萌動 | 雪と華

雪と華

雑感もろもろ

「アトスのこと、どう思ってるんだ?」
「え?」

唐突な質問に、横の巨躯の友人を見上げる。
困ったように頭を掻いて、続く言葉を探しているようだ。

「何て言うか・・・俺の知ってる”女が惚れた男にする態度”
とは違うんだけどな」
「・・・」
「まどろっこしい聞き方で悪い」
「ポルトスらしくないよ」
「そうだよな、じゃ単刀直入に」
「うん」
「アラミスは、アトスに惚れてるのか?」

歩みを止めてポン・ヌフで風に当たると程よく酔いが身体を
まわっていることがわかる。

「僕は、アトスのこと好きだよ」
「そうか」
「けど、"女が男に惚れている"とは違うかも」
「かも?」
「よく、わからないんだよね」

ぽつぽつ、と自分の気持ちを言葉にしてみる。

「彼の全てを独占したいとは思わないし、もしアトスに
恋人が居てもいいんじゃないかと思う」
「そうなのか?」
「うん、ただね・・・笑わないで聞いて欲しいんだけど」
「なんだ?」
「銃士として、仲間として一番信頼されていたい」
「アトスに?」
「そう。例えばアトスが戦場で危機に陥った時に最初に
頼るのは僕であって欲しい」
「ほう?」
「ポルトスやダルタニアンじゃなく、ね」
「・・・」
「そんなことで君やダルタニアンに嫉妬をする
僕はおかしいと思う?」
「そうだなぁ・・・」

うむむ、としばらく考え込んでいたポルトスだが
突拍子もない問いかけが入る。

「じゃあ、ダルタニアンがアトスの恋人ってのはアリか?」
「え?それは嫌だ!」

即座に拒否の言葉が出た。

「やっぱりアトスに恋をしているんじゃないのか?」
「何で?」
「銃士の仲間のなかで、アトスの一番で居たいんだろう?」
「・・・うん」
「相手に何かを求める気持ちは恋のはじまりだ」

僕がアトスに求めているもの?

「ダルタニアンは天性の才ってやつで、アトスに
あっというまに銃士として認められてた。それを
お前はあんまり面白く思ってなかったよなぁ」
「それはっ、ずいぶん前の話で・・・」
「わかってるよ」
「今はダルタニアンのこと、認めてるし大切な仲間だと
思ってるよ!」
「わかってる、わかってるって」

くっくっとポルトスが笑いながら、頭をくしゃっとすると
目線を僕に合わせてつぶやいた。

「けど、アトスにとっての一番は今でもお前だと
思ってるんだろ?」
「・・・そう、あって欲しい」
「人の気持ちに順序を付けたがるのも
恋をしている証拠だ」

この気持ちが恋、なのか?
僕の知っている"恋"はもっとフワフワと砂糖菓子の
様で、その人を想像すると自然と笑顔になって・・・

アトスとの日々はもっと背筋がぴんと伸びるような緊張感が
あって、時に命懸けの戦いもあり、それを越えた時の
達成感や充足感を共有できる瞬間が何より好きで・・・

「ま、難しく考えすぎるな」
「・・・ここまで考えさせておいて」
「あー、悪い悪い。つい、気になっててな」
「いいけどさ・・・」
「そうだ!ついでに!俺のことはどう思ってるんだ?」
「はぁ?ポルトスはポルトスだよ!」
「何だー、そのどうでもいい、みたいな言い方は?」

ポルトスが大笑いしながら、肩を組んでくる。
つられて笑いながらセーヌ川沿いを歩いた。






*****


アラミスとポルトスの取りとめのない話。
アラミスってファザコン?ブラコン?っぽいかも。
そして結論はきっと出ない
本体HPに移ほどの話でもなく・・・