huluオリジナル 「フジコ」シーズン1 全6話 | 半兵衛のブログ

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huluオリジナル 「フジコ」シーズン1 全6話


監督 村上正典、岩田和行
主演 尾野真千子
原作 殺人鬼フジコの衝動 真梨幸子
ジャンル  イヤミス

完成度 ★★★★★ 星5つ これは名作かも ※残酷シーン多いので子供には絶対見せないで!
知り得なかった本当の母親の姿を見つける物語


Huluオリジナルドラマということであまり期待しないで見たのですが、作品の完成度が高くびっくり仰天しました。ストーリーの良さ、演技の素晴らしさ、キャスティングや演出、テンポ、小道具に至るまで、高次元で融合しているので、ぐいぐいと作品に引き込まれていきました。

追記:ツタヤに上中下の3巻でレンタルおいてありました。

・ストーリー

一家惨殺事件の生き残りとしてトラウマを負った11歳の少女フジコ。だが彼女の人生はいつしか狂い始めた。「あたしは人生をリセットできる女」―、呟きながら殺害を繰り返していく。なぜ彼女は殺すのか? 誰が彼女の家族を殺したのか? 愛への渇望か、幸せへの執着か、真実が明かされるとき、最高の後味の悪さと驚愕のラストが、観る者を戦慄と慟哭へと突き落とす。※青少年の視聴に不適切な内容が含まれていますので、視聴にはご注意下さい。「フジコ」公式サイト http://drama-fujiko.com


・憎むべき女にインタビューする娘

「永遠の0」が何年も前に特攻で死んでしまった、おじいちゃんを見つける物語だとしたら
この話は、知り得なかった本当の母親の姿を見つける物語だと思います

フジコから虐待を受けて育った娘が成人して、ある事情により、殺人罪で刑務所で服役しているフジコにジャーナリストという立場で直接インタビューをすることになります。
憎んでる親にジャーナリストとしてインタビューするという構図がとても斬新で面白く、わかりやすい!
そして、沢山の資料を揃え緻密に調査したうえで、面会をしながら、過去におきた一つ一つの出来事について訊ねてゆきます。ストーリーは主に回想シーンで進行していきます。
幼い頃にには決して知り得ることができなかった母親の真の姿、幸せを求めて道を踏み外しながらも必死に生きる一人の女性の姿を知ることになります。


・スプラッター・ムービーさながら

テレビ放送を前提にしていないので殺人などの残酷シーンが、かなりでグロいです。
しかも迫真の演技なので、お子様が見たらトラウマになるでしょう
大人でも、血の海やバラバラ死体に耐性のない人は鑑賞しないほうが良いとおもいます。
そればかりではなく、かなりリアルな幼児虐待のシーンもでてきますので念のため


・もやもや感の残る作品

もちろん、グロいだけではありません。重要なのは、幼年期から死刑に至るまでのフジコの壮絶な人生を疑似体験して、いろいろと自分に置き換えて考える事ができる事だと思います。おそらくインタビューをする娘の立場で、あなたはフジコと接することになるでしょう。
そして見終えた人は、重いボディーブローをもらったような衝撃と疲れが残でしょう。ハッピーエンドの作品は見終わってスカッとする事ができますが、何も心に残らない事が多い。この作品の終わりは、決してハッピーエンドではなく、殺人鬼に共感できる人はいないと思いますが、「心に引っかかりいつまでも残る何か」を感じることができる貴重な作品です。


・イヤミス

作品を鑑賞後、いろいろ調べたら
イヤミスという聞き慣れない言葉にぶち当たりました。

「読後にイヤーな後味が残っちゃうミステリー作品」とのことで、すでに一つのジャンルになっているようです。以前紹介した「告白」も同じジャンルに入るのかもしれません。
つまりイヤミスの本を手にとったら、決して物語がハッピーエンドで気持よく終わることがないということです。
この作品も、ミステリーの要素がもちろんありますのでお楽しみに!





