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科学のために科学を科学的に笑うべし

論理はわが友 されど笑いはさらなる友

ここの私が認識できる宇宙の範囲を示す光円錐 は、
一般相対性理論の元では必ずしも姿勢の良い綺麗な円錐の形をしているとは限りません。
重力があったり空間が膨張収縮したりすると、時空のゆがみにつられて、
光円錐が傾いたりゆがんだりするのです。

透明雲のブログ-重力による光円錐の傾き


透明雲のブログ-宇宙の膨張に伴う光円錐のゆがみ

さてここで、宇宙の誕生から今までの来歴を考えて、
ここの私を基点とする光円錐に全て映しこんで描こうとしてみましょう。
光円錐は私が認知できる宇宙の範囲ですから、
これと私が知りうる宇宙の来歴を対応させようとするのはごく自然なことでしょう

ところが、こうした宇宙の大域的な表現を光円錐に映そうとすると、困ることがあります。
宇宙は特異な一点から始まった(ビックバン宇宙論)と考えるのが、現代では一般的です。
少なくとも、宇宙の空間は膨張していて過去に遡るにつれ小さかったことが、
ハッブルの観測で確かめられています。
ということは、下に末広がりに開いた光円錐の過去部分は、
現実にはどこか(いつか)で口を閉じる形をしている必然性があります。
私が認識できる範囲が宇宙全体より広いわけはないのですから。

透明雲のブログ-大域的な過去光円錐は口を閉じる


このことを解説してホーキング博士は、著書『ホーキング・未来を語る』の中で、

 「過去洋梨をしている」
 Our past is pear-shaped.

透明雲のブログ-過去は洋梨の形をしている
と書きました。



この洋梨の正確な形状は、今までの宇宙の膨張の度合いがどの程度だったかによって
変わります。

  ただし、この本は2001年の出版なので、
  今から見ると洋梨の図の詳細な部分では色々と不正確な記述もありました。
  例えば光円錐の歪みの主たる原因を空間の膨張でなく高密度の物質の重力の方にしてるとか、
  洋梨の最も膨らんだ部分がマイクロ波背景輻射より過去になってるとか。





宇宙の誕生から今までの宇宙の来歴を光円錐に載せて示し、
さらに私にいま見えている範囲が膨張してきた過程を重ねたのが、
「一家に1枚 宇宙図 2007」
です。
Web版 http://www.nao.ac.jp/study/uchuzu/
PDF版 http://www.mext.go.jp/a_menu/kagaku/week/uchuu.htm

これは、国立天文台と天文学普及プロジェクトを中心とした専門家グループが、
製作2007年当時の最新の観測データを精緻に反映して作りました。
宇宙図では、かつてホーキング博士が「洋梨」と呼んだ光円錐部分は、
観測から推量される形により近い感覚の 「しずく」 と呼んでいます。

細かいところもかなり精密に作られています。
しずくが最も太くなっているのはいつごろかとか、よく味わってみましょう。
宇宙の膨張速度を示す外側の線の変化も注目です。
宇宙が今後収縮するか、膨張が加速して遠い将来は素粒子までバラバラになるか等、
重大な事柄に関係してます。


この分野は日進月歩で、この宇宙図も細かい訂正が必要となっています。
例えば、欧州宇宙機関による最新の研究では、
宇宙の誕生は宇宙図2007より1億年ぐらい古く、138億年ぐらいとされています。
今後もどんどん改定が必要なことがらが出てくるでしょう。
実際、新宇宙図(宇宙図2013)というのが企画されているようです。