椰子の木のオブジェをバックにスポットライトを浴びるサム・クックが、テーブル席でディナーを楽しむ金髪の女性に甘い視線を送っている。
ここはそう、紛れもなくサム・クックが64年に行ったニューヨークはコパカバーナのステージだ。
過去記事の『サム・クックのライブ盤のジャケ写は本物か?』で、コパのステージに立つサム・クックの姿を初めて見て興奮したものだったが、今回は雑誌記事の画像ではないスナップ写真が何点か流出していたので紹介したい。
是非、コパの音源を聴きながら、ここはどの曲を歌っていた時のシーンだな、なんてことを想像して頂ければ。。。
いやぁ、素晴らしい。
写真からでもサム・クックがコパにリベンジしようとする気迫や熱気が伝わってくる。
過去記事でマイクについて検証していたが、これらの写真を見る限りでは終始ガイコツマイクを使用していたことが確認できた。
サムの隣でギターを弾いてサポートしているのは盟友のクリフ・ホワイトだ。サムと関わりを持ったどんなマネージャー陣らよりも付き合いは長く、サムの音楽性に関しては誰よりも理解している。サムの隣にいるだけで、親分を守る用心棒のようで心強い風格がある。上流階級の客層を相手にするコパのステージなら尚更だ。
最前列を囲む客人達は、ヘアースタイルをきっちりと整えたコパの常連と思わしき白人が陣取っている。
このコパの中にも黒人客は2,3割は入っていたと聞くが、多分、後方の席に案内されていたのだろう。サム・クックの仲間である黒人客も、そこは譲って「どうだい、俺たち同胞のスターは」と、白人層がサム・クックの歌声に心酔している様を後ろから眺めていたのではないだろうか。
後半、ジャケットを脱ぎ、白いワイシャツ姿で歌ってるあたりは、お決まりのツイスティンだろう。
最後のホッとしたような笑顔は、無事コパのステージを成功させた安堵感から出た表情だったと思う。
パーフェクトに見えるサム・クックのような人物でも最初のコパは失敗している。
「必ずリベンジするんだ」
怖さはあったが、その気持ちが成功へと繋がり、最後は笑うことができた。
ハーレムの黒人の聴衆には「救い」のメッセージで生きる喜びを、コパの白人層には「協調」のメッセージで生きる喜びを歌ってきた。
サムは上流階級の人々に黒人達が虐げられ訴えてきたメッセージを、ダブル・ミーニングとして少しのユーモアに置き換え声を上げて歌った。
自身のヒットソングのオンパレードで同胞の黒人達の前では余裕綽々だったハーレムでのサムはそこにいない。緻密に練り上げて選曲されたコパのリストに隠されたメッセージを、高らかに歌い伝えたサムの想いをもう一度考える時ではないかと感じた。
恐れず共存していく道を選ぶ時が近づいているのではないかと。
最後はサムのように汗を流し、安堵の笑顔が出る日が早く訪れることを願うばかりだ。
【コパ関連の過去記事】
『Sam Cooke's Hometown Visits vol.7』