『開業エリアの総合的な情報を薬局から仕入れることで優良物件を選定できる』
自前の不動産がない場合、医師はそれぞれのバックグラウンドによって開業地の選定をする。
競争激化のなか、いかに優良な物件に出会うかが成否の分かれ目だ。そのためには、
候補地のマーケット(医療ニーズ)を分析することが最優先されなければならない。
単なるマーケット分析のみならず、住民の気質や街の雰囲気、医療環境などの情報を直接仕入れることで、医師自身が望む医療理念とそのエリアがマッチするかどうかを自らの目と耳、肌で感じとり吟味する必要がある。
その際、地域住民からのヒアリングだけではなく、薬局(薬剤師)から聞きとりすることを強くおすすめしたい。
ただし、この時点で身分を明かすのは極力控え、コンサルタントを通して確認するか同行してもらうのもよいだろう。
周辺の医療情報(競合環境)にアンテナを張り巡らせ、地域の健康ステーション機能を担う薬局は、患者から生の声を直接聞くことが多い。
過不足の診療科目や競合診療所の評判などをヒアリングすることで、開業地の選定のみならず開業戦略構築の参考にもなる。
また、薬局以外に地域情報を確認する相手として医薬品卸がある。
従来から、薬卸の開業担当者の導きで開業する医師も少なくない。
センスのある担当者であれば地域の医療情報を計り知れないほどもち、良い物件情報も抱えているので相談してみるのも良いだろう。
だが、希望のエリアにその薬卸が高いシェアを獲得している競合医院がある場合は、まだ入り込む余地があったとしても情報提供が消極的になることもある。
薬局は薬卸とのパイプが強い半面、開業のノウハウを豊富にもつところは数少ない。
そういうなか、筆者の会社のように調剤薬局を展開しながら開業支援を行う企業もいくつかあるので、積極的に活用しても良いだろう。
特に自社の物件のみをすすめる企業ではなく、他社の物件も正当に評価してすすめることができる企業なり担当者であれば心強い。
開業物件が決まってから、ある時期になれば事前告知も有効だ。自院のパンフレットを近隣薬局に置いてもらうなど挨拶をしておけば、口コミ発生源ともなり患者を紹介してくれるケースもあるだろう。
院外処方の場合、患者が最終的にコンタクトをとるのは薬局であるため、薬局(職員)の対応いかんでは、診療所にも影響を及ぼす。
特に薬剤師は個々のレベルがまちまちなので、質の高い薬剤師の存在は非常にありがたい。
患者は診療所に対する評価も批判も薬局で口にすることが多く、薬剤コンプライアンス情報以外にもさまざまな情報をフィードバックしてもらうよう連携をとることも必要だ。