あなたの目の前に、2種類のチョコレートが置かれています。

一つは、高級チョコレートのリンツ。

もう一つは、一般的なチョコレートのハーシーズ。

価格は次のとおりです。

A:リンツの高級チョコレート:15セント

B:ハーシーズのチョコレート:1セント

あなたなら、どちらを選びますか?

わずか14セントの差であれば、せっかくなので高級なリンツを選ぶかもしれません。

では、両方のチョコレートを1セントずつ値下げしたらどうでしょうか?

A:リンツの高級チョコレート:14セント

B:ハーシーズのチョコレート:無料

価格差は、まったく同じ14セントです。

ところが、このわずかな変更によって、人々の選択が大きく変わりました。

なぜでしょうか?

その答えは、行動経済学者ダン・アリエリー(Dan Ariely)らが研究した、「ゼロ価格効果(Zero Price Effect)」 にあります。

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行動経済学者ダン・アリエリー(Dan Ariely)らが研究「ゼロ価格効果(Zero Price Effect)」

そして、この研究には、マーケティングにおいて非常に重要なヒントが隠されています。

それは、人は商品の価値だけを見て判断しているわけではないということです。


この記事でわかること

  • なぜ「無料」という言葉に人は強く反応するのか?
    ダン・アリエリーらのチョコレート実験から、無料が人間の意思決定に与える影響を理解できます。

  • 1セントの違いが、なぜ選択率を27%から69%へ変えたのか?
    価格差が同じでも、人々の選択が大きく変化した「ゼロ価格効果」の仕組みを解説します。

  • 「安い」と「無料」は何が違うのか?
    人間が価格を判断するときに働く心理と、無料が持つ特別な魅力を学べます。

  • 無料オファーをマーケティングにどう活用するのか?
    無料eBookや無料講座を例に、見込み客が価値を感じるオファーの設計方法を紹介します。

  • なぜ無料にするだけでは登録者が増えないのか?
    見込み客がオファーを見る前の認識を整える「プリフレーム」の重要性を理解できます。

  • 無料の力とプリフレームを組み合わせる方法とは?
    行動経済学の研究をファネル設計に応用し、登録率や成約率の改善につなげるための考え方を学べます。


1. ダン・アリエリーとは何者なのか?

ダン・アリエリー(Dan Ariely)は、人間の意思決定や消費行動を研究してきた行動経済学者です。

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行動経済学者ダン・アリエリー(Dan Ariely)

代表的な著書に『予想どおりに不合理(Predictably Irrational)』があります。

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行動経済学者ダン・アリエリー(Dan Ariely)『予想どおりに不合理(Predictably Irrational)』

