むしろ、警戒しますw
しかし、その書店や書店グループ等で押している作品には、興味を惹かれます。
そういった本の場合、最近はスタッフが書いたであろう紹介文がおいてあったりするので、それを参考に帯やあらすじ、中身の触り部分の読み、なんとなく書いてあることと合致するかを直感で決めて購入するケースがわりと多くあります。
しばらく前ですが、ある書店で、やはりスタッフが書いたであろう広告が書かれていました。
そこに書いてあったのは、こうでした。
「夢枕獏大推薦!店長大推薦!驚愕の山岳サスペンス!」
夢枕獏 推薦で20%、店長も推薦で30%、そして、ポップなマジック書きに40%。
パラっと捲って、100%に達して、即買いしました。
笹本稜平 の天空への回廊です。
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エベレストへの冬季・無酸素・単独登頂に成功した真木郷士は、荘厳の景色の中で感慨にふけっていた。しかし、長時間そこにとどまることは死を意味する。このまま眠りに尽きたい衝動を抑え、ベースキャンプへと下降する一歩を踏み出した。
数時間かけ、まもなく8000メートル地点になろうとする頃、大気を引き裂くような金属音が聞こえてきた。
振り向くと、太陽と見紛うほどの明るい光が郷士の目に映った。それは徐々に大きさを増し、爆音と共に目の前を通過していった。そしてそれは、頂上付近に激突した。
ミサイル!?そう直感した郷士であったが、仔細を考える前に、純白の波濤に襲われた。雪崩。咄嗟に岩塊の影に這い蹲り、辛くもやり過ごす事に成功した。
急ぎキャンプに戻ると、そこにはペンタゴンからの派遣者の姿があった。墜落したのはアメリカの人工衛星だったのだ。
加えて、親友のフランス人マルク・ジャナンが行方不明になったことを知る。
郷士は、ペンタゴンより衛星回収行動への参加を要請されるが、親友を地獄に追いやった国家の協力へに嫌悪感を示し、一度は辞退する。しかし、単独行動が不可能となったこの状況下において、唯一マルクを救出できる機会でもあることを察し、参加を決意する。
脅迫に似た巧みな誘導であることを感じての、積極的ではない決意であった。
そして、そこには全世界を震撼させかねない、大国の機密が眠っていた。
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店長など知りませんがw、夢枕獏といえば、実際に登山もし山岳小説も執筆する作家で、その彼が推薦するのであれば、壮大な山岳小説であろうことが想像できました。
もちろん山岳小説としても非凡な表現力を備えていますが、山岳小説と片付けてしまうのはい惜しい作品です。
冬季エベレストに、単独で、無酸素登頂する。
この部分だけでも、充分にひとつのドラマにすることもできる要素です。
それが、冒頭のたった十数行で語られ、以降、墜落、雪崩、ベースキャンプに到着し、墜落した物の正体が暴かれるまでの十数ページを経て、なおも600ページ近い分量が残っているのです。
これ以降、この量で何を語ることがあるのか。そう思いつつも、壮大かつ脅威に満ちたヒマラヤ山麓の大自然を背景に、人間と、それが築き上げた国家、そして種々の技術と陰謀が絶妙に絡み合い、ページをめくる手を止めさせません。
登場人物の誰もが非常に個性的であり、それぞれの理に適った行動をするのですが、それぞれに納得できる面を持たせつつ、主人公側には寄り添いたくなる心境を、悪役には許しがたき感情を植えつけさせているテクニックが、読ませ方を加速させているのかもしれません。
とにかく、これでもかというくらい仕掛けがちりばめられており、伏線もたくさん張られています。
かなり取材も行っているのでしょう。
山岳的な要因はもちろんですが、国家の現状から、人工衛星や、戦争、宗教、心理的要因の随所に至るまで、幅と奥行きの深さが窺えます。
ハッピーエンドの作品ではありますが、簡単には終わらせない、という、印象に残るエンディングも、最後まで見せてくれるなぁといった感想です。
店長、お目が高いね。
そう言っても良い、そんな作品でした。
今日はここまで。
天空への回廊 (光文社文庫) [文庫]
笹本 稜平(著)