くうちゃんは身体に障害がある。
男性だ。
ポリオ(急性灰白髄炎)とよばれる障害がある。
思考に関する脳の機能は至って正常だが、
身体の動きが健常者と違う。
それだけだ。
くうちゃんは、おれの大切な友達だ。
きれいごとで片付ける訳ではなく、
実は
ボランティア活動に参加した当初は
おれもその容姿や動きが怖くて近づけなかった。
頭にインプットされた
当たり前とされた人間の行動の許容範囲を超えると
なかなか受け入れられないものなのだ。
それが、
何度も一緒に行動しているうちに
見た目なんて、
何とも思わなくなった。
障害なんて、微塵も感じなくなっていた。
普通に
おれの好きな友達になっていた。
くうちゃんは、心の優しいイケメンだ。
おれはくうちゃんと酒を飲んで、
バカ話をするのが好きだった。
顔をシワだらけにして笑う笑顔が好きだった。
曲がった手でコップを持ち、
斜めから口に器用にビールを流し込む。
勝手に身体が動いちゃうから
口に運ぶ間はすごく集中している。
大声で、心から笑って会話をした。
笑い声が店内に響くと
女将さんもこっちをみて笑っていた。
笑顔の連鎖って、感じかな。
くうちゃんの恋愛話も聞いた。
なかなか健常者との恋愛は成就しない。
実は
そんなくうちゃんと、10年以上会っていない。
おれが新潟に移住してからだ。
数年は年賀状のやり取りはあったのだが
最近、年賀状も返ってこなくなった。
最後に取り交わしたのは、
彼の母親の喪中ハガキだった。
くうちゃんを一番心配していた母親が他界したのだ。
おれは心配した。
彼が今どうしているか、誰に聞いてもわからなかったし、
携帯電話もつながらなかった。
それが、だ
今年になってようやく
くうちゃんの近況を共通の友達を通して聞くことができた。
現在は
障害者施設に身を置いていることがわかった。
そして
今までの経緯がわかった。
不運が続いたのだ。
数年前、
心の支えであった父親が交通事故で
帰らぬ人となってしまったのだ。
横断歩道を歩いて渡っている最中に前方不注意の車にひかれた
100%運転手に非のある事故だ。
愛している両親を立て続けに失った。
希望をなくした彼は
父親の保険金で施設に入り
自分自身に蓋をしてしまったのだ。
おそらく、
障害のある自分に対しての憤りが、
よりマイナス思考に拍車をかけ
立ち止まってしまったのだ。
誰にも自分の存在や居場所を
わかって欲しく無いと
そう、言っていると聞いた。
持ち前の明るさで乗り切って歩いてきたのに
もう、
どうにもならなくなってしまったのだ。
そんな
くうちゃんのことを思うと
ちっぽけな不平不満で悩んでいる自分が
とっても情けなくなった。
おれのは、悩みのうちに入らない。
そりゃあ、金も欲しいし、安定した将来が希望だ。
しかし
そんなのは、ただの贅沢だ。
おれにはまだまだ、可能性がある。
生活のレベルが上がると、またそれ以上の贅沢が欲しくなる。
それが自然の摂理のひとつなのかもしれない
けど
もう、
あかりを探すことすら諦めてしまったくうちゃんを思うと
自分がどれだけ幸せなのかがわかる。
希望を、くうちゃんに与えてあげるには
何をすればいいのだろう
わからないけど
おれにできることはやろうと思う。
それが未だ見つからない。
人伝いでいいから
『こっちに遊びにおいで』
と言おう。
まずはそこからだ。
おれの大好きなアーティスト:藤田麻衣子ちゃんのうた
「wish ~キボウ~」
の中の一節で、大好きなパートがある。
『あかりを灯そう』
『わずかでも あかりを灯そう』
麻衣子ちゃんから教えてもらった〜キボウ〜
立ち止まって、また、歩き出すのには
大きなエネルギーが必要だと思っていた。
違うんだ!
おれは間違えていた。
まずは、
わずかでいいから あかりを灯すことが大切なのだ!
いきなり、歩き出すことを考えてはダメなんだ。
くうちゃんが再び
自分であかりを灯すことができるようになるまで
おれはサポートしたいと思う。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
※ライヴ告知
4月、5月 出演ライヴのスケジュール
4月14日(日)
ワタナベマモル Live
場所 ライヴハウス メモリー
時間 Open 17:00 Start 17:30
出演
ワタナベマモル
O.A 山坊主/morikun /中村賢一
5月19日(日)
場所 オーレンプラザ
詳細未定
5月25日(土)
CRAZY LITTLE THING CALLED LIVE 4
場所 上越EARTH
時間 Open 14:00 Start 14:30

