大通りで龍は待っていてくれた。
お金も少ししか持っていないこともあって、タクシーの料金は龍が払ってくれた。
私「・・・・・・」
龍「・・・・・・」
タクシーを降りた私も龍も何も言わない。
別れ話をする為に来たのに、いざとなると言葉が出なかった。
すると何も言わないまま龍は私に背を向けて歩き出した。
慌てて追いかける
歩く速度の速い龍が私に歩幅を合わせてゆっくり歩いてくれているのを見ると、私を突き放してはいないようだ。
しばらく歩くとあるアパートの前で足を止めた。
そこは以前キャバクラで仲良くなった男性の家ではなく、知らないアパートだった。
龍は何も言わなかったがまた別の友人の家に転がり込んだようだった。
でも今家が変わったことを聞いたりするつもりはない。
そんなことの為に来たのではないのだから…。
龍「入れよ」
玄関のドアを開けたまま私に催促した。
私「お邪魔します…」
おそるおそる足を踏み入れる。
そこは1Rで布団だけが敷かれていて、生活感はなく寝るだけの部屋という感じだった。
男性しか暮らしていないこともあり、お菓子の袋やコンビニ弁当の残骸が転がっている。
司と暮らしていた頃の家は綺麗だったので、そんな状態の部屋を見たのは初めてだった。
龍は部屋に入るとすぐに布団の上に座った。
龍「時間も時間だし、今日は寝よう」
どこに座ったらいいのか分からずに立ち尽くしている私に、龍は眠そうに声をかけてくる。
龍に会ったことで少し安心した私も少し眠たさが襲ってきていた。
返事をしないでいると龍はゴソゴソと布団に潜り込み、私に布団をめくってみせた。
ここに入って来いということだ。
さっきまで別れ話をしていたのに一緒に寝るとは…
話し合いをしに来たのに…。
でも龍は今にも瞼を下ろしてしまいそうな勢いで話し合いになるわけもない。
押しかけてきてしまったこともあり、今回は龍の提案を飲むことにした。
龍のめくった布団に潜り込むと、慣れない布団にモゾモゾ動きながら定位置を決める。
その間に龍はスゥッと眠りについてしまった。
隣で眠った龍の横顔を見てなんだか悲しくなる。
明日の学校をサボり、親に心配をかけて何をしてるんだろう…
でも何かせずにはいられない。
外は少しずつ明るくなり始めていた。
なんとも言えない感情のまま私は目を閉じた。