私たちは、自分の意思で合理的に判断していると考えています。

商品を購入するときも、価格と品質を比較して、自分にとって最も価値のあるものを選んでいると思っているでしょう。

しかし、実際の人間の判断は、それほど単純ではありません。

同じ商品でも、提示される価格や比較対象、あるいは周囲の状況によって、魅力の感じ方が変わります。

アリエリーは、こうした人間の予測可能な非合理性を、さまざまな実験によって明らかにしてきました。

その中でも、マーケティングを学ぶ人にぜひ知ってほしいのが、今回紹介するチョコレートの研究です。


2. 2007年に発表された「無料」の研究

2007年、クリスティーナ・シャンパニエ、ニーナ・マザー、ダン・アリエリーの3人は、学術誌『Marketing Science』に次の論文を発表しました。

Zero as a Special Price: The True Value of Free Products

日本語では「特別な価格としてのゼロ:無料商品の真の価値」と訳せる研究です。

研究者たちは、次の疑問を検証しました。

「無料とは、単に価格がゼロになることなのか。それとも、人間の心理に特別な影響を与えるのか?」

この疑問を調べるために使われたのが、2種類のチョコレートでした。

実験で使われた2種類のチョコレート

① リンツのトリュフチョコレート

高品質で、比較的高価なチョコレートです。

② ハーシーズのキスチョコレート

身近で、比較的安価なチョコレートです。

研究者たちは、この2種類のチョコレートを提示し、人々がどちらを選ぶのかを調べました。

ポイントは、チョコレートそのものは変えずに、価格の条件だけを変えたことです。


3. たった1セントの違いが、人間の選択を変えた

実験では、次のような価格条件が比較されました。

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条件A:両方とも有料

商品価格
リンツのトリュフ:15セント
ハーシーズのキス:1セント
価格差14セント

この条件では、ハーシーズよりもリンツを選ぶ人が多く見られました。

多少高くても、より魅力的なチョコレートを選ぼうとしたのです。

ところが、研究者たちは次のように価格を変更しました。

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条件B:片方を無料にする

商品価格
リンツのトリュフ14セント
ハーシーズのキス無料(0セント)
価格差14セント

両方の商品を1セントずつ値下げしただけです。

価格差は変わっていません。

合理的に価格差と商品の価値だけを比較するのであれば、選択が大きく変わる理由はなさそうです。

しかし、実際には違いました。

実験結果

購入者のうち、それぞれのチョコレートを選んだ人の割合は、次のように変化しました。

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※この割合は、何も購入しなかった人を除いて集計した、論文中の実験結果です。

ハーシーズを選んだ人の割合は、27%から69%へと上昇しました。

42ポイントの増加です。

一方、リンツを選んだ人の割合は73%から31%へと低下しました。

ここで重要なのは、リンツも1セント安くなっているという事実です。

それでも、人々は高級チョコレートよりも無料のチョコレートを選ぶようになったのです。

この結果は、単純な値下げ効果だけでは説明しにくいものです。


4. なぜ「無料」には特別な力があるのか?

私たちは普段、商品を購入するときに、無意識のうちにメリットとデメリットを比較しています。

例えば、1,000円の商品を購入する場合。

「1,000円を支払う価値があるだろうか?」
「購入して後悔しないだろうか?」
「もっと良い商品があるのではないか?」

こうした判断が働きます。

ところが、商品が無料になると状況が変わります。

「無料なら試してみよう」
「気に入らなくても、お金は失わない」
「とりあえず受け取っておこう」

このように、無料という条件は、商品に対する感情的な反応を変える可能性があります。

研究者たちは、無料がもたらす心理的な反応について複数の説明を検討しました。

その結果、無料に対するポジティブな感情(Affect)が、ゼロ価格効果を説明する有力な要因であることが示されました。

つまり、無料には単なる値下げ以上の意味があるのです。

「安い」と「無料」は、心理的に同じではない

ここで考えてみてください。

100円の商品が50円になる。

これは50円の値下げです。

一方、1円の商品が無料になる。

こちらは、わずか1円の値下げです。

金額だけで考えれば、前者のほうが大きな割引です。

しかし、

後者には「お金を支払わずに手に入る」という特別な魅力があります。

もちろん、すべての商品で無料が最も効果的とは限りません。

それでも、無料が人間の意思決定に独特の影響を与えることは、この研究の重要な発見でした。


5. この研究からマーケターが学ぶべきこと

ここからは、チョコレートの研究を実際のマーケティングに応用して考えてみましょう。

例えば、あなたがオンライン講座を販売しているとします。

その講座の価値を知ってもらうために、見込み客へ最初のコンテンツを提供したいと考えています。

次の2つのオファーを比較してください。

オファーA

「マーケティング基礎講座:100円」

オファーB

「マーケティング基礎講座:無料」

100円は、それほど高い金額ではありません。

それでも、100円という価格がついた瞬間、見込み客は購入する価値があるかどうかを判断し始めます。

一方、無料であれば、金銭的な負担を感じずに試しやすくなります。

ここに、無料オファーを活用する意味があります。

ただし、無料にすれば必ず登録率が上がるわけではありません。

メールアドレスの提供、学習時間、個人情報への不安など、無料であっても見込み客には負担が存在します。

だからこそ、重要なのは無料という価格だけではありません。

無料で提供されるものに、どのような価値があると感じてもらえるか。

この設計が、次の課題になります。


6. 無料にするだけでは、十分ではない

ここで、一つの疑問が生まれます。

なぜ、同じように無料のeBookを提供していても、大勢の登録者を獲得する人と、ほとんど登録してもらえない人がいるのでしょうか?

