J・K・ローリング『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』 | 文学どうでしょう

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立宮翔太の読書ブログです。
日々読んだ本を紹介しています。

ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団 ハリー・ポッターシリーズ第五巻 上下巻2冊セット(5)/静山社

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J・K・ローリング(松岡佑子訳)『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』(上下、静山社)を読みました。シリーズ五巻目になります。

ここ数年で本をめぐる環境は大きく変わりました。電子書籍端末が登場したからです。ぼくが最初に買った時は輸入しなければなりませんでしたが、今ではkindleも、日本で普通に買えるようになりました。

不思議なもので、読書好きであればあるほど紙の本への愛着が強いものなんです。読めればなんでもいいというのではなくて、本そのものが好きという感じで。なので、自然と電子書籍に抵抗が生まれます。

ぼくもその気持ちは分からないでもないですが、もしもみなさんが英語を勉強したい、あるいは、英語で小説を読んでみたいというのなら、電子書籍端末は間違いなく買いですよ。特におすすめがkindle。

Kindle Paperwhite(ニューモデル)/Amazon

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文字サイズが自由に変更できるので、英語が苦手な方は文字を大きくして読めますし、もしも分からない単語があったら、その単語を長押しするだけで搭載されている英和辞書が意味を教えてくれるのです。

昔は紙の辞書を使って読まざるをえず、後に電子辞書が出て少しは楽になりましたが、それでも単語を調べるのに時間がかかりました。それがすべて指一本で出来るわけですから、時代は変わりましたねえ。

新しいkindle Paperwhiteには「単語帳機能」が加わったので、調べた語が自動的に登録されていて、後で単語帳形式で復習しなおすことが出来ます。これが結構よくて、勉強には役立つ機能だと思います。

日本に「青空文庫」があるように、著作権が切れた小説(日本は作者の死後50年、アメリカなど世界の多くの国では作者の死後70年)が読めるサイトに、「プロジェクト・グーテンベルク」があります。

 → Project Gutenberg(プロジェクト・グーテンベルク)

いわゆる古典的名作というような文学作品は、ここでもうほとんどが無料で読めるので、英語が多少出来れば、世界の名作が無料で読み放題なわけです。なので、電子書籍端末があるとすごく楽しいですよ。

kindle Paperwhiteには、5000円ほど高い3Gモデルもあります。どう違うかというと、3Gモデルの方は常にネットに繋がるもので、普通の方はWi-Fiを使わなければネットに繋げないものになります。

パソコンや携帯など、他になにかしらネットに繋がるものがあるならそちらでも本を買うことは出来るので、基本的には3Gモデルの必要はないと思います。ぼくが持っているのも、3Gモデルではない方。

ただ、「Wi-Fiってなに?」という方は、Wi-Fiを使える環境(喫茶店など)を見つけるのが大変かもしれないので、3Gモデルを買っておくと楽かも知れません。月々のランニングコストはかからないので。

あとみなさんが迷うのは、純正のカバーを買うかどうかだと思いますが、カバーをつけると正直重くなるので、ぼくは使ってません。持ち歩く時は百均で買った袋に入れています。まあその辺りはお好みで。

この辺りで話を「ハリポタ」と繋げていきますが、小説家の中には電子書籍での販売を嫌う人も結構多く、「ハリポタ」シリーズの作者であるJ・K・ローリングもずっと電子書籍化を拒み続けて来ました。

2012年に、ようやく全世界待望の電子書籍解禁となったのですが、それがすごいんですよ。「Pottermore(ポッターモア)」というサイトを立ち上げて、そこでの独占販売という形を取ったんです。

「ポッターモア」で買った電子書籍は、KindleやiPadなど色々な端末で読むことが出来るわけですが、サイトを立ち上げての独占販売というのは他にあまり例がなく、やはり大人気シリーズならではですね。

さて、シリーズ第五作にあたる『不死鳥の騎士団』は、完全ではないものの復活を遂げた恐るべき闇の魔法使いヴォルデモート卿に立ち向かうため「不死鳥の騎士団」という組織が再結成されるという物語。

この辺りからこのシリーズはどんどんシリアスさを増していきます。

作品のあらすじ


新学期前の夏休み、いつものように親戚のダーズリー一家と過ごしていたハリーはありえない出来事に遭遇します。アズカバンの監獄を守る吸魂鬼(ディメンター)たちが、プリベット通りに現れたのです。

いとこのダドリーを守るため、守護霊を呼び出して吸魂鬼を追い払ったハリーは、学校の外で魔法を使ってはいけないという決まりを破ったため、魔法省不適使用取締局から退学を命じられてしまいました。

動揺しているハリーの元へ異変を察知した人々、かつて先生として教えてくれていたルーピンやマッド‐アイ・ムーディたちが駆けつけてハリーを、グリモールド・プレイス十二番地へと案内してくれます。

