2012年の3月以来と言うことで、実に4年ぶりのみんぽすさんからの貸出しレビューとなります。
今回お借りしたのは「KENWOOD KH-KZ3000」と言うハイレゾ対応のオンイヤーヘッドホンです。
このKH-KZ3000は、Amazonなどの通販サイトではまだ取扱いが無いようです。すぐに手に入れたいと言うのであれば直販サイトでの購入が良いでしょう。
視聴してから買いたいと言う場合は、上記の製品名にあるリンク先に視聴できる店舗一覧のリンクが有ります。
直販サイト:
一見、普通の紙箱入りと言った風情のパッケージです。左上の「ハイレゾ」対応を意味するマークが誇らしげ。私自身はハイレゾ対応ヘッドホンを持っていないのですが、家電量販店の展示機で視聴した範囲では「メーカーによりばらつきが大きい」と感じていました。
ちょっと聴いた範囲では有るのですが、比較的明確な違いが分かりやすかったのは「ソニー」と「Beats」で、次いでaudio-technicaと言う感じ。パナソニックは高級機の展示が無かったので評価外。
最も、私の持っているオンイヤーやオーバーイヤーヘッドホンで最も高級機といえるのは「RP-DH1200」なので、KH-KZ3000と比べると価格は倍くらい違うわけですが...。
音圧レベルが103dBと言うのは標準的といって良いかと思う。因みに、DH1200は107dBとなっている。
再生可能周波数帯が「10~50kHz」と言うのはちょっと意外だったかもしれない。特性としては高音域側に広げている。これを見て思ったのは、「高音域側が響くのなら嫌だな」と言うこと。実際には、このタイプのヘッドホンなら「耳に刺さるような高音キンキン」と言うのは無いと判っているのですけれどね。
パッケージは、実は2重構造で内箱に本体は収められています。かなりピッタリと作られているのでちょっと取り出しにくいかな。もうちょっと「するり」と取り出せたほうが良いかも。特に、今回は貸し出し品ということもあって「外箱を破らないように」と気を使いました。自分で購入してというのだったら外箱は破ってしまったかもしれない。
開封すると、赤いベロア調の布が貼られた緩衝材で包まれた本体が姿を見せます。この辺りはさすがに4万円超えの製品と言った感じですね。使わない時にこれに収めておけばとも思いますけど、カッチリはまり込んでいるので取り出しが面倒かな。
アルミのプレートがハウジングに嵌めこまれているのですが、それがソリッド感を高めています。ただ、表面の加工のためか指先が乾燥してたりすると白っぽく粉が付いたようになりやすい。
鏡面加工で指跡が付くのとどちらが良いのかと言う感じであるけれど、滑りにくいという点ではKH-KZ3000のハウジングの仕上げのほうが良いのかもしれない。
40mm口径のトリプルネオジムマグネットドライバを採用しているのが特徴で、さらにハウジング内に4つの低音域用のダクトを備えているという凝った構造です。
イヤパッドの感触は柔らかく、オンイヤーと言っても耳に乗るのでなく、耳にかぶせる様な感じで着けられるので長時間の仕様でも耳が痛くなるということはない。側圧も低くはないが締め付けるような強さも無い。極自然に載っているという感じです。
KH-KZ3000はケーブル脱着式になっているのだが、ヘッドホン側に差し込む方は根元が青の4極プラグ側になる。これは、一般的な片出しケーブルのヘッドホンと異なり、左右ドライバのでグランド共用していないことを示す。つまり、ケーブルの交換だけで左右独立のバランス型として使えるということになる。
お気に入りのヘッドホンをバランス型に改造して使う人も居るので、ケーブルの差替えだけでバランス型に出来るのは非常に便利だろうと思う。
流石は付属のケーブルだけあって一体感が素晴らしい。抜け防止の仕組みなどはないが、むしろ急激な引っ張りで破損(断線)する可能性を考えればこの方が良いだろうと思う。DH1200の様にカールコードになっていれば抜け防止機構が有っても良いのですけれど...。
ヘッドバンドのステッチに合わせてか、赤の被覆のケーブルが精悍さを際立たせているのも良い感じ。
肝心の音質であるが、ハイレゾ音源もハイレゾプレーヤーも持っていないのでエレコムのiPhoneアプリを使って、サンプル音源で聴き比べをしてみた。
このプレーヤーを使うとiPhoneやiTunesで設定したイコライザ効果が効かなくなるのでヘッドホンの特性をそのまま感じることが出来る。
聴き比べに使用したのは以下のDJスタイルのモニターヘッドホン。発売当時の価格と貨幣価値を勘案すると、最も近いポジションなのはRP-DH1200になるのかな?
