(今回も、私小山田が感じたことを雑多につづっていきます)

 

野球選手がホームランやヒットを打ったり、ゴルフ選手がカップイン(ホールイン)した時などに、「ガッツポーズ」をすることがありますが、これを直訳して 'guts pose'と言っても和製英語なので通じません。gutは本来、「内臓、腸、はらわた」の意味で、口語で「勇気、根性」の意味もありますが、He did a gut pose. などとは言えません。

 

「ガッツポーズ」の由来は、1972年にボーリング雑誌『週刊ガッツボウル』で、ストライクを出したプレイヤーが拳を突き上げて喜んだ時の動作を名付けたという説や、1974年に当時ボクサーで現在はタレントのガッツ石松さんがこの動作をしたことで広まったなど、諸説あります。

 

では、「ガッツポーズ」自体を英語で何というかと言えば、定訳はないものの、名詞ではfist pumpやvictory poseでしょう。「彼はホームランを打った時にガッツポーズをした」なら、

 

・He raised hie fist (in victory) when he hit the home run.

 

となります。「ガッツポーズをした」で使う動詞は、raisedの他に、pumpedやclenchedも可能です。

 

(今回も、私小山田が感じたことを雑多につづっていきます)

 

次の2文は現在完了形で文法的には正しいものの、1つは用法が間違っています。

なお、主語はどちらも元The Beatlesのメンバーで実在の人物です。

 

(1)John Lennon(1940~80)has visited Japan.

(2)Paul McCartney(1942~)has visited Japan.

 

答えは、(1)です。

過去形が「過去の1点」のことを述べており、現在とは切り離されているのに対し、

現在完了形は、過去の1点が現在まで何らかの関わりを持っています。

つまり、「経験」した事柄が現在と結びついているので、人物でいえば

「存命者」であることが条件となります。よって、故人が主語である(1)は正しくないことになります。

人物に限らず、団体名でも同じです。

 

(3)(?) The Beatles(1962~70)has visited Japan.

(4)The Rolling Stones(1963~)has visited Japan.

 

もっとも、ビートルズの来日は過去の1点で切り離されるものではなく、

その後の日本の音楽界のみならず文化全体に多大な影響をもたらしましたので、

おそらく(3)は可能でしょう。

 

また、作家や作曲家名がその作品を表す場合もあるので、

 

(5)(?) Mozart has been loved for a long time.

 

は、人物としてのモーツァルト(1756~1791)は故人なのでその意味では正しくありませんが、

作品を表す場合(Mozart's works have been loved~.)は可能です。

 

 

 

(今回も、私小山田が感じたことを雑多につづっていきます)

 

83. The BeatlesのLady Madonnaの歌詞より

 

2022年は、イギリスのロックグループThe Beatlesのデビュー60周年です。

様々なヒット曲がある中で、1968年に発表されたLady Madonnaの歌詞で、気付いたことがあります。

この曲は、たくさんの子どもを抱えて日々奮闘する女性を描いています。その中から、3ヶ所引用します。

 

Monday’s child has learned to tie his bootlace
See how they run

月曜の子どもは靴ひもの結び方を覚えた

ごらん、あんなに走りまわっている

 

Lady Madonna, baby at your breast
Wonders how you manage to feed the rest

(間奏)

See how they run

レディ・マドンナ、赤ん坊にお乳をやりながら

どうやってほかの子たちに食べさせようかと思案する

ごらん、あんなに走りまわっている

 

Thursday night your stockings needed mending
See how they run

木曜の夜にはストッキングがぼろぼろ

ごらん、あんなに伝線している

(作:Lennon-McCartney、訳:奥田祐士)(TOCP-71015-16、2009年9月9日)

 

この歌詞の中に、See how they runというフレーズが3回出て来ます。

2回目のtheyはthe rest(of the children)(お乳をあげている赤ん坊以外の子どもたち)、

3回目のtheyがstockingsを指していますが、1回目のtheyに疑問を感じました。

訳は、2回目と同じ「ごらん、あんなに走りまわっている」となっているので

こちらなど、この曲の訳詞を載せている複数のサイトも同じような訳でした)、

theyがchildrenつまり「子どもたち」を指しているのかと思いきや、

1行前に出て来る歌詞(Monday’s child has learned to tie his bootlace)には

Monday's childで単数となるので、代名詞がtheyにはなりません。

 

そこで、他に複数形かそれに近い名詞がないかよく見ると、bootlaceがありました。

bootlace自体は可算名詞で単数形ですが、靴がa pair of shoesのように1対で1つのものとして

扱われますので、両方の靴ひもを結んでいた可能性があります。

また、runには'to move too fast or in an uncontrolled way'(LDOCE)「速くすぎたり制御不能な状況で動く」

という意味もあります。そうすると、このSee how they runのtheyはbootlace(靴ひも)で、

runは「絡まっている」という解釈が可能です。

つまり、1回目のSee how they runは「ごらん、あんなに走りまわっている」ではなく、

「ごらん、靴ひもが(うまく結べなくて)絡まっている」という訳の方が、3回のSee how they run

異なった意味を持たせようとした作者の意図が反映されていると思います。