<第三章 プレゼンテーション 5>
マナナ化粧品との2回目の打合せは、表参道にあるエレメントデザインのミーティングルームで行われた。
マナナ化粧品の加藤課長は言った。「いやあ、良いところですね。8月の強い日差しを浴びても、こうして植物の日よけがあると涼しいものですね。
エレメントデザインのディレクター山本が応えた「表参道は緑が多いですからね、ミーティングルームは北側にあるので、夏はエアコンをかけなくても窓を開けていれば涼しいんですよ。」と
「それでは、お時間になりましたので、2回目の打合せを始めます。」と佐藤は、言った。今日は、スマート電気の鈴木さんの方から質問があるそうです。
「『ウェーブウォッシュ』のコンセプトは、新婚の夫婦をターゲットにした結婚準備用品という位置づけですので、奥さまは、20代の主婦ですが、ご主人の衣類も洗うわけです。女性と男性では香りの嗜好も違いますし、相手によっても良い香りというのは異なると思うんですよね。ですから、洗いたての爽やかな香りが、長続きすることが、大切だと思うのですが…」
吉田がにこにこして応えた。「鈴木さんのことだから、そうおっしゃると思いました。どのような香りにするかは、今後の課題ですが、どのようにして香りを長持ちさせるか、ということについては、最新のコロンに使われている技術を使います。具体的には、ナノサイズのカプセルに香りを封じ込め、カプセルが少しずつ壊れることによって、香りも少しずつ香るという技術です。もちろんカプセルと言っても、薬のカプセルのようなものではなく、分かりやすく言えば、香料の表面にコーティングを施したようなものだとお考えください。
由美子は言った。「そうでしたら、前日の打合せの時に教えてくださればよかったのに・・・」
吉田が応えた。「いえいえ、この技術を使った香料は、当然のことながらコストアップになるんですよ。『今回のキャンペーンに載せることによって、パブリシティが得られるから、テレビCMにかかる広告宣伝費が大幅に削減できる。』とプレゼンテーションして、先日、役員会の決裁が下りたばかりなんです。」
どうやら由美子の周りには、ポジティブな人が集まり大きな『ウェーブ』を巻き起こしているようだ。