リーダーシップ | 雪と華

雪と華

雑感もろもろ

「アラミス、明日のルーブルの警護の件なんだが」
「・・・なに?」
「私は直々にお相手をしないといけない公爵が居てな」
「・・・断る」
「おい!まだ何も言ってないだろう」
「・・・」
「で、警護のリーダー役をだな・・・」
「だから、嫌だ」
「・・・」

何とも気まずい空気を和ませるように、ポルトスが
二人の会話に割って入る。

「アトス~、アラミスにそういう役回りは無理だろう」

ポルトスがフォローに入ってくれたことで、アラミスは
もうこの話は終わったとばかりに視線を外に流したが、
アトスは引き下がらなかった。

「そんなことはない。アラミスもいつまでもフラフラし
いるわけにもいかんだろう。一度やってみ・・・」
「フラフラって、僕は自分の役割はきちんと果たして
いると思うけど?」
「銃士が自分の役割を果たすのは当たり前だ」

カチンときたのか、外した視線を戻しむっとした表情で
言い返すが、更に高圧的なアトスの言い様に、綺麗な
眉間にしわがよった。

「・・・それとも君は"並の銃士"でしかないのか?」
「・・・どういう意味?」
「代わりはいくらでもいる、ってことだ」
「・・・アトスはそう思わないから、僕にリーダーをやれって
言ってるんじゃないの?」
「そう、ご名答だ」

アトスはにっこりと笑うと、トレビル隊長から預かっていた
警備計画の指示書をひらり、とアラミスの前に置いた。

*****

「なんなんだよ、まったく!」

アトスが出ていった後、ポルトスに悪態をつく。

「まぁまぁ、リーダー役ってのも悪くないぞ。そこまで
嫌がることもあるまい」

むくれた顔で熱心に指示書に目を通す姿のアラミスの
姿が可笑しくて、ポルトスが笑う。

「・・・いざという時は独断で動くから」
「ん?何だって」
「・・・独り言」
「はいはい」
「アトスが個人で警護する公爵ってどこの誰?」
「さあ?」
「何で知らないんだよ」
「何で俺が知ってるんだよ。アトスに聞け」
「・・・後で聞いておく」

どこかの公爵がアトスを指名したことがそもそもの
きっかけかと思うと、アラミスのイラつきが度を増した。

*****

「各自これよりすぐ警護について。何かあればすぐに
僕まで報告すること。以上」

ルーブル宮に銃士達を配備し、アラミスはアトスとポルトスと共に
陛下と隊長の下にむかう。

「様になってるじゃなか、アラミス!」
「うるさいなポルトス。これくらいはできるよ」
「いやいや、適材適所。いい配置だ。なぁアトス!」
「ああ。見てないようで、アラミスは全体をよく見ている」
「・・・それはどうも」

アトスの言葉に心躍るのを隠すように、ぶっきらぼうな
返事をアラミスが返した。

「アトスがお相手するのは、あの老公爵?」
「そうだ」
「あ~、あの偏屈な公爵の相手ができるのは銃士隊でアトス位
だもんなぁ。俺は哲学の話とか無理。アラミスはどうだ?」
「遠慮しとくよ」
「その分、今日の警護を頼んだぞ」

国王陛下に挨拶をした後、一人老公爵のもとにアトスは向かった。
ポルトスも自分の配置につき、アラミスは各所に目を配る。
その日の警護は何事もなく終わった。

********

「アトス、遅いな。肉、全部食っちまうぞ」
「そうだね・・・」

仕事を終え、なじみの店で夕飯を仲間達と取っていたが
アトスの姿はまだなかった。

「ずいぶん気に入られているみたいだからね」
「何のことだ」
「あの公爵に、アトスが」

なぜかイライラするアラミスに、のんびりとポルトスが相槌を
打ち、そういえばと噂話だが、と前置きして続けた。

「アトスが銃士隊を辞めて、公爵のお抱え剣士になるって
話もあるみたいだしな」
「え・・・何それ?」
「ん?知らなかったか?」
「そう・・・」
「いやいや、アトス本人は何も言ってないからな」



(...続く)