今回は馬モツの話をしましょう
先日、博多の友人と熊本の友人が、それぞれ10キロくらいずつの馬モツを送ってきてくれました
博多のモツは大腸、熊本のモツは胃です
これをジビエ料理が得意なシェフの店に持ち込み、少しずつ料理してもらいました
博多のモツはものすごくきれいに掃除してあり、すぐに食べられる状態です
これを唐揚げ(ほぼ素揚げ)にして食べたところ、ふわふわとしていて品がよく、素晴らしくおいしいものでした
初めて経験した食感なので他のものにたとえるのは難しいのですが、強いていえば生麸の天ぷらでしょうか
そのくらい軽い食感なのです
みんな気に入って、あっという間になくなりました
博多のモツはすき焼きにもしてみました
これまた大変おいしいもので、味は似て非なるものですが猪の腸のすき焼きのようでもありました
なにしろ、
食べたあと口の中に脂がまったく残らない
のです。
これには驚きました
一方、熊本から送られてきた生の胃は、やはり調理前にまず臭いを取る必要がありました
モツの臭い取りにいちばん適した方法はというと、先人はよく考えたものだと思いますが、モツを裏返して胃壁のほうに小麦粉を振り、それに水をかけ流しにしながらタワシでせっせとこすり取るのです
本来はこれで臭いが取れるはずでした
ところが残念なことに、洗ってからの茹でこぼしが足りなかったようで、臭いが少々残ってしまいました
その上、試しに煮てみたら締まって固くなるし、焼いたら焼いたで噛み切れないほどシコシコしているし、さしものシェフの腕をもってしても、なかなかの難物といえるものでした
同じ九州の馬モツでも、部位が違うとこうも味や脂や臭いが違うものか驚いたと同時に、今さらながらに馬のモツというのは奥が深いと思い知りました
日本には幸い、醤油という調味料と天ぷらという調理法があるため、動物の内臓もおいしく食べることができます
一方、アメリカやカナダでは現在、牛馬の内臓は廃棄物として捨ててしまいますし、フランスでも馬の屠畜は行われなくなりました
今のところ、馬モツを食べるなら日本でということになります
ただし欧米にもステーキタタル(タルタル)のように馬肉を食べる文化はありますし、牛のキドニー(腎臓)やトリッパ(胃)、豚の内臓の料理はあるので、何十年か経てば再び馬の内臓がおいしいものとして認識されるようになるかもしれません
食の好みは変化していくものです
日本でもこれから馬モツブームがやってきて、あの難物だった胃をおいしく食べる方法も出てくるかもしれませんね