80.3.「暑い」の意味のwarmとhot


前項で述べたように、少なくともアメリカ英語では「暑い」はことをwarmを使って表していることがある。一方、hotも「暑い」意味であるとされている。しかし、warmとhotが全く同じ意味であることはあり得ないという私の言語学的仮説からして、この二語は使い分けられているはずである。もし全く同義なら、どちらかの語は不要ということになり、英語から消え去ってしまうはずだからである。

そこで知人の米国人にこのことを訊いてみると、次のような説明を得たのである。

warmの意味範囲は「温かい」から「暑い」までカバーしているのに対し、hotは、例えば鉄板やガスやコンロにかけてある鍋が熱くなって、うっかり触れたら、思わず指を引っ込めた時のような熱さのいことである、というのである。また、真夏の昼下がりが午後、太陽で浜の砂が焼けつくようになっていて、そこへ裸足(はだし)でうっかり歩いて、「熱い」と叫んでしまう時のあの暑さがhotである、というのである。

そういえば、Tennessee Williamsという米国の劇作家の作品の一つに、A Cat on the Hot Roof(訳題:『焼けたトタン屋根の上の猫』)というのがあった。この、陽が当たって熱くなったトタン屋根は、まさにhotである。夏の暑い日の暑さは、いくら暑くてもこういった熱さではない(少なくとも米国では?)。warmの範囲の度が高い、というあたりであろうか。

80.2.四季と寒暖の形容詞


世界中どこでも「四季」があるとか、日本はいま冬だから世界中どこでもいま冬である、などと思っている人は、一般教養不足である。

私が東京大学人文科学研究科言語学専攻の学士として学んでいた頃、私の指導教官の服部四郎先生(当時教授)は、英仏独など日本語以外の言語に、それらのネイティブスピーカーを使ってのフィールドワークをすることをすすめられていたので、その頃は東京などにかなりいたインドネシア人留学生、フィリピン人留学生を使って、いろいろと私なりのフィールドワークを積んでいたのであった。

まずインドネシア語基礎語彙を集める調査をしていたのであるが、そのごくし始めに、当然のことながら、インドネシアには四季があるかどうか訊いたところ、dry season, rainy seasonの二季しかないということであった。

またいまは日本やその他の北半球にある国々で冬であるが、2月の真冬は南半球の down Under では真夏でありシドニー海辺では水泳客でにぎわっていたのである。

ここでは一応、 いわゆる「四季」を例にとって話しをすすめることにする。戦時中の旧制中学1年生の3学期始めの頃、四季名と各季節の寒暖形容詞をセットにして習ったものである。

・spring-summer-autumn-winter
 warm -hot  -cool -cold

戦争も終わって、占領軍(米軍)が都内に駐留し、同時に米軍将校と家族のために、英語の放送(当時はWVTR、後の Far East Network (FEN)、現在の American Forces Network (AFN))が始まって、それが私たちにも聴けるようになって、私など夢中になって聴き楽しんだものである。

この放送の番組の中に定時に天気予報があって、真夏なのに

・It'll be warm later in the afternoon.

と言っていたので、warmは「暑い」こともカバーしているのだと知った次第である。