まだ、長野に住んでいた頃の話である。
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目の前で泳ぐエビを目で追いかけていた。
水の流れは
人のココロを和ませる。
水槽に酸素を送る音がなんとも心地よい。
クリスマスも終わり、
新しい年を迎える準備に、なんとなくソワソワと
せわしなく人が動く時期
おれたちはのんびりと
今朝届いた鮮魚に舌鼓を打っていたのである。
おれとKちゃんはカウンターに2人ですわっていた。
いつもの鮨屋のカウンターである。
ひょっとこ顔の大将が、
『おう なかちゃん、これ食べるかい?』
(大将はおれのことを、なかちゃんと呼んでいた)
と
水槽を指差した。
『ぜひ!』と 言う間もなく
大将は水槽からエビをすくい上げ
あっという間に丸裸にしてシャリの上にのせ
おれの目の前に置いた。
さっきまで泳いでいたエビは、
自分が人間の食材になったことも知らず
シャリの上で泳ぎの続きをしている。
さっそく口の中にほうり込む。
口の中でもまだ泳いでいる・・
『あまい!』
あまい のである。
舌の上にのったそいつは
なんとも
あまい のである。
日本海近郊で食す鮨よりも
ここで楽しむ鮨の方が、はるかに旨い!
魚が旨い と書いて 鮨(すし)と読む
旨いから 鮨なのである。
契約している漁村から
朝、
決まった曜日に魚が届けられる。
と
大将は言っていた。
鮮度は抜群なのだ!
日本海側の料亭だって、場所によっては
凍ったさしみは平気でテーブルに並ぶ
悲しくなる。
せっかく海辺に来たのに
凍った魚の切り身では
さすがに悲しい。
『そこで食す意味』 が分らなくなってしまう。
なのに だ
繰り返しになるが
ここで食べる鮨は、抜群に旨い!
おれは
青魚は あまり生では食べない。
(生臭いという先入観で)
だが、
ここでは好んで食べる。
ここで食べる魚は、全部あまい!
あまくて旨いのだ!
いや
むしろ
青魚の方が あまいのだ!!
鮮度・味にこだわった
絶品である。
人は うまいものを食べているとき
幸せを感じる
笑顔になる・・
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そんなことを思い出した・・・
2018年1月1日(月) 現在
元旦の街
夕暮れ時の散歩
今、
目の前に
『貸店舗』
の看板が貼られた壁がある。

おれの大好だった鮨屋の前に立っている。
ぽかん と 心の中が空洞になった。
ぐっと 胸が熱くなった。
『永遠』 は無い
またひとつ
おれの大好きな
大切な場所が無くなった・・・
年を重ねるごとに
新しい出会いが少なくなり
消えていく歴史が増える。
どのくらいそこに佇んでいたかな?
見上げた空には、
もう、一番星が姿を現していた。
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それにしても
お世話になっているライブハウスが
防音工事で休業してから、もうだいぶ経つな・・
さてと
少ない新しい出会いを求めて
自分から行動しなくっちゃね!
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
本年もよろしくお願い致します!!
ではまた!
