カメラを止めるな!は2017年に公開された作品
監督・脚本 : 上田慎一郎
原案:劇団 : PEACE「GHOST IN THE BOX!」
出 演 者 : 濱津隆之・真魚・しゅはまはるみ他
j上映時間 : 96分
制作会社 : ENBUゼミナール他
おすすめ度 95% 情熱とアイディアに溢れ緻密に練り上げらた何度でも見たくなるコメディー作品
<ストーリー>
ゾンビ映画の撮影中に本物のゾンビが襲来する。リアリティーにこだわる監督は撮影を続行しカメラを回し続ける。本気で逃げ惑う俳優陣とスタッフ、そして監督。ありがちな筋立て、いかにも低予算なインディーズ作品。こうして37分の生放送番組ができあがった、のだが!? ウィキペディアより
ネタバレなしにこの作品を説明するのは難しいですが、イメージとしては低予算の三谷幸喜作品といったところでしょうか?
◆映画愛あふれる低予算作品
最近よくご紹介する福田雄一監督は低予算を逆手に取り「勇者ヨシヒコ」を作りあげたのですが、この「
カメラを止めるな!」は制作費がなんと300万円という正真正銘の低予算。
人気漫画を人気のある役者入れて適当に撮影して、超クォリティーの低い作品(進撃の巨人など)だして日本の恥さらし的荒稼ぎする監督が多いなか、今作はたった300万円という超低予算のインディーズ作品ですが、良く練られた脚本に斬新なアイディア、無名役者さんたちですが映画が好きで好きでたまらないという感じがひしひしと伝わる映画愛溢れる作品です。
◆たった2館の上映が口コミで300館に!
そして、その面白さは見ているものに伝わり、口コミでどんどん広がっていきました。
更に世界的な規模で配給され、興行収入が30億円以上に・・・宝くじに当たったような映画ですね。
予告編 ※ネタバレが多く含まれていますので注意
以下ネタバレを含む感想
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◆まるでロシアのマトリョーシカ人形のような凝りに凝った4重構造の劇中劇
①ゾンビ物のドラマを撮影するという話 カメラマン役細田さん
②ゾンビ物の撮影をしている最中に本物のゾンビが現れるという設定で①の上から撮影
ここまでが劇中テレビで放送された約37分のワンカット撮影
③その37分のワンカットを撮影(①と②)している現場の裏側のドタバタ劇を含めて撮影
ここまでが本編です。
④実はそのドタバタ劇も実は作られており、それを更に一番後ろから撮影しているのが本当のスタッフ
◆自然な演出
こんなに凝りに凝った計算された構造になっているにもかかわらず、見終わって冷静に考えないとこの構造が見えてこないという。なんとも、自然な演出です。
外では上田慎一郎監督ではなく役者の濱津隆之さんが監督と間違えられるそうです。それほど本当の監督は一番後ろにいてわからない存在だったのです。
◆制作費300万円!
にわかに信じがたい金額です。
もし、綾瀬はるかが一人いたら一日分の出演料で軽く300万円は吹っ飛びます。
ざっと見積もっても俳優だけでも18人はいます。スタッフも何人いるのか分かりません。更に空撮・編集や音楽宣伝費用まで・・・・・
実は制作のENBUゼミナールは俳優監督養成所のような組織でそこの自主制作映画で、ワークショップを経て映画を作るという企画に賛同した人がキャストなので、人件費がかからないそうです。
しかしながら、撮影で使われた親子の住んでいる家は監督の自宅ですし、赤ちゃんは監督の息子で、撮影の衣装も監督が自宅で色彩したものだそうです。さらに「ONE CUT OF THE DEAD」のデザインも監督の奥さんが手がけそのまま海外でのタイトルになりました。
◆興行収入30億!!
口コミでパンデミック感染!アジア・アメリカ・イギリス・フランスと公開されて11月13日現在で30億円をゲッチュ!
◆ホラー映画だと思ってみるとがっかりする
正直にいいますと、ウォーキング・デッドのように制作費がたっぷり使えてクオリティーが高い作品を8年間も毎週見ている目からすると、演技は大げさすぎだし、カメラは手持ちでブレまくり、特殊メイクもひどいし、初見では嫌悪感が怒りに変わりました。これは先入観で和製ゾンビ映画だと勝手に思ってしまっていたからです。
◆虚構の世界から現実の世界へ
しかし2部に入ると虚構の世界から現実の世界へ一気に引き戻されます。ワンカットシーンでのあの怒りに満ちた絶叫監督の姿はどこにもなく、出演者や依頼者の要望を何でも聞きいれる「ノー」と言えない気の弱い監督の姿がそこにあります。娘のために誰もやりたがらないあり得ない仕事を引き受けたのですがあまりにも絶望的な状況になり自宅で涙を流す始末。
実はこの作品はそんな気弱な「早い!安い!質はそこそこ!」監督を中心に繰り広げる家族愛や映画愛が溢れる奮闘劇だったのです。
◆一部があるから2部がおもしろい!
初見で感じた、謎の変な間合いの回収、さらに危機的な状況である監督を助けるために妻と熱血娘が奮闘する姿が滑稽で面白い!個人的にツボだったのは監督の奥さん役のぽん抜けの振りと後半の回収、役に入っていくと人が変わるという豹変ぶりも絶品!撮影現場が荒れる中でいつのまにか現場を仕切ってしまう娘!さらには生首を回転レシーブするファインプレーも!笑いの中にある家族愛という観点からも素晴らしいと思いました。組体操のエンディングでは現場にいつの間にか変な一体感が生まれて青春映画みたいになってしまいましたね。
◆スルメのような作品
三度めの鑑賞では、冷静に作品を見れましたが、キャラクターごとの振りと回収が必ずあり、何度見ても驚かされます。一説には百回も見たツワモノが存在するとか・・・スルメのような映画で噛めば噛むほど味が出る作品だと思います。それにしても上田慎一郎監督はすごい!
そういえばジョージAロメロ監督の「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」も低予算の作品でしたが、今では伝説のカルトムービーと呼ばれています。もしかしたら、この作品も同じような評価になるかもしれませんね。
こんな上田慎一郎監督ですが、なんと全くの独学の監督さんなんですね。
一気に知名度メジャーのなりましたが、作品としてはまだメジャー作品を作ったことが有りません。
次回作が気になります。低予算で行くのか?スポンサーついて一気にメジャー作品に行くのか?きっと、三谷幸喜的にいくのですかね??期待せずにはいられませんね。インタビューではタイムスリップ物の金字塔的な作品をつくりたいとか・・・・