今回の採卵で最も良かったことは、夫の精液所見が良かったことだ。夫の精液所見は、これまで常に直進率が基準値を下回っていたが、今回初めて30%に乗り、基準値内となった。採卵前日、我が家のバッタが再び産卵し、夫はそれを見て「吉兆だ!吉兆だ!」と喜んでいたが、本当に吉兆だったのかもしれない。


 これまでこのクリニックで3回の採卵をし、計27個(変性卵や未熟卵は除く。1回目10個、2回目7個、3回目10個。体外受精と顕微授精の割り振りは、体外が13、顕微が14。)の媒精・培養を行ったが、そのうち良好胚盤胞となったもの(水色と緑色で示されるもの)が3つあり、それらは全て体外受精由来だった。キラリと光る胚は、なぜだか体外受精からしか出来ていない。


 一方で、当然だが、夫の精液所見が悪い時ほど、顕微授精と体外受精の3日目の状況は差が出る。体外受精は精子選別をしないため、受精精子の質にムラができ、それらをカバーしてくれる顕微授精のほうが3日目の粒は揃うのだ。


 某氏曰く、体外受精と顕微授精は受精成立の機序が全く異なる。ザックリ言うと、体外受精は精子が卵子の膜とくっついて徐々に入っていくが、顕微授精は突然精子が卵子内に注入されることとなる。したがって、人によって顕微授精が向いている人もいれば、体外受精が向いている人もいる。


 全ての卵子を体外受精に振るのは、賭けだった。採卵日当日、診察の時点でザックリとした精液所見はもらえるが、顕微鏡で覗いた時にしかわからない空胞精子の多寡はわからないからだ。

私たちは良好胚が欲しい。私たちが貯めている胚盤胞のうち、良好胚3つ以外のものは全てCのつくものだ。Cの付く胚は、もう十分だ。そんな気持ちが今回の賭けを後押しした。

もし仮に全滅したとしてもいい。

それでも、賭けてみたい。


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 そして3日目、期待と不安で妙に昂ぶる気持ちを抑え、電話をかけた。

結果は、

5/7が正常受精。

(1PNのものは異常受精ではあるが正常受精のものと一緒に継続培養し、)

・11G3(1PN)

・11G3✴︎

・10G3✴︎

・8G3✴︎

・8G3

・8G3

に育っていた。


✴︎の記号が付くものは異常分割の無いものだ。過去のデータを分析すると、私たち夫婦においては、胚が正常分割することが良好胚獲得の十分条件ではないが、必要条件である。また、異常分割胚からは、Cが付く胚の中でも特にグレードの悪い胚盤胞、BCかCBかCCというグレードの胚盤胞(つまり片側にもAが付かない)しかできないという負の相関もある。私たちにとっては、「3日目のグレードがG2がG3か」ということより、「正常分割か異常分割か」のほうがその先を決めるファクターとして重要みたいだ。このクリニックでの採卵1回目では3/10、2回目は1/7、3回目は3/10の割合で正常分割胚があった。今回は正常受精5個のうち3つも正常分割が確認できた。割合としては一番高い。


全てを継続培養することにした。

もちろん最終培養結果が出るまでわからないが、今のところ、繋がった気がした。