クリニックの開業と経営をサポートしている社会保険労務士・行政書士の鈴木慎一(シン)です。
突然ですが、こんな電話が来たらどうしますか?
「労働基準監督署ですが、少しお話を伺いたいのですが……」
これ、実は珍しい話じゃありません。
私はクリニックの開業支援・経営支援に長年携わっていますが、この電話をきっかけに慌てて相談に来られる院長先生を、これまで何人も見てきました。
そしてほぼ共通しているのが、
「悪いことをしているつもりは全くなかった」
という点なんです。
税理士に任せているから大丈夫?
よく聞くのがこのパターン。
「給与計算は税理士さんにお願いしているから」 「勤怠は事務長が管理しているから」 「うちは小さいクリニックだから関係ない」
ちょっと待ってください。
税理士は税務の専門家です。 労働基準法の管理は、別の話です。
給与明細の数字が正確でも、そもそもの勤怠集計が間違っていれば意味がない。固定残業代の手当を払っていても、設計が不適切なら「払っていた」こと自体が後の証拠になってしまう。
「計算が合っている」と「制度が合法である」は、まったく別物なんです。
クリニックに多い、知らないうちのリスク4つ
① 昼休みが「休憩」になっていない
よくあるケースです。
午前診療が12時半に終わって、午後は15時半から。 「3時間の休憩があります」と言うクリニックで実態を聞くと……
- 電話が鳴ったら出ている
- 宅配便や業者対応をしている
- 院内で「何かあればすぐ動ける状態」で待機している
これ、法的には休憩じゃない可能性があります。
休憩時間とは、使用者の指揮命令から完全に離れて自由に使える時間のこと。「何かあれば対応してね」という状態が続いていると、手待時間と判断されるリスクがあります。
② タイムカードと実態がズレている
- 始業9時なのに8時40分から掃除・朝礼をしている
- 退勤打刻後も20分片付けをしている
- 帰宅後もLINEで業務連絡のやり取りをしている
「みんな自主的にやってくれているから」という院長先生も多いのですが、業務に必要な行為を黙認している状態は、労働時間と見なされる可能性があります。
昔からの慣習は、法的な正しさを保証してくれません。
③ 有給休暇の管理が「なんとなく」になっている
- 「本人が言ってこないから取らせなくていい」
- 「パートには有給はない」
- 「忙しい時期は仕方ない」
これ、今の法律では通りません。
一定の要件を満たせばパートにも有給は発生しますし、年10日以上付与されるスタッフには、年5日の取得が義務です。「本人が希望したら」ではなく、クリニック側が管理すべき話です。
④ 固定残業代の「つもり」が通用しない
「毎月手当を払っているから残業代は込みのはず」——このパターンが意外と多いです。
固定残業代は、払っているだけでは成立しません。
- 何時間分を想定した金額なのか
- 通常賃金と残業代が明確に分けられているか
- 超過分を追加で払う設計になっているか
これが整っていないと、別途請求される可能性があります。特に退職後——在職中には言えなかったことが、退職してから一気に出てくることがあります。
本当に怖いのは、組織が静かに壊れていくこと
労基署の調査よりも、実は怖いことがあります。
スタッフが少しずつ心を閉じていき、気づいたときには辞めていく。採用してもすぐに辞める。ベテランが疲弊する。院内の空気が重くなる。
患者さんは、クリニックの空気を意外と感じ取っています。
受付の笑顔、看護師の声のトーン、スタッフ同士のちょっとしたやり取り。院長先生の診療技術がどれだけ高くても、ここが崩れると患者さんの満足度は確実に下がります。
そして今の時代は、退職代行・口コミサイト・SNS・Googleレビューと、スタッフの不満が外に出やすい環境です。
「人がすぐ辞めるクリニック」という評判は、採用にも集患にも直撃します。
労務管理は「守り」ではなく「攻め」の経営です
ルールが明確で、院長が約束を守って、スタッフへの説明が丁寧なクリニック。
こういうクリニックは、人が定着しやすい。
人材不足の今の時代に、「安心して働ける」と思ってもらえることは、立派な採用戦略です。
労務管理は、スタッフを縛るためのものではなく、スタッフが安心して働くための土台。そして院長先生が、毎回その場しのぎの判断をしなくて済むための経営インフラです。
もっと知りたい方はこちらも👇️
このような院長先生、一度ご相談ください
- 就業規則はあるが、実態と合っているか自信がない
- 昼休みや残業代の扱いが少し不安
- スタッフが定着しない原因がわからない
- 分院展開の前に、組織を整えておきたい
- 開業前に、労務の基本的な設計をしておきたい
問題が大きくなってから動くより、小さな違和感の段階で整えた方が、時間も費用も精神的な負担も、はるかに少なくて済みます。
私はクリニックの開業支援・経営支援に長く携わってきた立場から、単なる手続き代行ではなく、クリニック経営全体の視点で労務のご相談をお受けしています。
労基署から電話が来てから慌てるのではなく、来ても慌てないクリニックをつくる。
その差が、採用力・定着力・経営の安定性の差になっていきます。
まずはお気軽に、ご相談ください。
社労士と行政書士、ダブルライセンスでクリニック院長をサポートします。
SHIN社会保険労務士・行政書士事務所
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