ジョーカー(Joker)は2019年10月に公開された作品
監督・脚本・制作: トッド・フィリップス
出 演: ホアキン・フェニックス / ロバート・デ・ニーロ 他
時 間: 122分
制作費: $55,000,000 約60億円
受 賞: 第76回ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞
指 定: R15+ですが、悪に共感して、悪事を働くことを恐れたのか?
おすすめ度 : ★★★★★ 93点!共感できる部分が多すぎる!
ただし、かなりダーク作品なので、見る人を選ぶかもです。
●半兵衛の予想では、今年のアカデミー賞、主演・作品・脚本賞を受賞できる力があると踏んでいます。
追記:アカデミー賞 (作品賞・監督賞・主演男優賞・脚色賞・衣装デザイン賞・作曲賞・撮影賞・編集賞・音響編集賞・録音賞・メイクアップ&ヘアスタイリング賞 ) 11部門 にノミネートされ、ホアキン・フェニックスが主演男優賞を受賞とヒドゥル・グドナドッティルが作曲賞を受賞しました。 脚本賞はノミネートされませんでしたが、主演男優賞は当たりました。
○トマトメーター批評家69% オーディエンス88%
ロッテン・トマトメーターで批評家の点数が振るわない原因はストーリーラインがマーティン・スコセッシ作品の「タクシー・ドライバー」「キング・オブ・コメディ」のオマージュである点、暴力や殺人を美化する内容、精神疾患に関する問題があるとされた描写によるものとされています。
<ストーリー>
財政難に陥り、人心の荒むゴッサムシティに住む大道芸人のアーサー・フレックは、母ペニーの介護をしながら、自身もまた福祉センターでカウンセリングを受けながら毎日を過ごしていた。彼は、発作的に笑い出すという病気を患っていた。アーサーはコメディアンを目指していたが、なかなか機会に恵まれず、それどころか不良少年に仕事を邪魔されたことの責任を押し付けられるなど、報われない人生だった。
◆ニューヨーク/ロサンゼルス市警が厳重な警戒体制!
実はこの映画の公開にあたり、ニューヨーク市警やロス市警が映画館周辺を厳重に警戒し、暴動が起きた場合の即時対処を宣言しているのです、この嘘のような本当の話ですが、映画をご覧になればわかります。日本人で良かったw おそらくR15+指定の理由と思われます。
◆長ーい前置き ※前置きなんていらないという人は、次の◆まで飛んでねw
私は映画好きで結構の数の映画を見ます。
最近では、蔦屋のDVD借り放題プランに加入しました。
近所の蔦屋の洋物映画は棚に何千本もの作品があるのですが 、いざ借りようと思うと鑑賞済みの映画ばかりです。今はお試し期間なので短期間で集中的に借りてみて、見るのがなくなったらさっさとやめようと思っています。
ところで、私が鑑賞した何千本の作品のなかで、何が一番お気に入り作品かと申しますと、ベスト3に間違いなく入る作品が「ダークナイト」です。
知人におすすめ作品を紹介する時に真っ先にあげるのが「ダークナイト」です。
バットマン関連作品なので、単なるアメコミヒーロー物作品かと思われてしまいまが、決して陳腐な作品ではありません。
そして、そこに登場するジョーカーなのですが、もう、惚れ惚れする悪役なのです。
何が凄いかというと、
①お金には一切目をくれない。
②たった一人でマフィアを潰してしまう。
③いつも先頭に立って戦う!
④頭が良すぎて相手が打つ手を読めてしまう。
⑤アメコミにありがちなスーパー能力が一切無い身体的には一般人
⑥徒党を組まず一匹狼 (※後にハーレークインと行動)
⑦チキンレースでもバットマンに負けない度胸。
そして、このジョーカーを演じた「ヒース・レジャー」が、1000%はまっている!
