息子が受けた英検準1級の2次試験の結果が今週火曜日に出た。「合格」だった。しかしながら、順位は受験者全体の5%以内と凡庸な結果に終わっており(一次試験の合格者が15%以下だと言われているので、受験者の上位5%は合格者の中で特段よいわけではありません。)、今回息子の、というよりも私の、大きな反省点が浮き彫りとなった。




 息子はWriting で大きく点を削られている。

採点詳細の内容を確認すると、一番大きく失点した採点項目は、

要約問題の

・語彙 2/4

・文法 2/4


英検準1級の「語彙」「文法」では何を見ているのかが英検のホームページに掲載されていた。



 これらを踏まえ、まず一つ目の懸念は「息子は英検準1級に相応しい語彙や文法力を備えていないのではないか」というものだが、これに関してはそんなこともないのではないか、と思う。

英検準1級とはCEFRのB2レベルで、満点を取ってもC1は認定されない(B2を超えない)レベルのテストであることを踏まえ、息子の語彙力と照らし合わせると、語彙力の不足は考えにくい。

具体的根拠は、

・普段使う語彙

・去年の夏(一年以上前)に受けたTOEFL juniorで「文法・語彙」は満点を取っている(TOEFL juniorは満点がちょうどCEFRのB2の真ん中くらいのレベルのテストであり、満点はそれを超えるレベルであることを証明している)

・今回の準1級のリーディングの最初の語彙問題では、英検に合わせた単語を覚えるなどの作業は全くせず、17/18を取っている


 ではなぜ、息子のライティングは語彙・文法の観点で半分の点しかもらえなかったのか。

息子との会話で減点の理由がわかった気がした。

息子に「要約」のライティングで一番気をつけたことを聞いてみた。「ママがいつも言うようにやったよ。英検では問題文がたった3段落しかないから、各段落の大意を取ったあと、段落の関係性が複雑なこともなくて、もうシンプルに段落の意味をつなげるだけだったよ。」

「表現はどんなこと気をつけた?」

「ママが言ってるようにしたよ。要約は、余計な部分を削ぎ落として、なるべくシンプルに、でしょ?」


 長文を読み込んで要約する能力というのは、知性を構成する重要な能力の一つだ、という認識から、息子が幼い頃からその能力獲得のために意図的に取り組んできた。小さい頃は絵本レベルの長さのものを素材にして、テーマは何?(何について書いてあったのか)、メインメッセージは何?(筆者の言いたいことは何か)を常に問いかけ、文章構造を考える作業を数えられないほどの回数、やってきた。

その時常に


・段落とは意味のまとまりである(各段落の意味はそれぞれ一つに集約できる)

・段落間の関係を明らかにし(=文章構造を明らかにし)、文章全体のメインメッセージを読み取ること

・要約を作るときは、余計な文修飾は削ぎ落としてなるべくシンプルにまとめること


を伝えてきた。

この項目のうち、最後の項目が、英検の採点基準とは真逆の方向だということに気づく。英検はあくまでも言語検定試験であり、「英語を使えますか」を測るテストであることから、要約問題と言えども、「語彙」として「多様な語彙や表現」を、「文法」として「文構造のバリエーション」を見ているのだ。英検がお墨付きを与えている旺文社の過去問の解説を見ると(受ける前に見ろという話だが)、要約問題の解説として、単語の言い換えパターンや断定的表現を避ける場合の文表現パターン、一文を名詞節に言い換える方法、能動態を受動態に変える方法など、本文とはなるべく別の表現になるようにするための工夫パターンに多くの文字数を割いていた。要約問題としては全く難易度が高くないので、むしろ、ここに注力すべきだったのだろう。


 息子はこの採点結果を受け、「要約で多彩な語彙や文構造のバリエーションをゴテゴテ盛り込むことが求められることが解せない。」「僕はルールに納得できないゲームには参加したくない。」と言い始めた。「そうだねー。」と受け止めつつ、受ける前にゲームのルールをきちんと調べて伝えていなかった己の未熟さを悔いた。初めからこのルールを知っていて、ちゃんと点が稼げていたら、息子の英検脱退宣言は免れたであろう。英検1級も要約問題があり、同じ観点で採点されるようだ。



 かくして、我が家の、最初で最後の英検受験は幕を閉じた。来年はTOEFLを受けるそうだ。


なお、TOEFLのWriting にも要約問題があるが、採点の基準は以下のようなものだ。




TOEFLの採点基準のほうが、息子が捉えている「要約」という行為の本質に近いものを見てくれる気がする。