白斑という皮フ疾患は、まだはっきりと発症の原因がわからない病気であるため、治療法についても確立されているとは言い難い状態が続いてきました。
原因そのものが解明されていないために、根本から治して病気の進行を食い止めるというより、発症部位の症状を抑える対症療法が一般的に行われてきました。
そのなかでも、ステロイドといわれる副腎皮質ホルモンの外用剤塗布と、PUVA(プーバ)療法とよばれる紫外線治療が基本的な治療と考えられてきました。
ただし、これらは治療を始めても色素が再生して元通りの色に戻るまでには時間がかかることが多いという難点があり、短くて数か月、長ければ数年はかかることも少なくありませんでした。
●外用剤塗布(ステロイド、活性型ビタミンD3軟こう)
・ステロイド軟こう
尋常性白斑の治療としては、もっとも手軽で一般的な方法として、ステロイド軟こう(副腎皮質ホルモン軟こう)という外用剤の塗布が行われています。
外用剤の塗布は、内服薬に比べて全身に及ぼす副作用が少ないことも、利点の一つとされています。
ステロイド軟こうは、メラニン色素を作り出すメラノサイトを攻撃するとされる自己免疫の異常な働きを調節する作用があります。
そのため、自己免疫異常ではなく自律神経の乱れが原因と考えられる[ 神経分節型] の白斑では、効き目が小さいことが多いようです。
一般的にステロイド軟こうは、でき始めの白斑には効きやすいのですが、できて時間が経った白斑には効果が出にくい傾向があります。
そのため、白斑が拡がっていく場合などで、進行をくいとめたいときに、用いると効果が出やすいのですが、副作用が起こらないようにコントロールしながら使うのが良いでしょう。
・活性型ビタミンD3軟こう
近年、体内への吸収率が良い、「活性型」という化学的処理をされたビタミンD3軟こうが、白斑の外用剤として用いられることが増えてきています。
比較的手軽な療法にもかかわらず、軟こうだけでも一定の効果が現れるので、活性型ビタミンD3軟こうの治療を続ける患者さんが増えてきているようです。
後に述べる紫外線照射治療(PUVA照射療法やナローバンドUVB照射療法など)との相性も良く、軟こうと紫外線照射治療の併用で相乗効果がみられることも多いようです。
●生薬やハーブによる民間療法
生薬やハーブの免疫能力を活性化する働きに着目して、白斑の治療に使われることがあります。
先述したように、もっとも一般的な白斑である[ 汎発型] や[ 局所型] の尋常性白斑は、自己免疫の異常との関連があるという説があります。
東洋医学や民間療法で使われている生薬やハーブで自己免疫力を回復して、白斑の治療につなげるという効果が期待されているわけです。
数ある生薬やハーブの中でも白斑の治療には田七人参、オリゴ・グルコサミン、アガリクス、高麗人参エキスなどが利用されています。
これらの植物などに含まれている成分にはいずれも免疫活性化作用や神経鎮静剤作用などがあります。
この働きによって白斑の原因である自己免疫異常を正常にすることで、メラニン色素生成の阻害要因を取り除いて、症状を改善すると考えられているのです。
ただし、生薬やハーブによる療法は、短期間では効果が現れにくく、また体質によっては効果が出ないこともあります。
●表皮移植術
本人の正常な部位の皮フ組織である、メラニンをつくる細胞の表面に近い部分だけ取って移植する治療法です。
お尻などの目立たない部位の健康な皮フを、痕が残らないように吸盤で吸い上げて人工的に水疱をつくり表皮を切り取ります。
その皮の部分を白斑の病変部にはりつけます。
このような吸引水疱移植術と呼ばれる術式が白斑の皮フ移植ではよく行われています。
この方法によって健康な皮フに含まれていたメラノサイトやメラニン細胞が白斑の部分の皮フに定着し、数週間から数か月後には正常な皮フの色に戻ります。
この場合、通院での移植術も可能ですが、植皮部の患部を固定しておく必要があるので入院治療のほうが望ましいといえます。
