陥穽 -16ページ目

陥穽

陥穽(かんせい):落とし穴
詐称・詐欺・偽装・・・世の中はさまざまな陥穽に溢れている
騙されちゃいけない、なんて事書こうと思ったけれど・・・
感想文が多くなってしまった(^^;

何かで大賞を取ったとか、ベストセラーであるとか、そういった理由だけで本を買ったりすることはありません。
むしろ、警戒しますw

しかし、その書店や書店グループ等で押している作品には、興味を惹かれます。

そういった本の場合、最近はスタッフが書いたであろう紹介文がおいてあったりするので、それを参考に帯やあらすじ、中身の触り部分の読み、なんとなく書いてあることと合致するかを直感で決めて購入するケースがわりと多くあります。

しばらく前ですが、ある書店で、やはりスタッフが書いたであろう広告が書かれていました。

そこに書いてあったのは、こうでした。

「夢枕獏大推薦!店長大推薦!驚愕の山岳サスペンス!」

夢枕獏 推薦で20%、店長も推薦で30%、そして、ポップなマジック書きに40%。

パラっと捲って、100%に達して、即買いしました。

笹本稜平 の天空への回廊です。
##################################################################
エベレストへの冬季・無酸素・単独登頂に成功した真木郷士は、荘厳の景色の中で感慨にふけっていた。しかし、長時間そこにとどまることは死を意味する。このまま眠りに尽きたい衝動を抑え、ベースキャンプへと下降する一歩を踏み出した。
数時間かけ、まもなく8000メートル地点になろうとする頃、大気を引き裂くような金属音が聞こえてきた。
振り向くと、太陽と見紛うほどの明るい光が郷士の目に映った。それは徐々に大きさを増し、爆音と共に目の前を通過していった。そしてそれは、頂上付近に激突した。
ミサイル!?そう直感した郷士であったが、仔細を考える前に、純白の波濤に襲われた。雪崩。咄嗟に岩塊の影に這い蹲り、辛くもやり過ごす事に成功した。
急ぎキャンプに戻ると、そこにはペンタゴンからの派遣者の姿があった。墜落したのはアメリカの人工衛星だったのだ。
加えて、親友のフランス人マルク・ジャナンが行方不明になったことを知る。
郷士は、ペンタゴンより衛星回収行動への参加を要請されるが、親友を地獄に追いやった国家の協力へに嫌悪感を示し、一度は辞退する。しかし、単独行動が不可能となったこの状況下において、唯一マルクを救出できる機会でもあることを察し、参加を決意する。
脅迫に似た巧みな誘導であることを感じての、積極的ではない決意であった。
そして、そこには全世界を震撼させかねない、大国の機密が眠っていた。
##################################################################
店長など知りませんがw、夢枕獏といえば、実際に登山もし山岳小説も執筆する作家で、その彼が推薦するのであれば、壮大な山岳小説であろうことが想像できました。

もちろん山岳小説としても非凡な表現力を備えていますが、山岳小説と片付けてしまうのはい惜しい作品です。

冬季エベレストに、単独で、無酸素登頂する。

この部分だけでも、充分にひとつのドラマにすることもできる要素です。

それが、冒頭のたった十数行で語られ、以降、墜落、雪崩、ベースキャンプに到着し、墜落した物の正体が暴かれるまでの十数ページを経て、なおも600ページ近い分量が残っているのです。

これ以降、この量で何を語ることがあるのか。そう思いつつも、壮大かつ脅威に満ちたヒマラヤ山麓の大自然を背景に、人間と、それが築き上げた国家、そして種々の技術と陰謀が絶妙に絡み合い、ページをめくる手を止めさせません。

登場人物の誰もが非常に個性的であり、それぞれの理に適った行動をするのですが、それぞれに納得できる面を持たせつつ、主人公側には寄り添いたくなる心境を、悪役には許しがたき感情を植えつけさせているテクニックが、読ませ方を加速させているのかもしれません。

とにかく、これでもかというくらい仕掛けがちりばめられており、伏線もたくさん張られています。

かなり取材も行っているのでしょう。

山岳的な要因はもちろんですが、国家の現状から、人工衛星や、戦争、宗教、心理的要因の随所に至るまで、幅と奥行きの深さが窺えます。

ハッピーエンドの作品ではありますが、簡単には終わらせない、という、印象に残るエンディングも、最後まで見せてくれるなぁといった感想です。

店長、お目が高いね。

そう言っても良い、そんな作品でした。

今日はここまで。

天空への回廊 (光文社文庫) [文庫]
笹本 稜平(著)
陥穽-天空への回廊



今回、騒がれている、お相撲の八百長の件。

下手なこと書くと、各方面からつつかれそうで怖いのですが、ちょっと思いを書きます。

今回の件について、どこだかのお偉いさんが、妙にカン高い声タメ口で、「しつこくしつこく調査する」と言って、その翌日、春場所中止が決定された、という報道がなされました。

このことに、妙な違和感を覚えたのです。

真剣勝負に見せかけておいて、でも、勝負は二人の間で最初から決められている。

こういった行為である八百長は、確かに、良いイメージが沸きません。

真剣に見ている人にとって、あるいは、どちらかの支持者にとっては、負ければ涙が出るほど悔しいし、勝てば歓喜に踊る感情が、最初から決められていたとなれば、それは、辛いでしょう。

その気持ちは充分に解ります。

ですが、そこまでして相撲を見ている人は、どのくらいいるのでしょうか?