残念ながら彼はこの作品の完成を見ることなく他界してしまいましたが、私のなかでは、この作品限定でヒース・レジャーのジョーカーこそが最高のヴィランなのです。
その「ジョーカー」の誕生秘話が映画化されることは聞いていましたが、ヒース・レジャーを超えるジョーカーはいないと思っています。
しかし、主役が、ホアキン・フェニックスだったので、気になっていました。
ホアキンといえば、これまた私の大好きなベスト作品の一つ「グラディエーター」で、マキシマスの宿敵コモドゥス帝を演じた名優で、こちらでも最高に憎たらしいヴィランを演じていました。
最近、映画館に足を運ぶ衝動に駆られる映画がなかったのですが、「ジョーカー」が封切られたの知り、ヤフー映画で、平均点が5点満点中の4.26でかなり高点数をつけていたので、がっかり映画じゃない事を知った上で、映画館に足を運ぶ事に決めました。
いよいよ、映画がはじまりました。
ダークナイトのヒースは28才で、バットマンと対決しました。
しかし、ホアキンは今年45才です。劇中で少年のブルース・ウェイン=後のバットマンと接する機会があるのですが、ブルースがその時に10才として、ヒースが28才の時に対決したので18年後にバットマンとジョーカーが戦闘するとなると、ホアキン45才の18年後となると63才でバットマンと対決することになりますので、かなり無理のある設定だと思います。ダークナイトに合わせるならホアキンが18才ぐらいでないと時系列が合わないことになってしまいますね。ましてやこの映画、ジョーカーの誕生秘話をえがいていますが、45才で誕生は遅すぎる!
私の中では大幅な減点なのですが、これはダークナイトとは別物作品なのだと言い聞かせて鑑賞を続ける事にしました。
◆ダークナイトとは別物の傑作映画
見終えて思ったのが、これはダークナイトとは時系列が一致しませんが、ダークナイトビギンでは無く、まさにタイトルどおり、ジョーカービギンなのです。
ジョーカーの誕生の瞬間を観客は目の当たりにするのですが、あまりにも彼の生い立ちが社会的弱者として描かれています。ヴィラン(悪役)誕生作品なのに、あまりにも共感できる部分が多いから困ります。
この社会は糞ぐらいに格差が激しいし、貧乏人にはあまりにも理不尽が多い!病人が必死に生きていくとなれば差別され、更に生活は厳しいものになります。
そのような厳しい生活の中で追い打ちをかけるような事件が次々に発生します。
◆流石ホアキン!(アーサー・フレック役=ジョーカー)
長ーい前置きはさておき、さすがホアキン!貧乏な役回りなので、体重を激減して骨と皮の体(-24kg)に仕上げています。作品にかける意気込みが現れています。リアルの彼はお金持ちなのに完全な病気持ちの貧乏生活者を演じています。今年のアカデミー主演男優賞候補になると個人的には思われる演技です。孤独や苦難、葛藤や狂気を芸術的と思えるほどの演技で表現しています。
彼は楽器店の閉店セールでピエロとして店の看板を持って客寄せをするのですが、少年のチンピラ達に看板をもって行かれてしまい追いかけるも、ボコボコにされてしまいました。
へ?あの格闘のスペシャリストのバットマンと素手で格闘を繰り広げた気丈なジョーカーなのに弱すぎる! まぁ、これはダークナイトとは別物作品なのだと言い聞かせて鑑賞を続ける事にしました。その上で最後まで鑑賞すると、この作品もヒーローものの枠を越えた傑作だと思いました。
内容についてはネタバレになってしまいますので、これ以上は書けませんが、まずは、ダークナイトファンには時系列があわない別作品だと理解して見てほしいです。
◆ホアキンのコメント
「最初は簡単な決断ではなかったけど、やっていくにつれて大きくなっていたんだ。予想をはるかに超えたものになっていった。自分のキャリアにおける最高の経験の1つだ」
劇中でクリームのホワイトルームが使われており、鳥肌がたちました!
