ニコンの一眼レフは、「Nikon F」以来基本構造を変えること無く「Fマウント」を採用し続けるわけですが、実は「マウント座金の構造変更が無いだけ」で、折に触れて「建て増し」的に変更が繰り返されてきました。
その為、同じに見えて(カメラボディによっては)実は物理的に取り付け不可能と言うレンズもあります。例えば、「Auto Nikkor」と言われるレンズは改造しないと取付けができないボディがありますし、AIもしくはAi-sと付くレンズでもAFボディでは露出計が使えないと言う組み合わせもあります。
この、「露出計が使えない」と言うのは結構致命的な問題だと思うのですが、なぜか特段の改善がされること無く現在に至っています。
露出計の問題について不思議なのは、Kマウントを採用するペンタックスの場合も建て増し的にマウントを改良したものであるのに「デジタル一眼レフでも絞り優先オート」が電子接点無しの古いレンズでも(若干の誤差が出るもののの)連動するということ。ペンタックスで出来るのにニコンで出来ないというのがちょっと理解しがたい所ではあったりします。
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ニコンの場合は、上記リンクにある「Ai-P」と言うCPU搭載のMFレンズであればAI化以降のボディで露出計が使えます。逆に言うと、AI化されていないボディだと露出計が動作しません。まぁ、上記レンズで露出計が使えないボディと言うのは古いボディが殆どですし、趣味性が優先する人が使っていることが多いので問題ないと言えるかとは思う。
CPU内蔵型のFマウントレンズとしては、コシナが製造販売している「Voigtländer(フォクトレンダー)」や「CARL ZEISS(カール・ツァイス)」がMFレンズとしてはCPU内蔵型があります。
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私は上記のウルトロンの他にカラースコパー20mmを使っていますが、D50でも露出計が使えるので非常に便利。個人的には「銀塩ならカンで露出決めても外さない」のだけれど、なぜかデジタルだとカンで露出が上手くいかないのでCPU内蔵型MFレンズがあるのは助かります。
これは同じことを考える人がいるようで、「露出計を使えるようにCPUを後付けすれば良いんじゃない」と言う力技なアイディアを現実にしてしまったのが今回試してみた「タンポポチップ(Dandelion Chip)」というものです。
開発したのはロシアの方のようですが、もともとはニコン用ということでなく「キヤノンEFマウントでマウントアダプターを使う」際にEFレンズと偽装するために作られたものが始まりのようです。
日本では「エムユーケイカメラサービス」というところが販売しているようで、取付けの代行もしてくれるようです。が、私は今回は別ルートでの入手です。
中央に写っているのが「タンポポチップ」と言うもので、これをマウント側後玉周囲に取り付けることでAi-Pレンズ化出来る事になります。
白い半円のものはチップ位置を正確に決めるための治具になります。
設定はカメラボディをプログラムモードにして行うのですが、その際にレンズに装着してある状態でないと出来ません。なので、MicroNikkor 55mm F2.8に取り付けD50で設定してみました。
今回、タンポポチップを手に入れたのは「IX Nikkorに取り付けてどこまで機能を活かせるか」という事に興味が有ったためで、実はそのためにレンズ付きPRONEA Sをジャンクで手に入れています(ボディがジャンク)
手に入れたPRONEA Sは「ミラーアップしたままで使用不能」ですが、レンズの方は良品ボディで確認したところ問題なく使えます。キャップがなかったり、保護プロテクターのコーティングが剥がれていたりしますが、機能的には問題ないものです。
実は、PRONEA Sの標準ズームとなる「IX Nikkor 30-60mm F4-5.6」は改造することでFXフォーマットボディでもケラレ等発生無く使うことが出来ます。実際、「ixnikkor 改造」で検索すると幾つかの改造例がヒットします。ただ、AFや絞り連動を活かす為にズームを使えなくするとか、ズームを全域で使うためにフレキごとCPUを除去してしまうと言うのが多い感じです。
個人的にはMFで使いにくいレンズということもあって、ズーム範囲を狭くしても機能を全部活かしたいと言うことで35-60mmでズーム範囲を規制する改造をしてD700で使用しています。
参考リンク:IX Nikkor 30-60mm F4-5.6を改造
IX Nikkor 30-60mmはPRONEA S専用のデザインになっている関係からだと思うのですが、CPUは後玉ガードの内部に収納されています。鏡胴が細身で、先細りで短いので鏡胴内に収められなかったのでしょう。
私の行った改造は、このフレキを支える金属板を外してフレキの折り方を変えて後玉周りに固定するというものです。後玉ガードは、PRONEAシリーズ以外でも取付け可能なように加工しています。
このCPUをもっと小型化出来ればズーム範囲を規制せずに使えるのにと思うわけですが、そういう改造はちょっと難しいですね。
ですが、先日ちょっと思いついてしまったのです。
「タンポポチップでCPUを置き換えたら行けるんじゃ無いか?」
と...。
と言うのは、エムユーケイカメラサービスのサイトに以下の記述があるためです。
引用ここからーーーー>
「5.6」 - AF/MFスイッチ切り替えモード
プログラムモードを起動して5.6でシャッター(1秒)を切ってください。
AF/MFスイッチが切り替わります。
電源を切ります。
AFレンズについているAF/MFスイッチと同様な働きをします。
<ーーーー引用ここまで
タンポポチップにはD50とMicro55mmを使って「30mm F4」というパラメーターを登録してみました。
マウント部を加工しないといけない関係でタンポポチップの固定(仮止め)に手こずりましたが、少なくとも絞りと露出計制御は機能することを確認できました。これだけでも十分に成果と言えるのですが、目標は「AF駆動できる」かどうかです。
結論としては、「AF駆動は出来ない」ということが分かりました。ボディをAFに切り替えても、D50もD700もAF駆動モーターが動きません。代わりに、D50ではボディ側AF/MF切り替えレバーをAFに合わせておくと「ピントが合わないとシャッターが切れない」様になります。
これは、もともとが「AF駆動を必要としないレンズで使う」のが目的のチップだからなのかもしれません。
ちょっと残念な結果ではあるのですが、少なくともボディ側から絞りを設定可能になるというのはやはり便利です。ですが、IX Nikkor 30-60mmの場合はAFが使えないと不便なレンズではあるので、現状ではタンポポチップ置き換え改造と言うのは二の足を踏んでしまいますね。
完全ジャンクだったボディの方ですが、こちらは「内部にD40の基盤を入れられないかな?」という妄想全開なアイディアを実現できるか検証したくて入手したような物なので分解を試みました。
意外とシンプルな印象の基盤です。フィルム室は、APSフィルムであるのでスプールレス。ここにメディアスロットとか収まりそうな感じですが、実はD40のメディアスロットは基盤一体なので分離不能です。なので、D70などのような「後方から差し込む」という方式への改造は不可能。
AFカプラーの問題もあるのでD50の基盤は...、と思ったりもしましたが横幅が絶対的に足りません(´・ω・`)
と言うか、これにD40の基盤を押し込むと言うよりは「D40のシャシーにPRONEA Sのガワをかぶせる」と言うのが正しい方法のような気がします(出来るとは言ってません)
デザイン的に良いんですよね、PRONEA Sって。とにかく引っかかりが少なくて、ゴツくないから薄型のレンズ付けてバックに放り込んでおくという使い方が似合いそう。
D3000系のボディはこのデザインで出してくれないもんですかねぇ。