「怒り」は2016年9月公開された東宝映画
原作:吉田修一(2014年)
監督:李相日(り そうじつ/イ・サンイル )
脚本:李相日
音楽:坂本龍一
出演:宮崎あおい/妻夫木聡/渡辺謙他
おすすめ度 ★★★★☆ 3.7点w人は曇った眼鏡で見てしまう。
お子様:妻夫木聡と綾野剛のホモシーンがあるので注意
<ストーリー>
八王子で起きた凄惨(せいさん)な殺人事件の現場には「怒」の血文字が残され、事件から1年が経過しても未解決のままだった。洋平(渡辺謙)と娘の愛子(宮崎あおい)が暮らす千葉の漁港で田代(松山ケンイチ)と名乗る青年が働き始め、やがて彼は愛子と恋仲になる。洋平は娘の幸せを願うも前歴不詳の田代の素性に不安を抱いていた折り、ニュースで報じられる八王子の殺人事件の続報に目が留まり……。シネマトゥデイより
東京・千葉・沖縄という3つの都市を舞台にした群像劇。
3つの物語は得体の知れない男性が一人づついてこの内の誰か一人が八王子殺人事件の犯人なのではないのか?という構成で物語が進んでいきます。つまり視聴者は疑いの目を持って物語りを追わないといけないということになります。八王子の事件がなければ何の疑いもなく物語は進んでいくはずです。サスペンスの要素としては犯人探しですが、信じることの意味が重要なテーマになっています。又、この物語のタイトル「怒り」とは誰が何に対しての怒りなのか?という謎もあります。
◆第40回日本アカデミー賞
数の上ではシン・ゴジラ10部門(最優秀は7部門)を抑えて最多受賞13部門(最優秀は1部門のみ)を受賞しています。
- 最優秀助演男優賞:妻夫木聡
- 優秀作品賞
- 優秀監督賞:李相日
- 優秀脚本賞:李相日
- 優秀主演女優賞:宮崎あおい
- 優秀助演男優賞:森山未來
- 優秀助演女優賞:広瀬すず
- 新人俳優賞:佐久本宝
- 優秀撮影賞:笠松則通
- 優秀照明賞:中村裕樹
- 優秀美術賞:都築雄二、坂原文子
- 優秀録音賞:白取貢
- 優秀編集賞:今井剛
◆李相日監督作品
代表作 フラガール 悪人 許されざる者
閲覧注意!ネタバレを感想など・・・・
◆演技について
演技については、ゲイ役を体当たり演技した妻夫木聡さんはもちろん良かった?ですが、私が飛び抜けて、この人凄いと思ったのは、宮崎あおいさんです。7kg増量はさておき、ちょっと頭の弱い障害があり、舌っ足らずで化粧なし、全く裏のない素直な感じで、完璧な演技で別人格をつくりあげていました。嗚咽する場面では体全(体特に口をみればわかります)が震えていました。特に日本の俳優さん場合は泣き真似が下手で一気にテンション下がる場合が多かったのですが、ここまでできる役者さんは日本では珍しいと思います。カメレオン俳優の松山さんも完全に飲まれていましたね。
サイコパスを演じた森山未來さんもモテキのイメージがまったくなく良かったです。
渡辺謙さんは監督のお気に入りなのかもしれませんが完全なミスキャストだと感じました。なんというか歴史上の大物、織田信長や伊達政宗を演じれる人が、お魚市場に務めるのお父さん役ですが、どう隠しても大物感やオーラを押さえるのが大変な感じがしました。
◆犯人はサイコパスか?
人を疑うことをテーマにした作品は意外と多くて私も過去に2作品このブログで取り上げています。
「十二人の怒れる男」と「ダウト〜あるカトリック学校で〜」です。「怒り」はサスペンスの要素が強いので疑うことに対するテーマ性は低い気がしますが、佳作といって良いレベルの作品だと思います。
ヤフー映画レビューでユーザーレビューを見ていたのですが、一つ気になるレビューがありました。
役立ち度2番めでタイトルは「犯人の真実に号泣しました」というレビューなのですが、
犯人の自称「田中」は実はサイコパスではなく、頭の良い繊細な人だ・・・というものです。
内容は
→わざと(旅館で)暴れて、辰哉と泉しか知らない隠れ家に(泉は動けないので)辰哉だけを誘い出した。
→わざと辰哉を激昂させ、自分を刺し殺すように仕向けた。
→(レイプ)犯人が分からず、罰することも出来ないのなら、『自分が犯人になればいい』。
→辰哉は未成年。生きる価値のないクソ殺人犯を殺したって大きな罪にはなりません。上手くいけば、正当防衛で無罪放免です。
→怒りという強い生命エネルギーを爆発させることによって(自殺など考えず)、泉は甦りました。
→田中は孤独な中で懐いてくれた二人が本当に可愛かった。被害者の親身になることで、かつての己の罪を悔いた。
というものですが、そこまで正直なところ、頭が回りませんでしたが、なるほどと思えるレビューです。しかし、そんな優しい人間ならそもそも八王子事件など起こさないだろうというのが私の考えです。つまり考え過ぎの見当違いだと思いますが、もしかしたらそうなのかもしれません。皆さんはどうお考えでしょうか?
◆ホモシーン
なにやら女性の間では妻夫木聡と綾野剛とのホモシーンが受けているようですが、あの、臭ってきそうなな(サウナのような場所)シーンでは気持ち悪い感しかありませんでした。このように感じる男性が多いように思えます。この映画を語る上での好き嫌いを左右するシーンかもしれませんね。