◆BATTLESTAR GALACTICA
製作総指揮・企画・脚本:ロナルド・D・ムーア
製作総指揮:デイビッド・エイック
出演 エドワード・ジェームズ・オルモス, メアリー・マクドネル
おすすめ度 ★★★★★ 星5 これは凄い!あらゆる要素が詰まった名作
◆ストーリー
高度に発達した人類が創りだしたロボット「サイロン」が、驚異的に知能を発達させ人類に対し攻撃を仕掛けてきた。その力の前に人類はほぼ絶滅し、寄せ集めの宇宙船団にいる約5万人だけとなってしまった。宇宙船団の中でたった一隻の建造されたから50年も建つボロ宇宙空母「ギャラクティカ」が民間船と船団を組み安住の地を探し求めながら、人類最後の砦となりながらもその存亡をかけてサイロンとの最終決戦に挑む。サイロンは何故人類を抹殺しようとしているのか?果たして人類は生き残れるのか?安住の地を見つけることが出来るのか?船団の民主主義は守られるのか?(半)
この作品は1978年の作品(こちらは未鑑賞)を元につくられ、2005年から放送されたリ・イマジネーション版と呼ばれ区別されています。ただいまHuluでやっていて4シーズン78エピソードの大作。序章となる「ミニシリーズ」や外伝の「RAZOR/ペガサスの黙示録」も入っています。
※ミニシリーズ2話は必見で先に見てください。それから本シリーズへ・・・
◆日本では決して作れないアメリカの底力
Huluで面白そうなのないか探していたのですが、全くこの作品の予備知識もなく、見始めたのですが、これが面白すぎる!
数多くのアメリカのTVドラマを見てきましたが、「24」「ウォーキング・デッド」並の面白さでした。「24」が一人のヒーローを追いかけた作品で、「ウォーキング」は小集団、この「ギャラクティカ」はこの中ではスケール的には一番大きいです。
特撮も話の面白さにひきづられて、見落としがちですが映像もすごいです。
しかし、この手のドラマを見てしまうと映画がしばらく見れなくなってしまいます。90分足らずだと、星新一の「ショートショート」のように感じてしまうからです。
日本の最近の作品で宇宙物で似たようなものは「宇宙戦艦ヤマト」の実写版がありますが、「ギャクティカ」がTVシリーズにもかかわらず、日本の映画のレベルが低すぎて、比較するのが恥ずかしくなります。プロ野球対少年野球ぐらいの差がありますね。
◆深いテーマにもかかわらず見やすい作品
宇宙物は結構面白い作品が多く「スター・トレック」や「スターゲイト」シリーズなんかもけっこういい作品でしたが、私はこの作品の完成度が一番だと思います。
タイトル的に想像していたのは、いわゆる宇宙の戦争ものでしたが、スターウォーズのような冒険活劇ではなく、そこで描かれるのは戦争とサバイバルだけではなく、宗教・政治・人類の存在の意義や理由 など、結構重いテーマが提示されていきます。監督がこうだと考えを押し付けるのではなく、両面から描かれており考えながらみる深い作品となっています。
この作品の要素を映画に例えると
「グラディエーター」のリーダー像
「遊星からの物体X」の誰も信じられないあの感じ
「硫黄島からの手紙」の追い詰められ感
「A・I」のロボットと人間との違いに関するテーマ
「ターミネーター」のロボットとの戦争
「ヱヴァンゲリヲン」の何故使徒が攻めてくるのか?
