又吉直樹の「火花」 | 優しい言葉でビジネス書をご紹介します

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内容:ブックレビュー
書名:火花
著者:又吉直樹
出版:文藝春秋
発行日:2015年3月15日

「火花」を読んでみた感想

この本は、お笑い芸人の又吉直樹さんの作品です。又吉さんは、相当な読書家だと聞いていましたが、さすがに文章力が有り、読み応えのある内容でした。
「お笑い」とは何かを追求する職人たちのストーリーです。彼らの人生はとっても阿呆で、とっても一途で、とっても美しい人生です。



「火花」のあらすじ

お笑いコンビ「スパークス」の芸人、徳永(たぶん又吉さん自身がモデル)が、先輩芸人の神谷と出会い、お互いの交流の中で、お互いの芸を磨いていく。スパークスの隆盛から、コンビ解消、徳永の芸人引退までを描いています。



笑える話かどうか

お笑い芸人の又吉さんの作品だけに、お笑いネタが随所にあります。そのネタが笑えるか、というと、私は「くすっ」くらいに笑えました。(又吉さんゴメンナサイ)
徳永と神谷が出会って、はじめて一緒に呑んだ時のシーンはこんな感じです。


「お前のコンビ名、英語で格好ええな。お前は父親になんて呼ばれてたん?」
「お父さん」
神谷さんは僕の目を見たままコップのビールを一気に空け、それでもまだ僕の目をまっすぐに見つめていた。
数秒の沈黙の後、「です」と僕はつけくわえた。
  ・・・中略
「もう一度聞くけど、お父さんになんて呼ばれてたん?」
「オール・ユー・ニード・イズ・ラブです」
「お前は親父さんをなんて読んでんの?」
「限界集落」
「お母さん、お前のことなんて呼ぶねん?」
「誰に似たんや」
「お前はお母さんを、なんて呼ぶねん?」
「誰に似たんやろな」
「会話になってもうとるやんけ」




こんな漫才の掛け合いのような会話が、徳永と神谷の間では普通にあって、ボケのない会話が不自然であるような2人の関係です。



それにしても、お笑い芸人さんの「お笑い」に対する追求心は、尋常ではありませんね。ものすごく真剣です。又吉さんは先輩芸人の神谷に、このように漫才師を語らせています。



「漫才師である以上、面白い漫才をすることが絶対的な使命であることは当然であって、あらゆる日常の行動は全て漫才のためにあんねん。だから、お前の行動の全ては既に漫才の一部やねん。漫才は面白いことを想像できる人のものではなく、偽りのない純正の人間の姿を晒すもんやねん。つまりは賢い、には出来ひんくて、本物の阿呆と自分は真っ当であると信じている阿呆によってのみ実現できるもんやねん」



この本には、こんな、「お笑いとは何か」を追求する語りがよくありました。



競うということ、敗者がいることの意義

徳永が神谷に、コンビを解消し芸人を引退する、と告げた時の、神谷の言葉がとても印象的でした。



「漫才はな、一人では出来ひんねん。二人以上じゃないと出来ひんねん。でもな、俺は二人だけでも出来ひんと思ってるねん。もし、世界に漫才師が自分だけやったら、こんなにも頑張ったかなと思う時あんねん。周りに凄い奴がいっぱいいたから、そいつ等がやってないこととか、そいつ等の続きとかを俺達は考えてこれたわけやろ?ほんなら、もう共同作業みたいなもんやん。同世代で売れるのは一握りかもしれへん。でも、周りと比較されて独自のものを生み出したり、淘汰されたりするわけやろ。この壮大な大会には勝ち負けがちゃんとある。だから面白いねん。でもな、淘汰された奴らの存在って、絶対に無駄じゃないねん。やらんかったらよかったって思う奴もいてるかもしれんけど、例えば優勝したコンビ以外はやらん方がよかったんかって言うたら絶対そんなことないやん。一組だけしかおらんかったら、絶対にそんな面白くなってないと思うで。だから、一回でも舞台に立った奴は絶対に必要やってん。ほんで、すべての芸人には、そいつ等を芸人でおらしてくれる人がいてんねん。家族かもしれへんし、恋人かもしれへん」
僕にとっては相方も、神谷さんも、家族も、後輩もそうだった。真樹さんだってそうだ。
かつて自分と関わった全ての人達が僕を漫才師にしてくれたのだと思う。
「絶対に全員必要やってん」
神谷さんは小指でグラスの氷を掻き混ぜていた。
「だから、これからの全ての漫才に俺達は関わってんねん。だから、何をやってても芸人に引退はないねん」




漫才の話ですが、私達が人生で経験するすべての競争について言えることですよね。一生懸命やっても日の目を見ない時もあります。そんなとき、自分の存在ってなんだったんだろう、と悲しくなります。でも、神谷の言葉のように、自分たちがみんなで世界を作ってきたんだ、と思えるなら、引き続き生きていく勇気が出てきますね。



又吉さんのお笑いが大好きな方、一事に人生を打ち込む生き方の美しさを感じてみたい方、是非、ご一読ください。

火花/文藝春秋

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