参考リンク:
「audio-technica ATH-PRO5MK2、格安ゲット!」
参考リンク:
参考リンク:
それと、'80年代のオープンタイプヘッドホン「Technics EAH-T11」の4モデル。最も、T11は'80年代の実力を比較したかったと言う感じですね。
参考リンク:
DJ1200は、既にAmazonで取扱いが無いようです。と言うか、商品ページ自体はあるんですが「現在お取り扱い出来ません」となっています。
さて、聴き比べた結果ですが、意外にも低音域の豊かさは「RP-DH1200」が一番でした。次いで「RP-DJ1200」と言う感じ。
低音重視という割には、ATH-PRO5MK2はTechnicsの2機種ほど出ていない感じで、KZ3000も同等といった感じです。
中音域の明瞭さは「KZ3000=DH1200≧DJ1200>PRO5MK2」と言う感じ。意外と頑張ってますよ、DH1200は。
高音域に関しては、完全にKZ3000がダントツですね。他のヘッドホンでは聴こえない、聴こえにくい帯域の音が聴こえてくる。耳に響くのではなく、高音域が伸びやかに聴こえてくる印象です。
KZ3000で聴いた後でDH1200やDJ1200で聴くと高音域がぼやけ気味に聴こえる。PRO5K2に至っては聞こえていない音域がある感じになる。
その理由は、以下のスペック表かた見て取れる。と言うか、視聴した後で確認してナットク。
注目すべきは「再生周波数帯域」のところ。先にも書いたように、KZ3000は「10~50kHz」です。そして、DH1200は「5~30kHz」でDJ1200は「8~30kHz」となっています。低音域に関してはTechnicsの2機種の方が余裕があるということです。
そして、PRO5MK2は「10~25kHz」と帯域が最も狭い。要は、このスペック表にある性能値がそのまま出てきたと言う感があるのが今回視聴して判った部分です。
低音がズシンと来るチューニングの方が良いというのであれば、KZ3000は若干物足りなく感じるかもしれません。特に、DH1200ユーザーだとそれを強く感じるかと思う。
私の比較したヘッドホンのユーザーで、KZ3000に最も不満を感じないのはPRO5MK2のユーザーだろうと思う。低音域の再現性は比較的類似性が有り、それでいて高音域の伸びが違う。クラシックを聴く人ならなおのこと違いが分かりやすい。が、高音域の伸びにこだわらないと言うのであれば実勢価格が6000円台で買えるPRO5MK2のコスパは魅力的だろうと思うが、クラシックを聴くのに使いたいなら断然KZ300がオススメです。
それぞれを単体で聴いたのではどれもが不満を感じないレベルの性能を持っていますし、同じ10Hz台からを謳っているモデルでもPRO5MK2より低音が弱く感じる物もあります。逆に20Hzからとなっているのに低音がズシンと来る印象の物もあります。例えば、Bluetooth製品で有線接続も出来る以下の製品は、メーカーサイトでは「20~20kHz」となっているのですが、有線接続でも体感的には低音域はDJ1200に近い印象です(高音域はPRO5MK2より若干劣る)
参考リンク:
「中華ブランドのBluetoothヘッドセットを買ってみた」
KZ3000について言えば、ハイレゾに対応を正式に謳っていること、ケーブル挿し替えでバランス型に出来ることにあわせて高音域の伸びと解像感に魅力を感じる。
低音域のそれについては、そもそものターゲットがDJであるDH1200やDJ1200に見劣りするのは仕方ない。用途が違うのです。
直販価格の「48400円(税込み)」を高いと感じるかは個々人で違うでしょうが、この価格帯のヘッドホンとしては平均的な印象なので、視聴できる機会があれば視聴した上で購入を決めたほうが良いとは思います。ただ、「耳に痛くない高音域の伸びやかさ」を体験しちゃうと欲しくなる人は多そうですね。
個人的には、再生周波数帯域が5~50kHzだったらヤバいって感じ。まぁ、この価格をヘッドホンにポンと出せる生活でも無いんですけどね(´・ω・`) まぁ、2万までかなぁ、ヘッドホン出せる金額...orz
最後に、いままで登場させなかった「EAH-T11」との比較ですが、これはもう「比較の対象にならない」です。貨幣価値換算すると最も近い価格帯の製品とは思うんですけどね(1980年で11000円!)
EAH-T11の再生周波数帯域は「20~20kHz」なのですが、とにかくフラットな特性です。そもそも、1980年代前半の製品ですし、現在のように低音域をブーストするとか無かった時代のものですから仕方ありません。基本的に、この時代のオーディオは「基本はフラット」で、チューニングは「イコライザかまして」というものですからね(大抵はイコライザなんぞ買えなかったけど)
また、インピーダンズが「125Ω」と現在のデジタルオーディオ機器に直繋ぎで使うのは無理があるのも事実ですね。