●紫外線照射治療(PUVA療法、UVB照射療法)
日光照射を受けなければ、ほとんどの動植物は健康的な活動ができなくなってしまいます。
この意味では日光は生物にとって非常に有益なものだといえます。
しかし、オゾンホールの拡大により日光に含まれている紫外線が皮フの光老化をもたらし、シミやシワあるいは皮フがんなどの原因になっているのも事実です。
日光はこのように有益と有害の両極端の働きをもたらすのですが、本来日光に含まれている紫外線の有益な働きだけを取り出して、有害な部分を極力カットすることで白斑治療に利用しようというわけです。
日光に含まれる紫外線は、メラノサイトに働きかけメラニン色素の産出を促します。
日光を浴びて日焼けすると肌の色が濃くなりますが、これは過剰に算出されたメラニン色素の沈着が原因です。
この紫外線の働きによるメラニン色素の産出を利用するのが、紫外線照射療法です。
精美スキンケアクリニックでは、紫外線照射治療の副作用が起きないように十分に安全性に留意して行う治療方針を掲げています。
・PUVA療法
PUVA(プーバ)療法は、紫外線のなかでも比較的安全な長波長紫外線(UVA)を照射する光線療法です。紫外線を吸収しやすくするために、照射前に患者さんにオクソラレンという薬を塗布するか服用してもらいUVA波を照射します。
皮フに吸収された紫外線(UVA波)の働きで、皮フに残っているメラノサイトの活性化を促しメラニン色素を産出することで、白く脱色した病変部を通常の皮フの色に近づけていこうという療法です。
治療については、1〜2週間に1回程度の照射が望ましいのですが、白斑の範囲が少ない場合や通院が難しい場合には紫外線ランプを買い求めてもらい、医師の指導のもと自宅で簡略な治療を行うこともできます。
また、最新の研究では、UVAの範囲のなかでさらに限定的なUVA1という光のみ照射することで、皮フの再生を促したり傷ついた皮フが健康な状態に戻る効果があることがわかってきました。
精美スキンケアクリニックでは、このUVA1を照射する治療も行っています。
・UVB療法
UVB療法のうち、近年では安全性が高いナローバンドUVB療法がよく行われるようになってきています。
ナローバンドUVB療法では、紫外線のうち白斑や乾癬の治療に有効な中波長紫外線(UVB波)の範囲内にある波長(311nm =ナノメートル)のみを選択的に照射できる特殊な光線治療機器を使います。
PUVA療法のように、光を吸収しやすくするための薬剤を塗布したり内服したりする必要がないために患者さんの負担が少なく、また、PUVA療法で効果が表れにくい症状にも適応することが多い療法です。
もともとナローバンドUVB療法は乾癬治療を目的にして開発されましたが、白斑治療にも効果が高いことが実証されています。精美スキンケアクリニックでは、国内でも最も早い段階で白斑治療にナローバンドUVB療法を取り入れて臨床例を重ねてきました。
ナローバンドUVB療法は、ステロイド軟こうなどの外用剤と併用して治療を行うこともあります。
ステロイド軟こうなどで白斑の拡大を抑えながら、紫外線照射療法によって病変部の色素を取り戻すという併用治療などがそうです。
紫外線照射治療は、このように白斑治療に有効です。
しかし、ライトによる治療では通常数か月〜数年に及ぶ治療期間が必要となることも珍しくありません。
また、治癒を急ぐあまり、不適切な照射治療を行えば皮フに火傷のようなダメージを与えたり、紫外線による副作用を起こしたりする可能性が高くなります。
また、病変部以外の健康な皮フに紫外線の悪影響が及ぶ可能性もあります。
こうしたリスクを防ぐには、きちんと医療レーザーや光線療法に熟練した専門医の診察を受けること、さらに症状に適した治療法、回数、頻度、出力などについては、医師と十分に相談して安全かつ慎重に治療を行なっていくのが良いでしょう。