どちらも無料です。

どちらもメールアドレスを登録すれば受け取れます。

それなのに、結果が違う。

その理由を考えるうえで重要なのが、見込み客がオファーを見る前に、どのような認識を持っているかという問題です。

例えば、次の2つを比較してください。

パターンA

「無料マーケティングeBookをプレゼント!」

パターンB

「広告費を増やしても売上が伸びない。その原因は、広告ではなく、見込み客が販売ページを見る前の心理状態にあるかもしれません。その仕組みを解説したeBookを無料公開。」

どちらも無料のeBookです。

しかし、読者が受け取る印象は違うのではないでしょうか。

パターンAは、無料であることを伝えています。

一方、パターンBは、読者が抱えている問題と、その解決につながる情報を先に提示しています。

その結果、読者は単に無料だからという理由だけでなく、自分に必要な情報だから受け取りたいと考える可能性があります。

これは、チョコレートの実験そのものが証明した結果ではありません。

しかし、価格や情報の提示方法が意思決定に影響するという行動経済学の考え方を、マーケティングに応用した例です。

そして、ここから重要なテーマにつながります。


7. プリフレームとは何か?

プリフレーム(Pre-Frame)とは、見込み客が商品やオファーに接触する前に、その情報をどのような文脈で受け取るかを整えることです。

例えば、まったく知らない人から突然、

「この講座は素晴らしいので購入してください」

と言われたら、あなたはどう感じるでしょうか?

おそらく、警戒するでしょう。

しかし、その講座について、信頼している専門家から事前に説明を受けていたとしたらどうでしょうか。

あるいは、講座が解決する問題について、先に学んでいたとしたらどうでしょうか。

同じ講座でも、受け止め方が変わる可能性があります。

つまり、重要なのは商品そのものだけではありません。

その商品に出会う前に、見込み客が何を知り、何を信じ、何を期待しているのか。

この視点が、プリフレームの考え方です。

ラッセル・ブランソンが重視するプリフレーム

ClickFunnelsの共同創業者であるラッセル・ブランソン(Russell Brunson)は、ファネル設計において、見込み客がどこから来たのか、どのような状態でオファーに接触するのかを重視しています。

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ClickFunnelsの共同創業者 ラッセル・ブランソン(Russell Brunson)

例えば、彼が『DotCom Secrets』で解説するトラフィックの温度には、次の3つがあります。

Cold Traffic(コールドトラフィック)

あなたのことも、商品も、ほとんど知らない人。

Warm Traffic(ウォームトラフィック)

あなたのことや商品カテゴリーについて、ある程度知っている人。

Hot Traffic(ホットトラフィック)

あなたや商品について十分に理解し、購入を検討している人。

この3つのグループに、まったく同じメッセージを届けることが最適とは限りません。

見込み客の認識に合わせて、伝える情報や順序を変える必要があります。

そして、その考え方は、無料オファーにも応用できます。

無料であることを伝えるだけでなく、なぜその情報が必要なのかを理解してもらう。

そのうえで、無料のeBookや講座を紹介する。

こうした設計によって、見込み客が価値を判断しやすい状態をつくることができます。


8. 「無料の力」と「プリフレーム」を組み合わせる

ここまでの内容を整理してみましょう。

ダン・アリエリーらの研究は、無料という価格が、人間の選択に特別な影響を与えることを示しました。

一方、プリフレームの考え方は、見込み客がオファーを見る前の認識や期待に注目します。

この2つを組み合わせると、無料オファーの設計について、より深く考えることができます。

例えば、無料eBookを提供する場合です。

STEP 1:見込み客の問題を明確にする

見込み客は、どのような問題を抱えているのでしょうか?