動画は一度だけ再結成のクリームライブより。
訃報:この記事を上げた10月6日に、クリームのドラムのジンジャー・ベイカーさんが80歳でこの世を去られました。謹んでご冥福をお祈り申し上げます。
・未鑑賞者注意! 以下、ネタバレを含む感想など
・
・
・
・
・
◆笑いを広めたい青年
経済格差の中で困窮する市民の中のひとりで、病気の母親を介護しながら、ピエロのバイトをして細々と生活していました。彼の願いは世の中に笑いを広めること・・夢は一流のコメディアンに成ること。
◆様々な出来事が襲いかかる
しかし彼自身も精神的に不安定で市のカウンセリングを受けていましたが、財政難でその部署も撤廃されてしまい、薬を飲むこともできない有様に、職場では上司が一方的にミスの責任を追求し、何かと恩着せがましく彼を雇っていました。 母親は困窮した生活を救ってくれると信じて、毎日のようトーマス・ウエイン宛の手紙をしたためていました。 そんなある日、母親から思わぬ告白がありました。 そのトーマス・ウエインはアーサーの実の父親だと言うのです。 その真偽を確かめるためにアーサーはトーマス・ウエインに接触を試みますが、口汚く「お前の母親は気が狂っている、そんな事実はない!」さらに「お前は彼女の養子だと」告げられ、怒ったトーマスに殴られてしまいます。
◆知らない自分と母親の過去
信じることができないアーサーは、真偽を確認する為に精神病院の記録を調べましたが、母親は精神病で妄想癖があり、アーサーは養子であり、さらには、幼い時に虐待を受けていたことが判明しました。その虐待こそが、自分が、笑ってしまう病気の原因だと直感しました。
◆6人を殺害
地下鉄で絡まれて、3人の勝ち組サラリーマンを殺す。
母親を殺す
バイト先の同僚を殺す
人気コメディアンをテレビ放送中に殺害
◆トラウマを取っ払う方法
地下鉄での殺人で変化が訪れます。
罪の意識に苛まえるかと思いきや、驚くことに殺人を犯したのに逆にスッキリしてしまいました。恐ろしいことに、邪魔者を消してくことで何かから開放される事に気づいてしまいました。
◆抑圧された社会がヴィランを生み出す
ジョーカーは悪者なのは分かっているけれど、感情の動きに共感できる部分が大きくて怖いです。
彼は生まれながらにして悪ではなくむしろ心優しい男でした。 社会的に弱者に襲いかかる不当な圧力やいじめの数々、一方的に我慢を強いられる格差、トラウマとして残り続ける虐待・・・これらが、ジョーカーという存在を生み出したといえると思います。 つまり、弱者に情け容赦無い社会が必然的に悪人を作り上げてしまうのです。
そして何よりも、その弱い側の立場の人間同士がお互いを傷つけあったり、無関心であったり、彼ら自身にもその事の原因があることも描かれています。
◆金持ちと貧乏人の壁
街頭では怒りに満ちた抑圧されている人達が集まりパニック寸前のデモが起きているのに、金持達は貧乏人を一切気にすること無く、扉一枚隔てた映画館で優雅にチャップリンを見て笑っているのです。 その中にトーマス・ウエインがいるというわかりやすい構図です。 私は今まではバットマン側として見ていましたが、この映像で、ジョーカーの視点に初めて立ちました。 すると、トーマス・ウエインが悪人に見えてくるから本当に不思議です。
◆無価値な人間からヒーローになる
私はデモに参加してる無力な人たちの立場で鑑賞しています。 謎のピエロの男は彼らからすれば、支配する側の人間をやっつけてくれたヒーローです。街はピエロの仮面をかぶった人たちで溢れかえっています。
アーサーはヒーローになるために殺人を犯したのではなく、地下鉄の3人は自分に絡んできたから殺したし、母親は嘘ついた上に、虐待までしていた事に対する恨みで殺しました。バイトの仲間は嘘の証言で、アーサーが解雇される原因をつくりました。 まだこの時点では、無差別に殺しているわけではなく、自分を貶める者に対して行った事に過ぎませんでした。
最後に、デ・ニーロが演じるマレー・フランクリンを殺害したのは、これだけは動機が違っていて、ジョーカーとして自分の存在を世間に広めるためでした。同情の余地がない最悪のヴィラン誕生の瞬間でした。それと同時に、自らの存在価値を見いだせず社会から無視されて孤立した彼が、その、存在を世間に無理やり力で認めさせた瞬間でもありました。
◆ニューヨーク/ロサンゼルス市警が厳重な警戒体制!
この作品を見ると本当に弱いものへの不当な風当たりが強いことを改めて教えてくれる作品で、目覚めた市民達が暴動を起こすのでは無いか?と考えるのは現実的な対処方法だと思います。それほど世相を上手に映し出した証拠でしょう! かつてアメリカではバッドマン上映中の映画館で、ジョーカーに感化されてしまった若者が銃を乱射して12人が死亡した「オーロラ銃乱射事件」が起きています。
◆最後に疑問に思う事など
・ジョーカー誕生秘話にしては45才のホアキンが主役では年齢が流石に合わなすぎる、18才の役者にすれば完璧な設定でした。シナリオが良かっただけに残念。
・ジョーカーはIQが高い悪者として知られていますが、頭の良さが全く伝わってこなかった。
・ジョーカーは口が裂けていますが、その謎に対する回答は今回ありませんでした。
・ジョーカーの正体はテレビでもアーサー・フレックとして放送されたので、実は謎の人物ではなかったのですね。ダークナイトでのジョーカーは正体不明の新人の悪人という設定でした。
この映画が高評価の人は恐らく、虐げられたジョーカー側の人間で観察し、逆に低評価の人は、現状の人生に比較的満足されており、ジョーカーの行動は迷惑で理解できないし、したくも無い人かと思われますが、どうでしょうか?