更に、種族の垣根を超えた恋愛、戦争時における民主主義、神の存在対する考え などなど、ありとあらゆるテーマが、見事に提示されていています。
又、一人の人物を追った作品ではなく、様々な人物にスポットライトが当てられていきますので、乗組員による考え方の違いや行動の違いによる裏切り行為や差別行為など、見どころ満載でヒューマンドラマとしても最高の仕上がりになっています。
◆きちんとテーマがあり最後までぶれない
「ロスト」のように毎回謎をだして、視聴者を惹きつけるような視聴率優先の方法はとらず、きちんとしたテーマにそった内容になっており最後までぶれることない姿勢に好感がもてます。ちなみに「ロスト」は謎をだしておいて、謎の回答がきちんとされておらず、矛盾点も多いし、話のむだも多い。でも最後は泣けましたけどね。
※半兵衛の「ロスト」評価星3.5
◆人型サイロン
サイロンが創りだした究極の人型ロボット。
ロボットでありながらもはや生命体の域であり、ほぼ人間との区別をつけることができない。
感情もあり、夢も見る、人を愛すこともできる。
生まれた時は無の状態であるが、接してきた人間の影響によりどんどん性格や考え方が変化していく。又、自分がサイロンである事を知らない者(Sleeper Agent)もいる。
調べてみると、「永遠の0」の山崎監督や「ローレライ」の樋口監督など熱烈なファンだそうです。
◆ネタバレなのでここから先は鑑賞した人のみ
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◆名言集
●サイロンの攻撃理由
何故サイロンは人間を憎むのか聞きたい
あなたは言った
人類は欠陥のある創造物だと
”人間は いまだに 嫉妬や欲に駆られ・・・
殺し合いをつづけてる”と
”人類は生き残るに値するか自問もしない”と
たぶん値しない・・・
※父親が悪人の殺人者なら、良心のある子どもはそれを止めようとするだろう。
しかし、言い聞かせてもわからなければ、最後には息子は父親を殺すだろう。
サイロンは人間が創りだしたいわば、人間の子供のような存在。
●共闘を決意した時のサイロンの演説
サイロンの内戦で死を目の当たりにした
死んだ仲間は永久に戻らない
再生船が近くにいなかったことで
感覚が変わった
時間を意識し・・・
一瞬一瞬に大切な意味があると感じた
私達の存在が価値を持つには・・
命は尽きるべきだと気づいた
意義ある人生を送るためには再生すべきではない
人間の欠点は思い悩みながら生きてること
”死”をね
でも本当は・・・
幸せなことだわ
※死なない存在であるサイロンを通して、人間の生きる意味や意義や価値を教えてくれる。
重要なテーマについての一つの回答。
●バルダーの発言
”神”や”神々””霊的存在”と呼ぼうが
我々には知りえぬ力だ
でも それは関係ない
その力は ここに存在し
我々の2つの運命を結びつける
それが真実だとして
なぜ その力が 我々のためになると分かる?
なぜ神は君の味方だと?
分からない
神は誰の味方でもない
神は自然界の力だ 善悪を超越してる
善悪は我々が生んだ
サイクルを破るか?
”誕生””死””再生”のサイクルだ
”破壊””逃亡””死”
すべては我々の手にかかってる
思い切りが必要だ
恐れずに希望を持って生きることだ
※「神は自然界の力」=神は万物(自然界の物質全て)に宿ると考えた日本古来の物の考え方や、「再生のサイクル」=輪廻転生などの仏教的な考え方に近い捉え方をしているのが面白い。
「我々には知りえぬ力だ」=聖書では度々、神との直接対話がなされるが、この作品では一切そのような嘘はでてこないが、道標的な力は感じることができる。
●外伝RAZORよりケンドラ・ショー中尉
「 人は数々の選択をし それを背負って生きる 選択の結果が今の自分だ 」
◆その他
●好きな人物
ヒロ(カール・アガソン)・・好きというか、良心の象徴ですね。
●スターバック(カーラ・スレイス)について
ミニシリーズで、謝る副艦長にたいし、「あんたは弱っちい・・」などなど、頭を下げている者に対しての暴言を吐いたのをみて、私は許せないタイプであると思いました。
又、尻軽女も好きになれませんし、近くにいて欲しくない、いらいらしてしまうタイプです。
いくら仕事ができても、人間的に到底好きになれるタイプではありません。
しかし、彼女の過酷なまでの人生、生い立ちなどを考えあわせ、最後の最後まで使命を果たしていく姿をみていくうちに、人間として果たした役割はアダマ艦長やロズリン大統領並のものがあったのだと思うと、やはり、好き嫌いで人間を判断してはいけないのだと思いました。
そんな風に彼女に対する見方がかわり、あらためて作品を思い返してみると、ジョン・レノンとだぶってきました。過酷な幼年期から、喧嘩っ早く皮肉屋で反抗心が強く歯にものを着せぬところ、強い信念は決して曲げずに物事を成し遂げるところ、その実力、頭の回転の速さ、人類に果たした大きな貢献などなど、まるっきり同じです。
●ヱヴァンゲリヲンとの類似性 ※ヱヴァンゲリヲン見ていない人はネタバレになるので注意
ヱヴァンゲリヲンの人類補完計画=使徒により人類を滅亡させ、人類に残された男女2名による人類の再生計画であるが、作品の流れは結果的に全く同じ。
庵の監督のインタビューによると、エバを作ってからこの作品をイッキ見したそうですが、真実かどうかは定かでありません。
●古代宇宙飛行士説
人類の起源や成り立ちを「エーリッヒ・フォン・デニケン」の著作を読んでいましたので、物語の最後は、驚きよりもやはりそうきたか・・・という感じでした。
興味の有る方は彼の著作を読むことをお勧めします。