システムラボの国際取引統合システムGXシリーズに、固定資産管理モジュールが追加される。2015年に上場企業への強制適用が予定されているIFRS(国際会計基準)に対応した製品だ。そのGX-iFAの監修を勤める新宿監査法人代表社員の壬生米秋氏に話を聞いた。
「IFRSを絶好のビジネスチャンスとしてとらえよ」
IFRSの強制適用は我々のような監査法人や対応ツールを持つITベンダにとって大きなビジネスチャンスとなります。確かにIFRSは、それだけのインパクトがあるものですが、ここで注意をしなければならない点は“本質”を忘れてはならないということです。
壬生米秋氏
IFRSを3年前のJ-SOX同様に“うわべ”だけで捕えようとすることは危険です。うわべだけで捕えようとすると物事の本質が見えなくなってしまうからです。“うわべだけの世界”というのは謂わば流行の美しい包装紙のようなもので、重要なのは、その包装紙に包まれた中身なのです。
IFRSを単なる流行でとらえることしかできなければ、IFRSに対応するために多大な投資をして終わりということも大いにありうるのです。
少しJ-SOXの話をしますが、「対応しなければ企業として信頼されない」などと妙な危機感に煽られて多額の投資をした経緯がありました。当時は決まり事と言われたドキュメントを定期的に作成したり、担当者を決めて管理するのは大変なことだと考えられました。
さらに社内システムのセキュリティも堅固なものにしなくてはならないと思われました。その結果がドキュメントの山とセキュリティによる業務効率の低下でした。これが、J-SOXをうわべだけで捕えた企業の結果なのです。
それでもJ-SOXの本質を理解して、企業経営を革新させた企業もたくさんあります。そのような先進的な企業は、J-SOXであれIFRSであれ何であっても企業経営を活性化させて成長させるための絶好の機会として前向きにとらえるでしょう。
特にIFRSは、世界中の投資家に対して企業の有益性・信頼性・成長性をアピールできるという大きなメリットがあるのです。IFRSへの適用は世界中の投資家への目を惹きつけるということにつながります。IFRS摘要による財務諸表は、同一基準による質の高いものになりますから、投資家にとって企業比較が容易になります。
IFRSへの適用はJ-SOXにも関連してきます。SOX法は「上場企業の会計改革と投資家保護のための法律」です。IFRSは企業の財政状態を公にするためのものですからSOX(内部統制)の一部とも言えるのです。実はIFRSだSOXだと大騒ぎする必要もないのですね。IFRSもSOXも特に新しい考え方ではないのです。当たり前の企業経営さえ行っていれば、いかなるものも恐れる必要はないのです。
日本人というのは欧米人と違って“責任を持って自分で判断する”というのが苦手で、どちらかというと依存型な方ですから、IFRSへの対応では何をすればよいのかわからないのが実情だと思います。しかしJ-SOX同様に闇雲に投資した揚句に何にもならなかったということだけは避けなければなりません。
企業経営は既にITによって運用管理されていますから、IFRSへの対応はITシステムの修正を考えなければならないと思います。既にERPパッケージを導入済の企業さんであれば、会計処理に連携しており、影響があるシステムについて改修を加えれば良いわけですが、それぞれブツ切りになった責任の所在も改めて見直す必要があります。
しかし、それ以上に重要になるのが固定資産管理です。IFRSでは“固定資産を経済的な実態に合わせて処理する”ことが求められています。日本基準での従来のように固定資産管理の税法基準が採用できる余地は少なくなると思われますから、IFRSに合わせた全面的な見直しが必要になるのです。固定資産の償却計算が複雑になる可能性が高いのでシステム上で管理できる対応は必須となるでしょう。
「GX-iFAの3マルチ、3階層とは何か?」
固定資産管理システムも新しい考え方による製品が必要です。私が監修するシステムラボさんの「GX-iFA」は、真の意味でIFRSに対応している製品と言えるでしょう。
壬生氏とともにGX-iFAの監修を務める張奎軍氏
GX-iFAの大きな特徴は多通貨・他言語・多基準に対応した「3マルチ」と、法令基本、法令特例、IFRS(国内・海外)に対応した「3階層」です。いずれもが海外展開を実行している・・・もしくは、これから考えているという企業さんに向けた製品です。さらにリース資産管理にも対応しています。
IFRSに対応するということは世界中の投資家の目を惹かせる必要があるのですから、機能的にもグローバル展開できるような機能を持たせなければなりません。私も開発に関わった国産ERPパッケージの「A.S.I.A」(現、東洋ビジネスエンジニアリングが販売)のようなグローバルに対応した機能が必須となってくるのです。そのために多言語、多通貨はもちろんのこと、各国の会計基準に対応できる仕組みを作らなければ、海外展開される企業さんにとって不十分なものとなってしまうでしょう。
しかし、IFRSへの対応を迫られても、根底からIFRSのような世界標準の会計基準に合わせることは実は現実的ではありません。IFRSに対応する一方で各国の会計基準に合わせる必要が出てくるのです。各国の会計基準は長い歴史の中で確立されてきたものですから、それを根底から覆して全部をIFRSに適用させるなどというのは不可能に近いことです。各国の会計基準を“個性”と捕えて、IFRSに対応する一方で、その個性を吸収するという機能を持たせる必要があるのです。
3階層というのは、企業規模に応じた、または目的別に階層を選択して使えるということです。“法令基本対応”のみであれば中小企業さんでも使えるものです。つまり中小企業さんから上場企業まで幅広く使える製品なのです。IFRSは上場企業だけでなく将来的には連結子会社も対応する必要に迫られると考えられますから、親会社だけでなく連結子会社も使うということを考えた場合、高価な大型ERPシステムを導入するよりもGX-iFAをグループ企業全体で使う方が効率的でしょう。GX-iFAの詳細は、まだ明らかにはできませんが、かなりのインパクトを持った製品となるでしょう。
IFRS対応で重要なことは、IFRSを単なる決まり事の対応としてとらえるのではなく、世界中の投資家の触手が動くような企業として認知させるための絶好の機会としてとらえることが重要だということでしょう。