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-------------タバレ含む感想----------------------------------------------

・原因があって結果がある

結果が殺人鬼であれば、気になるのはその生い立ち・・・
その生い立ちのあまりの壮絶さに、哀れみ・同情心が沸き起こり、仕方無さを感じてしまう
しかし、それも最初のうちだけで、行き過ぎた殺人ににだんだん同情したのが馬鹿らしくなるほど殺人を重ねてゆく。そして同情心が消え去り、結局は殺人鬼なのだと再認識される。


人生は幼年期の生活体験が、一生を左右すると思うし、それは否定しがたい事実
特に虐待を受けて育ったら、なおさらだと思う。
子供は虐待を受けても親から離れられないし、抵抗することもできない。
決して抗うことができないものに翻弄されているうちに人格が形成されてしまう。
親から愛されず虐待を受けて成長し、親となったら、自分の子供ををどうやって愛した良いのかわからない。いつの間にか、自分がされていた虐待を、同じように我が子にしてしまう・・・
そんな宿命のように罪の連鎖から抜け出せないことをカルマと呼ぶ。


・クライマックスシーン(解説付)---------------------------------------

刑務所での親子喧嘩を始めるシーン
この作品のクライマックス(名場面)です。
※4回繰り返し見てしまいました。


死刑が実行される期日が迫っておりとうとう最後の面会が訪れる

最後の面会は旧姓に戻し、その手にはいつもの分厚い資料はない・・・

視聴者はきっと娘がフジコに対して、「フジコさん」と呼ばずに「お母さん」と呼ぶのだろうか?これから死にゆく人に、最後だからと割りきって呼ぶのだろうか?と、思っているはずです。

しかしその期待は見事に裏切られ、激しい口喧嘩を始める・・・・

視聴者は「ああ、だめだこれは・・・」と思う

が、しかしよく考えてみたら、今の今まで他人行儀だったのだけど、本音でぶつかりあえたのです。

そうなんです、普通の親子がする口喧嘩と同じなんです。

つまり一瞬だけど普通の親子となった時間が訪れたのです。

看守に残り時間5分だと告げられます

この喧嘩の後フジコは面会を終わろうとして、面会室から出ようとします、これで終わりかと思うと、フジコは振り返り、娘に近寄り何か言おうとする・・・

しばらくの沈黙のあと 「あんた、そんな安物の化粧品やめな、しみ、くすみ、シワが増える・・・」

フジコが我が娘にしてあげることができる、不器用な忠告でした。

それを言い終えてくるっと向きをかえ部屋を出ていこうとする時に

今度は娘がフジコの背中越しに最後の言葉を投げかける、フジコは振り向かずにその言葉に耳を傾けている

「フジコさん、想像してください、もしあなたが母親から愛されていたら、
 子供の愛し方を知っていたら
 こんな形じゃなくて、私達が暮らしていた違う世界があったかもしれない
 確かにあなたは人形かもしれない・・でも、おがくず人形なんかじゃない・・
 あなたは、誰よりも幸せになりたくて、馬鹿みたいに美しさにこだわった、夢見る人形でしょ?
 もうあなたはどこにも戻る必要は無いんです・・想像する先にあるのは、未来だから・・・」

フジコはその言葉を心にしまい込みながらゆっくりと面会室をでる

自分の囚人部屋に戻る長い廊下の途中で、一瞬だけど、親子が写真館で仲良く記念撮影をしている幸せにあふれるシーンを想像する

それは、一瞬の想像なんだけれど人生の中で一番幸せと思える記憶を残すことができたのです。

人生って思い出の集合体なんです・・・想像でも想像した瞬間には、それがその人の支配している時間の現実なのです。

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・抜群の演技力

作品にのめり込めるからどうかは、演技力も大きなファクターですが
主演の尾野真千子さんのド迫真の演技は秀逸です
抜群の演技力で、心理描写や、感情表現や生活感が表現されていて、完璧にフジコが乗り移っていました。見るものをトラウマにするほどで、ここ最近見た映画やドラマでは最高でした。
   ☆半兵衛の2015年度最優秀演技賞国内部門を贈呈いたします!
本人のインタビューによると、共感できる部分がなかったし、したいとも思わなかったので、どうやって演じたらよいか最後までわからずに演じていたそうです。
もしかしたら、無理に共感せずに、「どうせわからない」という開き直りが良かったのかもしれませんね。  ファン一人増えました\(^o^)/

