地元の駅に着いた時、駅の入り口に両親が迎えに来ていた。
駅から家まで歩いて3分の場所だというのに…。
母は私の姿を見ると「帰ってきた…良かった…」と泣きだした。
父は母をなだめながら私に帰ろうと微笑んだ。
今になれば、ものすごく親不孝で心配をかけたと思うことができるものの、当時の私には親に対して謝罪の気持ちなどほとんどなかった。
両親は事情を知らないから仕方がないけれど、泣きたいのはこっちだよ…!と怒りの感情さえあった。
父親の言う通り、両親は家に着いてからも私を咎めることはなく、むしろお腹は空いていないかなど気を使ってくれた。
私はこの時のことを思うと今でも涙が出る
母を泣かせてしまったのはこの時が初めてだったし、目の当たりにしたのも初めてだった。
自分が自分の子供に同じことをされたとしたら、きっと両親のように振る舞うことはできないと思う。
私なら怒って問い詰めてしまうかもしれない。
きっと言いたいことがたくさんあっただろう…。
でも言わずに私を許して受け止めてくれた。
そんな両親の優しさが見えない私は、帰ってすぐに自分の部屋へ閉じこもった。
謝罪の気持ちはほとんどなかったが、両親に心配や迷惑をかけたのは自覚している。
気まずくていてもたってもいられず閉じこもるしかなかった。
そしてそのまま眠りについた。
次の日、いつものように学校へ向かった。
両親の顔を見るのが嫌だったので少し早めに家を出る。
もちろん会話なんてない。
龍からの連絡もなかった。
私から連絡することもなく、その日一日何もなかったかのように普通に笑って過ごす。
学校の友達は「昨日どうしたの?」と心配そうに聞いてくれたが、「サボってみた」と笑って返すだけだった。
友達も事情を知っていたので察してくれたのか、それ以上詮索することはなかった。
学校から帰っても両親はいつも通りだった。
きっと一日心配で仕方がなかっただろうに…。
またいなくなるんじゃないのか、ちゃんと学校へ行っているだろうかと。
でもやっぱり何も聞かずにいてくれる。
そんな両親に少しずつ罪悪感が生まれ始めてきたが、素直に謝ることが出来ずに気まずいままだった。
この時は一日がとても長く感じた。
龍のことで随時頭を占領されてはいたが、それよりも両親と過ごす家での時間がとても苦痛で仕方がない。
それは自分がしてしまったことを悪いと自覚しているからなのだが、とにかくその嫌な感情すべてに蓋をしたかった。
自分は悪いことなどしていない、今を全力で生きているだけなんだと正当化したかった。
この時私は16歳、思春期のど真ん中で早く大人になりたいと喚き散らす子供だったのだ。
やっていることは子供なのに…
夕飯の時以外は自分の部屋にこもったまま携帯電話とにらめっこしていた。
龍から連絡がくるのを待つか、それとも自分から電話するか…。
その時はなぜか気持ちがすっきりしていて、別れに対して寂しさも悲しさも感じなくなっていた。
昨夜からの龍の態度や言葉に幻滅したのか…それとも自分が行動したことで満足したのか分からないが、不思議と「これで終わりなんだな」と受け入れる体制が整っている。
今がチャンスなのだが、自分から電話をするのはなんだか癪だ。
でも放っておけば龍は自然消滅を企んでいるかもしれない。
そんなことを考えつつ、仕事に行っているだろう龍の休憩時間まで待つことにした。
休憩時間は多少の誤差はあるものの、だいたい深夜1時くらいと決まっている。
きっと今夜電話が来る…。
やはりドキドキと緊張したが、覚悟はできていた。
ピリリリリ
ピリリリリ
予想通り1時に龍からの着信。
私はいつものように平常心で携帯の通話ボタンを押した。