かけてあるはずの布団がめくられて、その寒さで頭がハッキリとした。



私「ちょ…ちょっとあせる


潜り込んで来た龍はがっちりと私の体を抱きしめ、その力を緩めようとはしなかった。

私はとにかく焦るショック!こんなところを誰かに見られたりしたら…叫び


一応腕の中でもがいてみたが当たり前に敵うはずもない。

それどころか、もがけばもがくほど龍の腕は強さを増した。



私「ねぇ、みんないるんだよ?」


龍「・・・・・・彼氏、いるって本当?」


人の話は無視かよむかっとムカッとしたけれど、一方で龍の弱々しい声でさっきの怒りはやっぱりこのことに対してのことだったのかと冷静に確信していた。


私「うん、本当」


龍「いつから?」


私「つい最近だよ。そんなこと龍に関係あるの?」


龍「・・・・・・」



私の言葉に龍は黙ってしまった。

いくら元恋人同士とはいえ、別れているのだから相手を束縛する権利はない。


龍のことだからきっと、私がこの先も龍のことだけを好きなのだと勘違いしているだろう。

(確かにこの時は好きだったのだけれど…汗)一度手に入れたものはいつまでも自分のものだと思い込むのが龍だ。


でも実際は違う。私がいつ誰と付き合おうが自由なのだ。

その現実を突き付けられて、龍は今明らかに戸惑っている。



龍「俺、そのこと聞いてから少し考えてみたんだ」


私「何を?」


龍「俺さ…お前のこと誰かに取られるのが嫌だ。誰かのものになるのが嫌だ」



それは低く、小さな声だったけれどハッキリとした口調だった。



私「そんなこと…勝手だよ!別れを言ってきたのは龍でしょう?」


龍「そうなんだけど…」


私「第一、アツコさんはどうしたの?私あれから何も知らないし」


龍「あいつとは別れたよ。あいつには婚約者がいただろ?そっちに戻って行った」



あぁ、これでやっと理解できた。

龍は「アツコ」に本気で惚れていたから私を捨てて一緒にいたのに、「アツコ」にとってはただの遊び(暇つぶし)でしかなかったのだ。

それで一人でいたくない龍は寂しくなって私のところに来たわけだ…。

なんとも単純明白。

だが、この後の言葉で呆れていた私の心はどこかに行ってしまった。


龍「ハルとやり直したい」



私の胸は激しく踊った。

これまでの龍の言葉や態度を考えれば、戻ってもいいことはないことなど分かっているのに、このときの私にはそんなこと考えられない。

龍が私のことを欲している…その出来事に感動すら覚えていた。


自分勝手で我儘で俺様で、私に対して優しい言葉をかけてくれたことなんて数える程度しかない。

いつだって私のことを見下していたし、都合のいい時に体しか求めなかった。

そんな龍が私とやり直したいと言ってくれている…。



私「でも…もぅ2度と同じ思いをしたくない…」


私の言葉が出終わる前に、私の唇は龍の唇で強引に塞がれてしまった。

龍はそのまま布団の中で私を抱いた。

私も抵抗することはなかった。


完全に二人の世界にハマってしまっている…ガーン

「はい」と返事をしなかったけれど、この行為で返事をしたも同然だった。


この後に続く地獄が待っていることなど予想もできておらず、私は束の間の幸せをかみしめていた。

ペタしてね

夜、ご飯を食べ終わりお風呂に入った後は自由時間となる。

とは言っても合宿すべての時間はほとんど自由時間で、他の宿泊客に迷惑をかけなければ何をしても怒られることはない。


部屋は男女で別れてはいたが、隣同士ふすま一枚で隔てられているだけだった。

もちろんそのふすまを取っ払って男女共同部屋で使うことにした。



参加メンバーの年齢は小学生から大人まで幅広く、ほとんどが昔からの知り合いだ。

初対面の子も何人かいたがすぐに仲良くなれ、まるで修学旅行のようなにぎわいと楽しさだった。



修学旅行といえばお楽しみは夜の語らいだろう。

私達は男女関係なく枕を並べて顔を突き合わせた。


最初はほぼ全員で話をしていたが、次々と眠気による脱落者がふえ、最終的に私と龍を含めた4人だけとなった。

時刻は0時を回っている。

会話の内容は他愛もないバカな話ばかりだったが、4人ともなると内容はだんだんと深いものになってきた。



友「…で、君たちは別れたの?」


一人の男友達が急に核心をついてくる。

…いや、そりゃ聞きたくもなるだろう汗

バスの時やスキー場の行動を見れば疑問に思うのは仕方ないことなのだから。


私「うん、別れたよ。だから今は友達としている感じ」


友「そう…だよね?そう聞いてたからさ」


私「あぁ…ごめんねあせるでも私、もう付き合ってる人いるから」


友「・・・・・・えぇっ!?



