実は、これは逆効果になっているかもしれません。
目の構造を考えて見ましょう。
眼に入った光は網膜に当たり、ここで電気信号に変換されて脳神経系に伝わっていきます。
視野の中心に興味を据えて注視点に置き、何かをじっと見つめた場合、
網膜上でそれに対応するのは中心窩と呼ばれる部分です。

(ブログ用に販売されているプロの画像データでもなく、
フリーなもののコピーでもなく、
Illustratorでがんばるのでもなく、
手を動かして描いてみました。
同様なことをやっている先達へのオマージュです。
手描き万歳♪)
ところで、眼球に入った光が網膜の中で実際に光を感じる受容器には、二種類のものがあります。
ひとつは色の違いをよく感じる錐体細胞、もうひとつは比較的弱い光も感じ取れる桿体細胞です。
注視点に対応する中心窩では、錐体細胞だけが密にならんでいて、
色覚の違いをvividに感じ取れます。
しかし、弱い光も感じ取れる桿体細胞は中心窩の部分にはなく、
少しはずれた部分に多いのです。
かいつまんで言うと、視野の中心から少しはずれた所の方が弱い光を感じやすいことになります。
(ただし、明るくて明確な形をしたものを見る場合は、じっと見つめてもよく視えます。
これは、中心窩付近ではほかの部分より受容器の密度が高くなているせいだと想像してます。)
これを簡単に実感できるのは、夜空を見上げて星を見たときです。
天文愛好家の間でよく言われるのは:
暗い天体や淡い天体を見るときは「そらし目」を使う
ということです。
目標をじっと視ないで、すこしそれたところを視るつもりになって感じるのです。
(周辺視野で見るという言い方もあります。
しかし、学術用語としての周辺視野は、あまりよく視えない場所を指す気がするので私は使い方に慎重です。)
夜空を見上げてみてください。
すばるのような、暗い星が狭い範囲に密集しているものを見てみましょう。
あるいは、オリオン座の三ツ星の左下にある小三ツ星を見ようとしてみてもよいでしょう。
彗星やアンドロメダ星雲のような、輪郭がはっきりせずぼんやりしたものでもよいです。

これらを、視野の中心においてじっと見つめてみると、
なんだかよく視えない事に気がつくかもしれません。
すばるの星の数が少なかったり、
小三ツ星が2つしかわからなかったり、
アンドロメダ星雲を見失ったりします。
それが、じっと視るのをやめて少し目をそらすと、一瞬急にはっきり認識できたりするのです。
これはもちろん天文に限らない話です。
微妙な光を感じたいときや、淡いものをよく感じたいときには、
ぜひともそらし目を使ってみてください。