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うまくいかないこともある

誕生日だった昨日、きょうだいのひとAがお寿司をごちそうしてくれた。
お互いの誕生日に美味しいものをごちそうしあうようになったてから、どのくらい経つのか。
きょうだいのひとAが自己都合でマイカーを廃車にしたので、遠出をして食べに行く事が出来なくなったが、まあ身近にも美味しいものやさんはあるものだ。
お寿司といっても、回転する御寿司やさんなのだか、ここはネタが新鮮で大きくてしゃりが好みなので、去年くらいから誕生日のごちそうはここにしてもらっている。
何より、皿が小舟に乗ってどんぶらこと流れて来るのが地味に楽しい。
ベルトコンベア上に皿をギュウギュウ詰めにして、カーブを行く時遠心力で飛び出したりしないかとヒヤヒヤすることがない(心配しすぎ)。

昨日、客はわれわれふたりと2、3組の家族連れしか居なかった。
握り担当のお兄さんひとりの声だけが、妙に響いていた。
「今日のお勧めは、北海道から来たとろサーモンとタイ!」
「同じくボタン海老!おおぶりで甘くて美味しいですよ~!!」
「ワサビ抜き、お好きなものをドンドンおっしゃって下さいねえ!」
「さーあ、美味しいお寿司はこ~ちらッ!!(入り口に向かって)」
かぶりつくようにして目の前から言われて、ハアとか頷くしかないわれわれ。
できれば茶わん蒸しと赤出汁以外で会話するのは避けたいチキンハート。
ある程度好きなネタ(流れて来るものオンリー)を食し、締めは大好きなハマチ(未食)でいきたいなと、行き過ぎる船に目をやるが…
いつの間にか、見た事ある皿ばかりが運ばれている。そして静かな店内。
ちょっと長州小力系の握り担当のお兄さんが居ない。
今日は彼ひとりを除いて握れる店員がいないようだった。
ここで妥協してまたマグロに行くもよし、もう少し粘って新たな皿が厨房奥から来るのを待つもよし…
さんざん迷って、勇気ある撤退をしようと最後の茶を啜ったその時、新たな客が立続けに3、4組入って来た。
意気揚々と小力兄さんが、厨房奥からメインステージ(握り場)に帰って来た。
「はい!ハマチですねぇっ!!」
注文を受けて握る小力兄さん。ハマチ、ハマチ!念が通じたのか!
「これならついでに何皿か握って流してくれるよ」とのきょうだいのひとAの予言は当たらず、次々と注文の品をこなしていく小力兄さんは、もうわれわれのことなど忘れてしまったようだった。あんなに構ってくれたのに…
失望するわれらの目の前を、しずしずと行く見た事ないネタの皿が。
乗っているのは1カンだけだし、食べられるんじゃないかなと思って手にしたそれは、ふかひれの煮凝りっぽいものだった。
「あ…」
ふかひれ大好きだけど、何で寿司になってるの。
しかも…あまり…その…うん…(泣)
ごめん、きょうだいのひとA。次回はこれ食べない事にするし、ちゃんと食べたいものを口頭注文するよ!

ロマンス

今年の4月の終わりくらいだった。
帰宅途中の電車の中だった。
その日、職場の同僚に何度目かの大いなる失望を味わい、
気持ちがとてもささくれだっていた。
イライラしながら、半ばふて寝のようにして座席に沈み込んでいた。

降りる駅の一つ手前だったと思う。
座る自分のすぐそばのドアが開き、誰かが乗り込んで来た。
男子高校生と女子高校生のふたり連れ。
彼等はそのまま空いた席ではなく、開いたドアの向いのドア付近に静かに歩いて行った。

イライラしていた自分は、とくに彼等に気を払わなかった。
それどころではない。
明日もまたあの間抜け面と向き合って仕事をしなくてはいけないのだ。
何とか気持ちを落ち着けたいのに。
焦るほどに募るいら立ちは、どうしようもなく。


近くで、緊張した若い声が聞こえた。
「あ、でも電話なんかしたら、迷惑…かな」
男子高校生が、うつむき加減につぶやいた。
ほぼ間を置かずに、別の若い声がした。
「いいえ、そんなことないです」
女子高校生が、かぶりを振って答えた。
そんな彼女の様子に、彼が嬉しそうに言った。
「…ありがとう」
ほっとした声だった。

多分、今年入学したばかりの後輩(女の子)と、その先輩(男の子)だろう。
まだ親しいわけではない、お互いを探るような、でも、甘酸っぱく爽やかな空気。

メールではなく、電話というのが何だかイイな、と思った。
今時、こんな会話を電車のなかで聞けると思ってなかった。
いつの間にかイライラはどこかへ消えてしまった。
偶然同じ車両の近くに居合わせただけの、彼等に救われた。
こんな事がいつもあるとは思えないけど、あると良いなと思う。
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