既に数年前に亡くなった祖父母は、相撲が大好きでした。

三度の飯より、というほどではなかったにせよ、テレビ放送は、ほぼ釘付け状態でした。

好きな力士も、嫌いな力士も居たと思いますが、それよりも、取組自体を見るのが好きだったように思います。

おそらく、道端で力士を見かけたら、それが名の無い力士であっても、触りたがったに違いないでしょう。

そんな、相撲は見ているだけで気持ちが良い。力士の個性も、勝ち負けも気になるけれど、取り組みそのものが面白い

そういう形で相撲が好きな方も、大勢いらっしゃるかと思うのです。


以前、何度かボランティアで老人ホームを慰問していたことがありました。

その時、相撲中継をとても楽しみしている、というお話をたくさん年寄りの方から伺いました。

今回の決定は、そんな、相撲を見ているだけで満足できるといった、多くの人々のささやかな楽しみを奪ったのです。

神事、という、神聖な面は、もちろんあるでしょう。

それを穢したのですから、ハッキリするまでは場所を開催しない、というのも筋が通っています。
理解できます。

しかし、

小さな力士が、大きな力士を投げ飛ばす豪快さ。

ここで負けたら後がない力士が、がんばって勝った気持ちよさ。

そういった、ある種、見せるための興行、といった面も少なからずあったはずだと思うのです。


今回の決断。

楽しみにしているお客さんより、内部の調査を徹底的にするというパフォーマンスを優先したように見えてしまいます。


どのくらいの割合で、八百長をやったのがいるのかわかりませんし、八百長することで、誰が得したり損したりするのか知りませんが、全てを中止する必要性があったのでしょうか?

八百長していない、潔白な力士数人だけででも、取組を実現させることはできなかったのでしょうか?

相撲に対してそれほど真剣でない、けれど、好き。

そういった、田舎根性の、多くの顧客目線に、なぜなれなかったのか。

ちょっと疑問なのであります。


もう一つ別の切り口もあります。

八百長は昔からあったようです。

なのに、なぜ、今中止するのでしょうか。

甲高い声のおっさんの協会の言から読み取れますが、その協会の方々は、八百長の事実をうすうす感じていた、というか、完全に知っていた筈です。

しかし、バレてしまったから中止、という体を取っている。

では、バレなければしゃあしゃあと続けていたのかと思うと、とても不思議です。


そしてもう一つ、携帯の、消去したメールをどうにか再現して、それを証拠にする。

犯罪の前には、プライベートは無い。

わからなくもないのですが、それって、合法的なのでしょうか。


いろんな疑問が湧き出てきます。


まぁごちゃごちゃ言っていますが、神事ですからね。

隠れてコソコソやっていることは、神様はまるっとお見通し、なんでしょう。

良い方向に進んでくれれば、万事良し。でありますな。


なんか、取り留めなくバラバラですが、今日はここまで。
暇潰しに訪れた書店で、いきなり目に入ってきたものがありました。

平積みされていたその本は、全部で三冊。全ての表紙が草原をイメージさせる写真で、横並びに置かれると、何かの写真集のような錯覚してしまいます。

タイトルを見ると、新世界より とあります。

思わず声を出して唸ってしまいました(恥)

貴志祐介 の同書は3年前にハードカバーで発刊された、本格SF作品です。


発売されたハードカバーは、上下巻で構成で、価格は各1995円でした。

私は混雑した電車での立読みが多いため、片手で持ってページがめくれるよう文庫本を購入するようにしているのですが、数年ぶりの貴志祐介 の新作とあって、このときはとても悩みました。

しかし、読みにくい形状に4000円近くの金額をかける事実に、歯止めがかかりました。どうせ1、2年で文庫本が出るだろうと踏んだのも、後押しした要因でした。

が、2年後に発刊されたのは、全てを1冊にまとめた新書版サイズ。これは2000円で、そこそこお手ごろ価格になっていましたが、書店で試し持ち(?)したところ、たぶん15分と持たないことが容易に想像できました。

ここは賭けでしたが、さらに分冊化してくれることを望んで、耐えることにしました。

そして、今年、思惑通りの分冊化で発刊されていました。1冊平均約800円弱。3冊買うと2400円弱で、新書版からすると2割り増しになりますが、読めない本を買っても仕方ありません。

