正義のゆくえ I.C.E.特別捜査官 2009年公開作品
監督 ウェイン・クラマー
主演 ハリソン・フォード
お勧め度 ★★★★☆ 星4つ! 完成度の高い問題作
この映画はいい!とてもすばらしい映画です
移民の国アメリカは単一民族の日本とはまったく違い多民族国家であり人種のるつぼです。
そんなアメリカには夢を求め多くの人々がやって来ます。
しかし法的に違法に滞在する人たちも多くいます。
現在の違法滞在者は1100万人といわれています。
そんなアメリカの姿を職務と正義(信念)の狭間で揺れ動く移民局の捜査官(逮捕や強制送還などをする仕事)マックス(ハリソン・フォード)を通して描いた重厚な社会派ヒューマンドラマです。
ここで描かれるのは様々な国籍の人物達で、彼らは米国へ永住権や職を求めてやって来ました。
・無断で国境を越え幼い子供を残して国外退去を命じられるメキシコ人の女性
・イスラム家庭のマックスの同僚捜査官の家族
・家族で夢を求めてバングラディッシュからやってきた家族とその少女
・ミュージシャン志願のえせラビの青年
・移民判定官と寝る女優志願のオーストラリア人の女性
・韓国人家族
しかし米国での国籍を取得することの難しさや永住権を獲得することの障害は大きく予想以上に大きく簡単にいきません。
そしてその障害にまつわるいろいろな出来事がこのドラマなのです。
群像劇といえる作品で、多くの登場人物たちを描いているにもかかわらず、見せ方がとてもうまくだらだらせずテンポ良く見れます。心理描写も巧みに描かれているのもいいですね。
『正義のゆくえ I.C.E.特別捜査官』予告編
<感想>ネタばれ含む
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まず私が一番この作品のエピソードで怒りを覚えた部分はおそらく監督の狙い通り、アメリカには、社会主義の中国以上に言論の自由が存在していないと思わせる部分です。
学校で911テロの犯人の気持ちを代弁して語った少女のエピソードです。
「犯人は卑怯者といわれていますが、卑怯者は同胞のために命を投げ出したりしません」と少女は学校で発言しました。
校長の報告によりFBIが乗り出し少女を危険分子と決め付けて監禁してしまいます。
そしてその家族に対して①自主退去②法廷で争って退去③家族の一方をを退去(家族離散)の3択を迫ります。
どれをとっても最悪の結果です。
これはある意味国家的な暴力といえるかもしれません。
そしてこのことは逆に言えばテロの恐怖に震えるアメリカの弱さを如実に物語っているといえます。
※もともとこのI.C.E.という組織は2001年の911テロが起きた後の2003年にできた組織です。
ハリソン・フォードは、多くの娯楽作品に出演してきましたが、それとは別に社会派ドラマにも結構顔を出します。
この作品にはシリアスで娯楽的要素はまったくありません
どこにでもいるような、素朴で誠実で正義感の強い人物になりきっています。
結局マックスは自分の正義を自分なりに責任を持って実行します。
つまり国の仕事とは別に自分の正義を実行するのです。
特にメキシコ人女性とのたった数分の会話だけで夜も寝れず、終いには子供を引き取り身銭を切ってメキシコに送り届けます。
さらに、メキシコ人女性が死亡したことも自ら出向いて両親に報告しに行きます。
邦題が「正義の行方」となっていますが、結局正義はどうなったのか?
私が思ったのは間違いだらけの国の正義ではなく、個人の良心に基づきとった行動こそが正義であり正しいのだと思い、ものすごく勉強になりました。
この作品は、危険をかえりみずにピストルもって悪漢に立ち向かう単純明白な、勧善懲悪ものではありませんが、本当の武器はピストルでは無く正しい心なのだと思いました。
そんな、主人公マックスは、見事正義を実践出来たのだと思います。ハリソン・フォードは見事にマックスを演じました。
残念な部分は韓国人の少年が何もなかったように、式に参加している部分です。
普通ならパニック症候群になって、精神がずたずたになりそうなはずですが、
あっけらかんとしていたのは・・・・かなり違和感がありました。