…驚くのも無理はないと思う汗

実は書いてはいなかったけれど、このスキー合宿の前にサークルとは別の男の子と仲良くなり意気投合音譜

そのまま交際に発展していた。


でも意気投合したとはいってもお互い「好き」かと言ったらそうではない。

私もその男の子も実は失恋直後。

お互いの寂しさや傷を舐めあうように付き合いを始めただけだった。


私は多くを語らないし、友達も経緯などは聞いてこなかった。

ただただ驚いて布団の中でバタバタと動いている(笑)


すると、私の隣にいた龍が急に立ち上がり、一人部屋を出て行ってしまった。

その行動は荒く、歩き方やドアの閉め方を見ると不機嫌さを露骨に表わしていた。

私と友達2人は龍の背中を黙って見送ると、一層小さな声で話し始めた。



友「…なんか、不機嫌じゃない?」


私「みたいだね…」


友「ハルが彼氏作ったことに怒ってるんじゃないの?」


私「いや、それは勝手でしょ汗



うぬぼれかもしれないと思ったが、実際に間違ってはいないようだった。

会話の流れを見ても龍が怒る要素は一つしかない。



友「絶対そうだって!それ以外に怒る理由がないし!」


私「だって、あっちから別れようってきたんだよ!?」


友「まぁ…龍のことだからね…」



その友達の言葉を聞いて私達3人は頷くしかなかった。

そうだ、相手はあの龍なんだ…ガーン

自分から別れようが何だろうが、自分の意にそぐわないことは受け入れられない。

いや、受け入れようとはしない人だ。


とか何とか言ってはいるが、実際龍がやきもちを焼いてくれることが内心嬉しくてたまらない。

彼氏がいる身でおかしいけれど、本音は龍のことがこの時も好きで好きで仕方なかった。

申し訳ないことにこの「彼氏」とは寂しさで付き合ったに過ぎない。

キスもしていなければ手を繋ぐこともしていないし、したいとも思ってはいなかった。

(最低ですね…ガーン



私「そのうち帰ってくるでしょ、放っておこう」


友「そうだね」


平常心を保ちながら、私は友達との話を楽しんだ。

龍はしばらく帰ってこなかったが、機嫌の悪い龍に関わるとロクなことがないと誰もが知っていたので、迎えに行くこともせず言葉通り放っておいた。


時刻は2時を回っている。

今まで眠気がなかった私達にもやっと睡魔が襲ってきた。

次第に言葉数が減り、返事もまばらになり、しばらくすると辺りは暗闇と静寂に包まれた。

私は夢と現実の狭間を気持ちよく彷徨っていて、いつの間にか龍が戻ってきたことにも気付かなかった。


静かに戻ってきた龍は辺りを見回し、全員が寝たことを確認すると、私の隣にある自分の布団ではなく私の布団に潜り込んで来た…。

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合宿所に着いた時、時間はお昼を過ぎていた。

天気はすこぶる良くて晴れスキーをするには最高の状態だ。

チェックインを済ませた私達は荷物を運び、さっそくスキー場へ向かうことにした。


スキーの道具は全てスキー場で借りることになっている。

合宿所からスキー場も近くてリフトも乗り放題だった。


今回参加したメンバーは全員スキーの経験者。

スキー場に着いた途端にそれぞれ自由に滑り出した。



私も幼いころから両親に連れられて何度もスキーを経験している。

が、あまり得意ではないので緩やかな斜面をノンビリ滑るのがいつものパターンだ。


いつものようにリフトに乗り込む。

隣には…もちろん龍がいた。



私「寒いねー」


龍「超寒い!でも楽しいべ!!」


私「スキーやったことあんの?」


龍「あるし!でもスノボの方が好き」



と、会話は至って普通。

バスの中では接することができないけれど、ゲレンデでは行動は自由だ。

自然と一緒にいるのは龍となる。


初めて龍(と司)に会った時から一緒にはしゃいで遊んでいた為、なんだか不思議と波長が合う。

今どこに行きたいのか、何をしたいのかなどなんとなく分かってしまうのだ。

なのでやっぱり行動するのは龍と二人になる。

それはそれでこの時は特に問題はなかった。



サークルでのこういった遊びで、龍は子供のようにはしゃいで遊びまくる人だった。

『楽しいことや興味のあることは手を抜かずに率先してやるビックリマーク

それは司といたころから変わらない。

そこが龍の良い所なんだけれど、あくまで「自分にとって楽しいことや興味のあることだけ」なのが玉に瑕汗

興味がなければ平気で見ないふり、知らんぷりダウン

けれど私も龍の楽しそうな顔を見るのが何より好きだった。



私はとにかくスキーを楽しんだ。

自分が滑っていると仲間たちも上の方から次々に降りてくる。

時々こけたりしながら何度も何度もリフトに乗った。



スキーを終える頃、辺りはだんだんと夕焼けの色に変わり始めていた。

よくよく見ると遠くに暗い雲が迫ってきている。


友「じゃぁ宿舎に戻ろうか」


その声で全員が宿舎へと向かった。


ただ私はこの時まだ気付いていなかった。

この日の夜に間違いを犯してしまうことに…。


この合宿から龍との長く辛い付き合いが、また新たに始まろうとしていた…。

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