ただし、SFであるという情報しか知らず、内容も一切情報を仕入れていませんでしたの、ハズレの可能性も加味して、とりあえず一冊だけ、購入しました。

なんかセコイ話になってしまいましたね。すみません。。。

しかしそれは、懸念に終わりました。

待った甲斐あり、そんな感じでした。

##################################################################
利根川流域に位置する周囲50キロメートルほどの集落、神栖(かみす)66町。
その住民、渡辺早季は、新体制が軌道に乗ったところで芽生えてきた疑惑の種を憂い、人間が同じ悲劇を繰り返さないために、十年前、多くのものが灰燼に帰した事件の一連の顛末を書き留めておくことを決意した。

手記は、23年前。早季が12歳の頃に始まる。

神栖66町は、町を囲む八町標(はっちょうじめ)と呼ばれる注連縄に添って結界が張られており、堅く、道切りをされていた。
外界は、バケネズミ猫騙し風船犬といった、魑魅魍魎が巣食う世界が広がっており、呪力を待たない子どもたちは、八町標の外に出ると恐ろしい目に会う、とされてた。
呪力とは、脳内でイメージすることにより物理的な力を加えることのできる能力である。しかしこの能力は、ある程度の年齢に達するまで現れることはなかった。
子供たちは小学校で学び、能力順に卒業し、全人学級へと進むことができる。全人学級では、呪力の使い方を主として、大人として生きてゆくための教育と訓練が施されるのである。

同級生の中で最後に全人学級へ進んだと言われた早季は、しかし自分の後にもう一人いたはずだという違和感を禁じえなかった。
みんなの記憶から消えてしまったその子は、いったいどうしてしまったのだろうか。

しかし、いつしかそんな不安も忘れることとなり、早季は全人学級での生活を愉しむようになっていた。
そして、全人学級における最大行事である夏季キャンプで、早季は、同じ班となった、優等生の、親友の真理亜、お調子者の、内気ならと共に、その後人生を大きく変える事件に遭遇する。
##################################################################

正直、このあらすじで紹介した夏季キャンプで事件が発生する200ページ近くまでは、結構苦痛でしたw

実のところ、下巻の解説の項に、著者があえてそうした理由が明記されているのですが、それを鑑みても、飽きを克服するのは辛いかも知れません。

しかし、否、それだけに、その事件のインパクトは大きく、一気に物語の世界観が広がり、そうなったら最後、下巻まで即買いしてしまい、一気読みとなってしまいました。

ある意味勿体無かったのですが。


全体の構成としては、なだらかな平地があって山場があり、また平地が続くという繰り返しのような展開で、ややもするとこのままの印象で終わってしまうのか、と不安になることもありますが、最後には、キッチリとしたオチも用意されています。
# このオチに、恐怖や悲しみを感じる方が多いようですが、私はどちらかというと、あり得べき未来かなという気がして、むしろ、切なさを強く感じました。いずれにしても、この物語を閉めるには最高の選択肢ではないかと思います。

先にも書いたとおりの三冊に分冊された構成にもかかわらず、一冊が厚く、合計で1500ページ近くの分量がありますが、これを飽きさせず、かつ、クオリティを低下させずに読ませる技量には、感服します。

全体的にはSFというジャンルが適切ですが、ある意味伝奇的な要素も強く、そして、貴志祐介 の得意とする、ホラー要素や、ミステリー的な要因も、あちこちにちりばめられていると感じました。

そしてやはり特筆すべきは、その世界観です。

新世界よりという壮大なタイトルが、ともすればぼやけてしまうような背景描写がすばらしいのです。

たとえば、あらすじに登場した風船犬などに代表されるのですが、明らかに存在しない生物のある意味醜悪な生態などは、その進化形態からとてもよく考えられていて、感動すら覚えます。

ネーミングセンスも秀逸で、今の生き物にもありますが、ニセなんとか、とか、何とかモドキとか、この世界の生物構成をそこだけで物語っているのです。

まさに、新世界です。


著者の貴志祐介 がこの作品の後に執筆し、昨年のこのミス国内一位をもぎ取った「悪の経典 」はまだ読んでいませんが(これも文庫化を待ってからになるのでしょうなぁ・・・)、少なくとも、私が読んだ現時点での、最高のエンターテインメント作品であることは間違ありません。

これは、今までの「読みたければ読んでね~」という、このブログの基本スタイルを変えてでも

オススメしたい作品


です。

よほど、この作者やジャンルがキライな方以外には、受け入れられるのではないかと思います。

下のアマゾンリンクからでなくてももちろん結構ですwwwので、書店で、図書館で、見かけたら、是非、ご一読されたし、です。


今日はここまで。

新世界より(上) (講談社文庫) [文庫]
貴志 祐介(著)
陥穽-新世界より(上)


新世界より(中) (講談社文庫) [文庫]
貴志 祐介(著)
陥穽-新世界より(中)


新世界より(下) (講談社文庫) [文庫]
貴志 祐介(著)
陥穽-新世界より(下)