かつて、思考をコンピュータに実装しようとしたStrong AIは夢のままに終わりました。
しかし現在、コンピュータの能力とネットワークの容量の順調な増大のおかげで、
できることの範囲は驚くべきほど広がりをみせています。
チェスや将棋やクイズで人間を打ち破ったことも昔になりつつあり、
容疑者の行動を追跡予想し、株価を予想するのみならず操作し、新薬新毒を開発し、…
この流れが一層進むと、ある臨界点に達するのではないかという予想があります。
つまり、Strong AIが事実上実現して、コンピュータとそのインタフェースによって、
生物学的な限界を超えて文明が発展するという予想です。
あるいは、現在は人体の物理構造に制限を受けている人間の意識が、
コンピュータ(IA:Intelligent Amplifier)の助けを受けて爆発的に増大して
同様の結果に至るという予想です。
この臨界点の事を
Singularity(特異点、特にこの文脈では技術的特異点)
と呼びます。
映画「トランスセンデンス」が扱った内容でもあります。
技術的特異点が来ると予想する人々の中の主要な一人、
数学者のヴァーナーヴィンジさんが書いた資料を見つけました。
マジな(NASA主催の学際的研究の会議向けに発表したような)文章です。
1993年の古い資料ですが、古い分、アイデアの源流がよく記述されていてわかりやすいです。
Vision-21
http://ntrs.nasa.gov/archive/nasa/casi.ntrs.nasa.gov/19940022855.pdf
の11ページから12ページ
「The Coming Technological Singularity: How to Survive in the Post-Human Era」
来たるべき技術的特異点に向けて:新人類時代に生き延びるには
まるでガンダムを思わせるような表題に訳したのは、私の釣りですけど。
1993年と言えば、日本はもちろんアメリカでもインターネットブレイクの前夜です。
インターネットは存在はしましたが、
大学や企業のごくごく限られた部分を接続した実験的なものでした。
個人用コンピュータもようやく普及の途につき、
今より千倍遅いデスクトップが跋扈していた時代です。
IT機器にしても、PDAや携帯電話はありましたが、デジカメもiPodもまだです。