「ザ・ロード」 2009年公開アメリカ映画
監督 ジョン・ヒルコート
主演 父役 ヴィゴ・モーテンセン 子役 コディ・スミット=マクフィー
原作 コーマック・マッカーシー(ピューリッツァー賞)
お勧め度 ★★★★☆ 星4つ! 親子の生き残りを描いたシリアス作品。
◆ストーリー
謎の天変地異がアメリカを襲い、ほとんどすべての動植物が死に絶え、文明も消滅。そんな世界に残された父(ヴィゴ・モーテンセン)と息子(コディ・スミット=マクフィー)は、ひたすら南を目指して歩き始める。生き残ったわずかな人々が互いを食らうという狂気の中でも父は決して正気を失わず、息子に人としてのモラルを語り続ける。 シネマトゥデイ
◆父と息子の物語
私は父子の映画が好きなのかもしれませんが、名作映画「自転車泥棒」を彷彿させます。
「自転車泥棒」は、第二次世界大戦敗戦直後のイタリアでの家族が生きることを描いた作品ですが、この作品舞台は世界が死滅に向かい滅びゆく絶望した状況下で生きる父子のストーリーです。
◆絶望的な世界で生きる
主人公の生きる世界は天変地異で、地球の気候が変わってしまい、あたり一面が気候変動による寒さにより、時より雪が降り、それに灰が混ざって映像は全体的に墨絵のように暗めで重々しいトーンで描かれています。
人間以外の生物、動物や植物はほとんどが死に絶えていますので、食料となるものがありません。主人公の眼下に広がるのは絶望の世界です。
主人公の妻(シャーリーズ・セロン)は、誰かに見つかるとレイプされ殺されると怯え、早々に絶望し、子供を旦那に託して死に場所を探しに消えてしまいます。
生き残っている人間たちは飢えと寒さをしのぎながら残された缶詰などの食料を探し求めて彷徨うかありません。中には人間を捕まえて食べる人たちもいます。
そんな極限の救いようのない世界で繰り広げられる、人類の終わりで生きる父子の物語です。
絶望の世界で生き抜く父子は、わずかな希望である南に向かって歩き出します。
◆みどころ
ここに登場する親父は、ランボーやターミネーターみたく全然強くなんかありません。
父親が子供に身を持って生き方を教えながら、弱いながらも全身全霊をかけて子どもをを必死に守り抜く姿をぜひ見てください!その姿に感動します。
主人公を自分に置き換えて考えるのもいいかも知れません。
自分なら生き抜く努力をするのかそれともあきらめ死を待つか?
もし、生きようと決めたらどのような方法で生きどのようにして子どもを守るのか?
どうやって子どもを励まし続けるのか?
「この物語は普遍的だ。子供を持つ親なら誰でもこのような感情、疑念、恐怖、不安を持っている。自分が死んだらどうなるのか?子供はこの先大丈夫なのか?しかし一番気になるのは、自分が傍にいなかったらどうなるのか、ということだ」ヴィゴ・モーテンセン
◆娯楽作品ではない
最近のハリウッド映画ではめずらしく、恐ろしくシリアスな作品で、絶望の中で何もかも奪われたとき、命にどんな価値があるのか?という重いテーマを投げかけていますが、こいった志の高い作品は興行収入に結びつかない事が多いですが、この作品もご多分に漏れず、制作費と興行収入がどっこいどっこいですので興行的には失敗作となりました。
一見舞台設定の似ている作品にデンゼル・ワシントン主演の「ザ・ウォーカー」がありますが、そちらは娯楽作品で、制作費の倍の興行収入がありました。やはりエンターテーメント性のある娯楽作品はヒットしますね。
◆演技
主人公はザ・ロード・オブ・ザ・リングのヴィゴ・モーテンセンが渾身の体当たり演技を披露していて、役作りにかける執念がものすごく感じ取れます。
子役の演技も素直な感じで、ヴィゴも大絶賛で、とてもナチュラルな演技をしています。
◆気になる老人
ところで、旅の途中で老人と出会うのですが、誰が演技しているのでしょうか?
気になって鑑賞後調べてみました。
答えはコッポラの作品に多数出演している俳優さんで、ゴット・ファーザーにも主演している名優ロバート・デュバルです。
※すみませんアップしたときにお亡くなりになられていると書いてしまいましたが、私の勘違いでした(デニス・ホッパーさんが最近お亡くなりになったのですが何故か頭の中でロバート・デュバルさんに変換されてしまいました。)大変申し訳ありませんでした。