Nikon TC-16Aを改造してみた | Photograph to Life ~生活に写真を~

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2年ほど前に、地元の中古カメラ店で見つけてゲットした「魔法のテレコン」こと「Nikon TC-16A」を改造してみました。
このTC-16A、実はF-501と言うニコン初のボディ内モーター式一般向けAF一眼レフとほぼ同時に発売されたテレコンバーターです。
ニコン初の市販AF一眼レフはF3AFだと記憶してるのですが、一般ユーザー向けのAF一眼レフとしては、F-501が事実上のニコン初のAF機と言えるでしょう。

当時は、まだAF用レンズのラインナップが少なく、交換レンズの選択肢も限られていました。また、長くニコンを使ってきたユーザーであれば「Ai-s Nikkor」と言うMFレンズを既に所有していることになります。そこで、ニコンは広角側は犠牲になりますが「MFレンズをAFとして使えるテレコンバーター」を発売します。それがこの「TC-16A」という訳です。MFレンズでAF撮影が出来ると言うことで「魔法のテレコン」という訳ですね。

・Nikon TC-16A

この角度から見ると普通に薄型のテレコンと言う風情です。私のTC-16Aは、外観スレが多いもので、ロゴも一部消えています。が、F-501(980円でゲットした完動品w)でテストしたところ快調に動作しました。

・連動機構は機械的

こちら側はレンズを装着する面になりますが、AFカップリングも無く電子接点も用意されていません。絞りをボディと連動させる為の機構は昔ながらのAi-s式です。

・AFカップリングの有るボディ側

裏返すと、AF Nikkorにお馴染みのAFカップリングと電子接点がついています。また、鏡胴の下部にある膨らみのところにはCPU(=IC)が入っています。

このテレコンはMFレンズをAF化するために作られたものですが、そのままだとAF一眼レフでの使用は出来ません。どうしてそのような仕組みにしたのかは不明ですが、接点の配置が関係しているようです。

しかし、ちょっとした改造でデジタル一眼レフでも使うことが出来るようになります。「TC-16A 改造」で検索すると、改造例が多くヒットします。私もそれらのサイトを参考に改造を行いました。

・マウント部の分解

改造するには、まずマウント部分の接点周りを分解する必要があります。写真があまりないのは「微小なバネと接点用チップの紛失」が怖くて、作業に集中することを優先したためです。

・ネジ類は飛ばさない様に

ネジ類も微小微小なので、やはり飛ばしてしまわないように粘着テープなどに貼っておきます。この時、使う場所ごとにまとめておくと組み直すときに分かりやすくて良いですね。

・接点移動用の穴開け

この部品に1.5mm(1.4mmでもOK)のピンバイスで移動する接点用に穴開けをします。新規に開けた穴は、写真で言うと左から2番めになります。番数で言うと6番ピンになります。この部品では2番ピンが元々付いていないので、1,3,4,5,7の接点が元からある接点になります。

移動する接点は3番ピンで、写真で言うと右から2番めに開いている穴にある接点です。この3番ピンを新規に開けた6番に移動することになります。細い電線を使ってジャンパさせるので、3番と6番の裏側に配線を逃がすための溝を切らないといけませんが、これもピンバイスで穴開けして余計な部分をカットするのが一番簡単です。

・3番から6番に回路をジャンパする

検索した先のサイトでは、主に半田付けを伴う改造が主として紹介されています。私も当初はハンダ付けする方法で行こうと考えていました。しかし、バネにハンダ付けして仮組みしてみると接点のピンの動きが悪くなることに気づきました。
ジャンパするのに使用した配線は、撚り線のLANケーブルを解した物を使っています。私の持っている一番細いコードだからでもあります。

単純に私の技量不足ではあるのですが、接点が強く当たりすぎる弊害を考え、バネを使わずに何とか出来ないかを考えました。また、フレキの導電部分へのハンダ付けも、正直なところ自信が無かったというのが理由としては大きいですね。

なので、今回の改造では配線の先端がバラけないように予備ハンダをした以外はハンダ付けしていません。つまり、元々が「バネで導電部分に接触させている」のだから、「配線の先端部が導電部分に当たるようにして通電させる」と言う当たり前の方法で対処しています。接触を確実にする方法は、配線のテンションを利用する方法で大丈夫でした。

・接点の組み込み

この写真は動作確認時の物なので若干違っているのですが、やっていることは殆ど変わっていません。幾分変更したのは、3番ピンの部分が接点に強く当たるようにコードを曲げたことと、6番ピンのバネ穴にコードの先端を差し込んで「5番ピンとコードが接触しても短絡しないようにしたこと」の2点です。

また、組み直し中にバネを1本飛ばしてしまい、更にもう1本を鏡胴内に落としてしまった上に出てこなかったので、考えた末にジャンパに使ったのと同じコードをバネより若干短く切ってバネの代わりに入れる方法で対処しています。接点に係る負担を考え、コードでバネの代用にしたのは1番ピンです(一番最後に接点に当たるので)
最低限接触していれば動作するので、現物合わせで動きを見ながら取り付ければ何とかなります。

完全にマウントを組み上げる前に、接点部分だけを固定して動作確認しておきます。仮組み時点で動作不良があれば、接触不良なので調整します。

・組み上がった状態

単にAF動作させるだけであれば、これで完成です。が、このままだと絞り値が「F1」しか返しません。露出モードはマニュアルのみ対応可能で、AEモードは使用不可です。そこで、追加で加工を行います。

・ICの足を外す

ボディ側に来る方の下部にあるカバーを外すと、内部にフレキにハンダ付けされたICが出てきます。本当は、引っ張りだして作業したいところですが、フレキが両面テープでガッチリ貼り付けられているので無理に剥がすのは危険です。

作業としては、写真の向かって左から2番めと3番目の足をフレキから外す訳ですが、マイクロニッパーがあればカットしてしまうのが一番簡単です。私は、マイクロニッパーを持っていないので、先細のピンセットを使ってゆっくりと脚を剥がしていきました。こじって剥がすという方法はかなり強引な方法なので、出来ればやめておいたほうが無難です。
TC-16Aをこれから手に入れて改造するというならば尚更です。私の場合は地元中古カメラ店のジャンク棚に放置されていて、ビックリするくらい安値で売られていたものだったので余り躊躇なく出来ましたが、オークションなどでは最低でも1万円前後での取引なので失敗して壊すと泣くに泣けません。

ICの2,3番をカットすると絞り値は実絞りを返すようになります。と言うか、露出計連動レバーで感知する絞り値を表示するようになるという訳です。更に、ニコンの一眼レフでは露出計の測定値も使って「実絞り値」を表示するので、テレコンの倍数を掛けた絞り値が表示されます。
これでAE撮影もOKになる訳ですが、私のD700との組み合わせではAEモードで使う際に「いっぱいに絞った位置」にするとエラーが出ました。1段開けた位置にするとAE撮影が可能になったので、恐らくは露出計が測定した実絞り値が設計上の調整範囲を超えてしまうのだろうと思います。

AFについては、ULTRON 40mmとトキナーAT-X300SDでテストしてみましたが、思いの外快調です。もちろん、全域でAF出来る訳でなく「ある程度ピント合わせしておいての最後の追込み」で使うことになるのですが、合焦範囲が狭い為か合焦速度も早く感じます。

この改造までだと露出計連動レバーを持つ機種でしか使えませんが、更にちょっとした改造D二桁の「最小絞り設定警告レバー」を持つカメラでも使えるようになります。端子の移動ができる人ならば非常に簡単な改造で済むのでやる価値は有ると思います。