私の返事を聞いてからの龍の行動は早いものだった。

次の日は休日だった為、私の予定がないのを知るとデートのお誘いをしてきたのだ。


もちろん私はOK。

龍と会えなくなってしまうと思っていたのに、再びチャンスがきたのだと喜んでいた。




当日、龍の住む街へ電車で向かった。

セフレになったといっても何も変わりはしない。

恋人のように普通にデートできるし、私達は(龍にとって私は2番目にだけど)好き同士なんだと自分に言い聞かせた。

矛盾点や疑問は見ないフリをして…。



龍は駅前で私を待ってくれていた。

私が駆け寄るといつものように笑って迎え入れてくれる。

なにも変わらない、私の知っている龍だ。


龍「じゃぁ行こうか」


そう言って龍は歩き出す。

休日の街は人が多く、特に龍が暮らしている街は商店街がある為ごった返している。


いつもなら腕を組んで歩くのだが、この時は腕を組むことも手を繋ぐこともせずに龍の少し後ろを歩いた。

龍も手をだしてくれることはない。

私たちなりのけじめというか…汗

人前で手を繋いだりするのは恋人限定ビックリマークと言わんばかりに離れて歩いた。



最初に龍が入ったのは工具を扱うお店だった。


私「何を買うの?」


龍「まぁまぁ」



そう言って龍は一人でお店の中を歩き回る。

デートなのに工具…?

頭の中は「?」だらけだが龍はそれに答えてくれない。

見る物のない私はそそくさとお店を出て龍を待つことにした。



龍「おまたせ~」


しばらくして小さな袋を持った龍が出てきた。


私「何買ったの?」


龍「お楽しみ♪」


龍は楽しそうに笑いながらまた歩き出した。

私もそれに続く。

何か作るのかな?と思ったが、次に龍が着いたのは以前二人で来たホテルだった。


私『まぁ…そうだよね』


セフレとはそういうことをする為の関係でしかない。

それを呑んだのだからココにきても何ら不思議ではない…よね。

と、納得はしたが、よくよく考えてみればこんな関係になる前から龍は欲望のままに私を扱ってきたじゃないか汗

何も変わらないんじゃないか…?と思えてくる。


そんなことを一人で考えているうちに龍は先に入ってしまった。

私もその後に続いた。

ペタしてね

私「もしもし」


龍「俺」


私「わかってるよ(笑)」



それからの会話は意外にも至って普通だった。

仕事の話やら親の話やら終始和やかで、前日までのギスギス感など微塵も感じられない。

どうやら龍も私と同様に何か吹っ切れた感があるように思えた。



私「で、いいんだよね?」


話は私から切り出した。



私「これで終わりなんだよね?」


龍「…そうだな」


私「そっか、わかった」


龍「ごめんな」


私「いいよ、分かってたし。アツコさんでしょう?」


龍「あぁ…話とかしていたら気になり始めてさ…」


私「そんな気がしてた(笑)これは浮気じゃないなって」


龍「そうだよな、ごめん」



話している内容は暗いが、お互いの口調はなんとも明るいもので、自分たちのことと言うよりかは誰か他の人たちのことを話しているような感じだった。


龍と付き合いだして3年。

いっぱい悩んだしいっぱい苦労した。

司との別れもあった。


私達は時間の許す限り付き合い初めからの思い出話に花を咲かせた。




私はこの瞬間も龍のことが好きだった。

できるならやり直したいし、別れなくてもいいものならそうしたい。


でも龍が私といることを望んでいないのなら仕方がないじゃないか。

嫌々付き合ってもらうのは嫌だ。


そう思ってこの別れを無理やりにでも受け入れたのだ。



けれどこの「龍が私といることを望む」ということ「付き合ってもらう」ということ…。

この考えがいけなかった。


今できるならこの時に戻って自分に言ってやりたい。

「バカな考えを持つのはやめなさいビックリマーク」とガーン



私はもともとネガティブ思考の人間なので、「○○してもらっている」という考えが大きい。

こんな私と付き合ってくれる…こんな私と一緒にいてくれる…。


今でこそ治ってきて当時の重症っぷりからするとカワイイものなのだが、この時は全盛期で(笑)ネガティブ思考を垂れ流しながら生きているようなものだった。


そして付き合っている(いた?)のは、人の弱みに付け入るの大好きドキドキ自分の言うことを聞く人大好きドキドキな龍であるガーン


この時も私はまんまとその弱さに付け入られ、自ら龍の作戦に飛び込んで行ってしまった…叫び



私「でもさ、今まで側にいた龍がいなくなるのはやっぱり寂しいなぁ」


龍「そうだなー」


私「まぁ仕方ないんだけどね」


龍「じゃぁさ…これからも会おうよ。嫌いになったわけじゃないし」


私「でもアツコさんがいるでしょう?」


龍「そうだけど、アツコには婚約者がいるんだよ?まだ切れていないし…。俺だってお前に会えなくなるのは寂しいよ」


私「・・・・・・でも」


龍「セフレでもいいじゃん、お互い好きなんだから」



セフレという言葉には躊躇いがあったが、そんなことよりも私は龍と一緒にいられるということが何よりも重要だった。

好きな人といられる…そして龍も私といることを望んでいる…?


私は龍の側にいられるならと、二つ返事で受け入れた。

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