Nikon EMを救出しました | Photograph to Life ~生活に写真を~

Photograph to Life ~生活に写真を~

●日常の一部を写真で表現、出来たらいいなと言う意味で...
●デジタルなデバイスの(独断と偏見による)話題と感想もあります
●100円ショップ製品の紹介と活用(工作)方法の話題なんかしたりもします

ジャンク漁りでよく利用するリサイクルショップにて、モータードライブMD-E付きのNikon EMを発見したので救出してきました。一番の理由はMD-Eだったのですけれど、EM自体は興味あるボディだったので速攻で確保しました。

 

・MD-E付き

 

Nikon EMは1980年にF3と共に「ジウジアーロデザイン」のボディとして発売されました。当時中学生だった自分は、このEMでも良いので一眼レフが欲しいと思ったものです。ニコンの一眼レフとしては破格に近い「4万円(ボディのみ)」でしたが、やはり中学生が簡単に変えるものではありませんでした。

 

実際に一眼レフを手にするのはさらに後になって、高校の入学祝いとして「Nikon FG」を買ってもらった時になります。まぁ、結果的にはより高機能なFGが最初の一眼レフになった訳です。

 

今回手に入れたEMは、同時発売されたモータードライブの「MD-E」が付いていました。このMD-Eは、実はFGでも使用可能。と言うか、EMとFGはアクセサリーが共用可能な兄弟機と言えます。

 

・980円(´・ω・`)

 

買う立場からすると安いのは嬉しいわけですが、いかに古いカメラでエンプラボディとは言ってもこの値段つけには悲しいものがあります。要は、買取価格はほぼ付かないと言うことを意味するからです。

 

正直なところ、EMのジャンク扱い品と言うのは結構な賭けになることが多い。と言うのは、特に前期型は露出計連動レバー周りの不具合が出ている事が多いためです。後期型であれば対策されているようなのですが、それでも不具合が出ないわけでは無いようです。

 

幸いというか、入手したEMは精度不明なものの動作品でした。LR44を2個いれてやり、フォルムカウンターが1になるまで空シャッターを切っていくと、1枚めになったところでファインダー内のシャッタースピード表示の針が元気に動き出しました。

 

MD-Eの方も、入っていたマンガン電池(ナショナルNEO)を抜いて新しいアルカリ乾電池に入れ替えると動作しました。入っていたマンガン電池も、6本中2本を除き十分に電圧が出ているのでリモコンなどに使える状態でした。

要は、980円で動作品のEMボディとMD-E、単四マンガン電池4本が手に入ったわけです。

 

・FGと比較

 

基本ダイカストが同じEMとFGを並べてみると色んな部分で違いが見られます。単純にシャッタースピードダイヤルを入れたというモノではありません。

ちなみに、EMのシャッターユニットは「セイコーMFC-E」だそうで同時期のペンタックスME系と同じらしい。

確証は無いですが、FGはFEなどと同じ「コパルスクエア系」ではないかと思われます。

 

 

当然といえば当然ですが、巻上げレバーとシャッターボタン、巻き戻しクランク軸のレイアウトは共通しています。巻上げレバーが中折式なのも同じで、若干のデザイン変更がある程度。

FGではマニュアル露出が出来るようになったのと、絞りもシャッターもカメラ任せに出来る「プログラムAE」が搭載されました。

 

 

横から見ると、全体的にFGの方がノッポになっています。シャッターボタン位置もFGの方が高い位置にありますが、シャッタースピードダイヤル周りの機構を収めるのに嵩上げが必要だったのではと思われます。

フィルムカウンター表示窓部分の高さは一緒なのでおそらくは階段状に高くしてある部分に収めたのでしょう。

このデザインの違いのせいで、実際のボディ高はFGが2mm程度高いのにペンタカバー部分はEMの方が大きく見えてしまいます。

 

 

トップカバーの細部仕上げも写真のように異なります。ダイカストは共通化していると思うのですが、トップカバーに関しては金型の細部変更だけで済ませたのではない様にみえます。

 

EMから始まる小さなニコンはFG、FG-20と続くのですが、製品として成功したのはEMだけと言って良いかもしれません。特にFG-20は不遇に過ぎます。

EMは「絞り優先AE専用機」として割り切ったおかげで優秀なスナップカメラだたっと言えます。ニコンとしてもそのような用途を念頭に置いたのだと思いますが、シリーズEと言う専用と言えるレンズまで投入しました。

 

次代のFGは、言ってみれば「実験機」でした。ニコン初のプログラムAE機として発売され、F3以外でTTL自動調光機能を搭載したボディです。ニコンは古くから「新機能は普及機で評価してから上級機に投入する」と言う傾向が強いのでおそらく間違いないでしょう。

実際、FGの後すぐにFE/FM系ダイカストでプログラムAEとマルチパターン測光を搭載した「FA」が登場し、FGは影が薄くなってしまいました。

 

最後に登場したFG-20は、最大の売りだったプログラムAEを省かれ「小型軽量」という点以外の特徴がなくなってしまいました。おそらく、プログラムAE機としてはFAが有るために競合するのを避けたのでしょう。

FAにはマルチパターン測光と言う特徴があるのでプログラムAEをFG-20に搭載しても直接の競合関係にならなかったと思うのですが、当時のニコンはそうは考えなかったのですね。

 

ニコン自体がどの様に考えているかは別として、個人的には、EM系のシリーズの終わりは「F-301/F-501」だと考えています。もちろん、ワインダーを内蔵した為にダイカストは別設計になっていますが、FGとの共通点も少なからず見られるためです。

 

F-301についてはコチラ

「Nikon F-301」再び

 

F-301・F-301

 

言ってみれば、廉価版の小さなニコンとして登場したEMのダイカストはプログラムニコンFGを皮切りにかつての「ニコマート」のポジションに置かれたと言えます。先に書いたように「新技術の評価機」と言う位置付けです。

ニコマートFTはニコンで初めて「コパルスクエア」を搭載したボディですし、ニコマートELは初めての電子シャッター機です。ニコマートは後に小型化された「FM」と「FE」に普及期の座を譲ります。そして、このFM/FEもまた「1/4000sec.シャッター搭載実験機」としてFM2/FE2が投入された。FM系に至ってはシンクロ1/250sec.の実験機になったし、最終的にはハイブリッドシャッター搭載までされた。

 

EM系に話を戻すと、F-301でニコン初のワインダー内蔵機、F-501でAF搭載機として投入された。DXコード対応もこの2機種が最初で、オートローディングも然り。

プロも一桁機のサブとして使うほどに評価が定まっていたFM/FE系の代わりになる実験機としてEM系は都合が良かったのでしょう。

 

現在、EMにTAMRON 28mm F2.5(02B)を付けて試写していますが、Ai-P 45mmを付けてやると非常に優秀なスナップカメラになると感じます。が、Ai-P 45mmはピントリングが狭すぎるので実用上で言えばシリーズEの50mm F1.8がベストな組み合わせかもしれないですね。