人以上とか、地下鉄が必要とか言われてるがな、S湖スタジアムは高速のインターチェンジに近いんだ。だから駐車場を完備し、インターへのアクセスを充実させれば、かなり広範囲からもファンはやってくる。地元ケーブルテレビを通じて毎試合放送する、新球団を舞台に漫画連載をする」
「寒いんじゃないの?信州って?」
「フフ・・・。シーズン初めと終わりのころは確かにナイターだときついかもしれない。だがそれはS台球場も同じ条件になるはずだ。デーゲームにしてもいい。優勝争いでもしていれば、ファンは仕事休んででも見に来るさ。そういう状態にしなきゃいかんのだ」
 などと、以後牧は延々と、一晩中語り続けるのであった。
 
 二年後。
「マッキーS湖ナチュラルズ」と銘打った新規参入プロ野球チームは地元、S湖スタジアムで●ックスと連日優勝争いを繰り広げていたが超満員の観衆の中、ついにリーグ優勝を果たす。
 オーナー、牧はるひこ。漫画家。
監督、鼻形みつる、元鼻形モータース社長。
ヘッドコーチ、星ひょうま、元K人軍投手コーチ。
打撃コーチ、三門ほうさく、元解説者。
そして、広報担当、半ちゅうた、元半自動車工業社長。
優勝祝賀会、さあビールをかけあおうとした瞬間、ひょうま、鼻形、半、三門は入り口ドアから入ってくる女性たちに目が釘付けに。
牧がウインクすると、女性たちが駆け寄ってくる。
おきゅうさんは三門に、あきこは鼻形に・・・。さて、問題はけーこ。けーこは果たしてひょうま、半、どちらに抱きつくのだろうか?
 運命の時がやってくる。両手を広げるひょうまと半。
 どっちが真の栄光を手にするのか?どっちがまぬけな姿で終わるのか?
 けーこは二人の前でいったん停止したまま、動かない。いや、動けないのだ。実は選手らは事前に牧から話を聴いており、全員で賭けをしていた。(なんて不謹慎な)だから賭けをしたほうにけーこをいかせるように選手らがけーこの行く手を妨害するのだ。
 ひとりほくそ笑む牧。こうなることは予測済み。勿論テレビ生中継中。
(ファンもサプライズを楽しんでくれるだろうし、話題になること間違いなし・・・。来季も安定した球団経営ができるというものだ)
 素晴らしい経営者牧のもと、星ひょうまはようやく第3の人生を歩み始めた。(爆)      
―完―

 

 

 

 

 

 

 

 

CS日テレG+で 生中継してくれた巨人ファン感謝デー。

昔はいろんなゲームとか、紅白戦とか、いろいろイベントあったのに、コロナのせいか、動的なものはなく、管理できるメニューって感じでした。

途中から気づいてみたのですが、一番ジーンときたのは、やはり、引退セレモニーですね。

野上投手、大竹投手

それぞれ他チームからの選手ですが、巨人に来てからいずれもご苦労された期間が多かったんじゃないかと。

ビデオで足跡が紹介されていましたが、なんだか泣けてきました。

引退セレモニーやってくれるくらいの選手たちなので、今後も野球関係の仕事ができるのは 成果に対する評価であると思います。
亀井選手も含め、本当にお疲れさまでした。
 
あと、連載小説ですが、今、少し書き始めています。
今しばらくお待ちください。
よろしくお願いします。
 

こんにちは
cmです。
ここしばらくの間、本当に数えるほどしか記事の更新ができませんでした。
しかし、もう少しコンスタントに更新を目標に、まずは、タイトル・紹介記事などをリニューアルいたしました。
連載小説に関しては、トップにもう少しわかりやすくご覧いただけるように書いてみました。
600話あまりに及んでいるので、50話ごとに飛べるようにリンクを貼ってみました。
登場人物についての紹介も少し変えました。
連載小説「マッキーS瑚ナチュラルズの男たち」どうぞよろしくお願いします。

野球のことを書かせていただくと、わが巨人軍はCSに負け、勝ったヤクルトが日本一を果たしました。
今季は終盤がらがらとくずれてしまった巨人。
来季こそは、忘れ果てたものを取り返しに行ってほしい!!
それだけです。

これからも、よろしくお願いします。