診察を終え、エコー写真をもらって病院を出る。
出口では一足先に龍が待っていた。
龍「終わった
」
私「うん」
なんだかうまく話ができない。
お腹にいるのだと改めて実感したものの、今後のことを話すのが怖かった。
龍は待合室で寝ていたようで、寝起きの顔をしている。
龍「手術いくらだって
」
その言葉を聞いてハッ
と龍を見た。
龍はこっちを見ない。
私「15万…」
言葉にはしなかったがやっぱり…という言葉が浮かぶ。
『堕ろす…ってことだよね』
きっと、いや絶対に龍はその結論を出すだろうと分かってはいた。
でも少なからず願いのようなものを持っていた。
龍に「考えよう」と言って欲しかった。
結果的にその結果に辿り着いてしまっても、ちゃんと話をすることに意味があると思った。
でも怖くて切りだせなかった自分はズルイのかもしれない。
龍「高いな、それは無理。病院探しといて」
それだけ話をして駅に向かった。
龍「お腹空かない?」
私「・・・・・・」
そういえば龍と会ってからは何も口にしていなかった。
でもお腹なんて全然これっぽっちも空かない。
龍「マック
行こう」
私の答えを聞かないまま龍は私をマックへ連れて行った。
どうせ嫌だと言っても聞いてはくれない。
つわりのことも再三話していた。
食べ物が辛いってことも。
揚げ物なんてもってのほか、匂いはもちろん考えただけでも吐き気がする。
そんな私を余所に目の前でセットメニューを食べ始めている。
もぅ本当に私のことなんて考えてないんだ
ショックというよりも呆れる。
龍「お前もなんか食べろよ。一人で食べてるのって嫌なんだけど」
…いや待て待て。
この人は人の話を聞いているのか

私「気持ち悪いんだけど…」
龍「食べろよ」
有無を言わせない。龍はいつもこうだ。
楽しいことや自分の興味があることに関しては笑顔で実行するが、自分の嫌いなことや意にそぐわない事に直面すると威圧的な態度を取る。
とは言っても私に対してそんな態度を取ったことはない。
常に傍にいることでそんな態度をしている龍を見てきているのだ。
でも今こんなくだらないことで龍は私に威圧的な態度をしている
仕方なくポテトを口へ運んだ。
吐き気はするが、とにかく龍に言われるがまま食べる。
もうそんな態度を取られるのは嫌だったからだ。
涙が出そうになった。
その日一日で感情がぐちゃぐちゃだ。
龍の仕事の時間になり、駅で別れてから一人地元の駅に辿り着くと、駅のトイレでさっき食べたポテトを全て吐いた。
そこでその日初めて少し涙が出た。