中・高校時代~整形前までを演じる俳優小野花梨さんもとてもすごかった!
若い主婦が生きるために必死にもがいている姿に感動したし、どんどん転落していくさまには同情をしたし、本当に上手に演じていました。私は完璧にドラマに入っていました。フジコのその時代の生きざまがまるで手に取れるようにリアルに伝わってきました。
また、グロイシーンも多かったのですが、よくもまぁ普通に演じられるものだと感心しました。
殺人シーンや解体シーンでの表情が、主婦が夕飯の支度をしている時に、普通に魚を切っているような、罪悪感とかそんなものを、全く持ち合わせていないような感じが、底知れぬ恐怖心を与えました。

もう一人、フジコの長女の子役(※ごめんなさい名前調べられませんでした)のやつれ方の醸し出し方が、尋常ではないと思いました。虐待を受けるシーン・・・まさか、本当に殴られたり蹴られたりしてないですよね? 小学生の役作りでそこまでしないと思いますが驚きの演技でした。


最後にフジコの娘 高峰美智子を演じた 谷村美月さん
他の共演者の尖ったキャラクターの中で、ごく普通の人を演じていたので、目立たないですが、最後のクライマックスのシーンでのフジコとのやり取り、喧嘩のシーンで二人を隔てる硝子を叩くシーンは、演技じゃなく、本当に怒ってたよね!物語の語り部ご苦労さまでした。動きが少ない中での演技だったので大変だったと思います。


・小道具など

フジコの小学校時代の小道具など、よくも用意出来たものだと思いましたし
石炭室や石炭ストープとか・・・自分の子供時代を思い出しながら、周囲の小道具に目をやると、缶ジュースつぶつぶオレンジなど周到に用意されているのにもびっくりです。
西城秀樹など実在のアイドルがが実名で登場します。
虚構のアイドル使われても、嘘っぽすぎますので、ここらへんもかなりポイントが高く、身近にあった出来事のように感じることができました。


・真犯人(本当の悪者) ※ネタバレ注意

死刑直前のフジコに製本されたものが届けられ最後のページをめくると

   「亡き 高峰美智子に捧ぐ」 若村春    と、書いてありました。

なるほど、美智子まで殺され、結局フジコの家系は、フジコの母親の妹、下田茂子に根絶やしにされてしまったのですね。 

フジコの犯罪の影で、実は何人も殺しまくっていた、浅田美代子演じる小坂初代。更にはそのその初代を操っていた下田茂子。※その初代も茂子に自殺に見せかけ殺されている

ここで、フジコ以上の悪者がいて、殺人鬼 VS 極悪人という構図が最後にできあがるわけです。

ただし、その、茂子がその後どうなったのかはわからずじまいなので、確かにもやもやが残りますね。
フジコの家系が根絶やしにされることも併せてかんがえるとバットエンドです。

まあ、普通の作品ならこのレベルの極悪人は、憎まれるレベルなのですが、何しろフジコというキャラクターが強烈すぎるので、かすんでしましました。
原作に対する感想になってしまいますが、かえって、登場させないほうが作品としては良かったかもしれません。何しろ最後の最後で作り物感がでてしまうのは少し残念な気がしました。


・原作を読んでの感想

気に入った作品は原作を読むようにしているのですが、原作とドラマとの違いが有るのはもちろんなのですが、ドラマを見て感動した部分が原作には無い部分でありました。
脚本家の勝利と言ったところでしょう。私は原作とこのドラマどっちが好きかと聞かれればこのドラマのほうが好きですし、「読まなくても良かったかな」と思います。しかし、原作あってこそのこのドラマなので、素直に作者に敬意を表したいと思います。