広告費が高いことなのか。

商品が売れないことなのか。

登録者が増えないことなのか。

STEP 2:問題の見方を変える情報を提供する

見込み客が考えている原因と、実際に検討すべき原因が異なる場合もあります。

そこで、研究結果や具体例を使い、新しい視点を提示します。

STEP 3:無料オファーを提示する

見込み客が問題を理解し、解決方法を知りたいと感じた段階で、無料のeBookや講座を案内します。

この順序には意味があります。

最初から無料であることだけを強調するのではなく、無料で受け取れる情報の必要性を先に理解してもらうのです。

ただし、これは効果が保証された公式ではありません。

実際には、オファーの内容、見込み客の属性、登録ページの構成などによって結果が変わります。

だからこそ、仮説を立て、実際の登録率や購入率を測定しながら改善することが重要です。


9. 人はオファーを見る前から、判断を始めている

今回のチョコレート実験で、私が特に重要だと感じるのは、次の点です。

チョコレートの味も、品質も、商品そのものも変わっていない。

変わったのは、価格の提示条件だけです。

それにもかかわらず、人々の選択は大きく変化しました。

この研究から学べるのは、商品そのものの価値だけでは、購買行動を十分に説明できないということです。

人間の意思決定には、価格、比較対象、感情など、さまざまな要素が関係しています。

そして、マーケティングでは、オファーを見る前の情報や経験も重要な検討対象になります。

見込み客は、販売ページを開いてから初めて判断を始めるわけではありません。

広告を見た瞬間。
SNSの投稿を読んだ瞬間。
メールの件名を見た瞬間。
誰かから商品を紹介された瞬間。

そうした接点を通じて、商品に対する認識や期待が少しずつ形成されていきます。

だからこそ、ファネルを改善するときには、販売ページのコピーやボタンの色だけでなく、見込み客がそのページへ到達するまでに何を経験しているのかを考える必要があります。

その考え方を体系的に学ぶために、今回、無料のeBookを用意しました。


【無料公開】9人の研究者・マーケターから学ぶ「プリフレームの科学」

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プリフレームの科学

ここまで読んでいただいたあなたに、一つ質問があります。

あなたは、見込み客がオファーを見る前の心理状態を、どこまで意識してファネルを設計していますか?

広告のクリック率。

ランディングページの登録率。

ウェビナーの参加率。

販売ページの成約率。

これらの数字を改善するために、コピーやデザインを変更することは重要です。

しかし、それだけでは見落としてしまう要素があります。

それが、オファーに接触する前の見込み客の認識です。

今回紹介したダン・アリエリーの「ゼロ価格効果」は、その重要性を考えるための一つの入り口です。

実は、人間の意思決定に影響する心理的な現象は、これだけではありません。

ダニエル・カーネマンとエイモス・トベルスキーによるフレーミング効果。

ダン・アリエリーらが研究したアンカリング。

ババ・シヴらが研究した期待と価格の関係。

ロバート・チャルディーニが解説するPre-Suasion。

そして、ラッセル・ブランソンがファネル設計で重視するプリフレーム。

これらの研究とマーケティングの考え方を、一冊のeBookにまとめました。

無料eBook『プリフレームの科学(Preframe Science)』

9人の研究者・マーケターから学ぶ、人がオファーを見る前に価値を判断する仕組み。

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プリフレームの科学 Jun Suzuki(鈴木淳) 著

このeBookでは、心理学・行動経済学の研究をもとに、見込み客の認識や期待が意思決定にどのように関係するのかを解説しています。

さらに、ラッセル・ブランソンのファネル理論と結びつけ、実際のマーケティングに応用するための視点を紹介します。

そして、このeBookの価格は……

0円です。

そうです。

今回紹介した、ダン・アリエリーの「ゼロ価格効果」を、あなた自身にも体験していただきたいと思います。

ただし、無料だからという理由だけで受け取る必要はありません。

あなたのビジネスやファネルの改善に役立ちそうだと感じたら、ぜひ読んでみてください。

▼『プリフレームの科学』無料eBookを受け取る

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無料eBook『プリフレームの科学』はこちら

商品を変える前に、価格を下げる前に、広告費を増やす前に。

見込み客が、あなたのオファーをどのような認識で受け取っているのか。

そこから、ファネルの改善を始めてみませんか?https://www.clickfunnelsjapan.com/pre-frame-science