人間の世界には十二番地はなく、十一番地と十三番地の間にふくれあがるようにして家が現れました。そこに会いたかったロンとハーマイオニーの姿もありましたが、二人を見たハリーは怒りを隠せません。

ヴォルデモート卿が復活を遂げ、忠誠を誓う闇の魔法使いら「死喰い人(デスイーター)」が動き始めていることは確かなのに、自分だけ何も知らされずに、ダーズリー一家の元に押し込められていたから。

ようやくハリーは、ヴォルデモートに立ち向かうための「不死鳥の騎士団」が再結成されたこと、ここが本拠地であることを知らされましたが、成人になっていないため、詳しいことは教えてもらえません。

魔法省の尋問で、自衛のための魔法だったと認められて退学は免れたものの、ヴォルデモートの復活を訴えるハリーとダンブルドアと、ヴォルデモートの復活を認めようとしない魔法省の意見は対立します。

その対立により新しい「闇の魔術に対する防衛術」の先生は魔法省から派遣されることとなり、魔法大臣上級次官でガマガエルのような顔をした魔女ドローレス・アンブリッジに決まってしまったのでした。

必要はないからと実技は教えず、ひたすら教科書を読ませるだけのアンブリッジ先生の退屈な授業に生徒たちは反発しますが、魔法省をバックに持つアンブリッジ先生は、権力で生徒たちを押さえつけます。

「さて、いくつかはっきりさせておきましょう」
 アンブリッジ先生が立ち上がり、ずんぐりした指を広げて机の上につき、身を乗り出した。
「みなさんは、ある闇の魔法使いが戻ってきたという話を聞かされてきました。死から蘇ったと――」
「あいつは死んでいなかった」ハリーが怒った。「だけど、ああ、蘇ったんだ!」
(中略)
「罰則です。ミスター・ポッター!」アンブリッジ先生が勝ち誇ったように言った。
「明日の夕方。五時。わたくしの部屋で。もう一度言いましょう。これは嘘です。魔法省は、みなさんに闇の魔法使いの危険はないと保証します。まだ心配なら、授業時間外に、遠慮なくわたくしに話をしにきてください。闇の魔法使い復活など、たわいのない嘘でみなさんを脅かす者がいたら、わたくしに知らせにきてください。わたくしはみなさんを助けるためにいるのです。みなさんのお友達です。さて、ではどうぞ読み続けてください。五ページ、『初心者の基礎』」(上巻、387ページ)


アンブリッジ先生がハリーに与えたのは恐ろしい罰でした。「僕は嘘をついてはいけない」と何度も書かせたのですが、書く度手の甲にメスで切り裂かれたような痛みが走り、その血がインクになるのです。

やがて、アンブリッジ先生は高等尋問官に任命され、ホグワーツ魔法魔術学校の改革に取りかかりました。授業を見て査定し、ふさわしくないと判断した先生を辞めさせることも出来るようになったのです。

魔法省の意向に沿って書かれている「日刊予言者新聞」も、ヴォルデモートの復活に懐疑的でした。おのずから、ハリーは嘘つきの少年で、ダンブルドアは老いぼれてしまったと思う人が増えていきます。

そんな中、ハリーとダンブルドアを信じるハーマイオニーは危機に立ち向かうためハリーを先生に自分たちで「闇の魔術に対する防衛術」を学ぶグループ、「ダンブルドア軍団(DA)」を発足させました。

特に中心となるメンバーはハリー、ロン、ハーマイオニーと同じくグリフィンドール寮の生徒の、ネビル・ロングボトム。「不死鳥の騎士団」のメンバーだった優秀な両親を持ちながら、いつもどじばかり。

ところが両親の敵の「死喰い人」がアズカバンを脱獄したと知って人一倍練習に励み、ハリーが驚くような進歩を遂げることとなります。

一つ下の学年なのは、同じくグリフィンドールで、ロンの妹のジニー、そしてジニーの友達でレイブンクロー寮のルーナ・ラブグッド。

眉唾ものの記事ばかりのせている雑誌「ザ・クィブラー」の編集長を父に持つルーナは、普通の人がなかなか信じないものを信じ、しゃべり方がなんだか妙にとろくさいので、周りから変に思われています。

屋敷しもべ妖精ドビーによって「必要の部屋」の存在を知った「ダンブルドア軍団」は定期的にひそかに集まり練習に励んでいきました。

しかし、そんな動きが気にくわないアンブリッジ先生は、様々な規則で封じようとし、やがてドラコ・マルフォイの挑発に乗ったハリーは、クィディッチ(ホウキを使った球技)を禁止されてしまいます。

ヴォルデモートの復活、ホグワーツの改革だけで不安で胸が締め付けられそうなハリーたちですが、五年生は「O・W・L(ふくろう)試験」という、将来を左右する重要な試験があり、勉強も休めません。

そして、ハリーにはある悩みがありました。それは、最近ダンブルドアが自分を遠ざけようとしているように感じること。以前のように親しげに話してくれず、監督生には自分ではなくロンが選ばれました。

ヴォルデモートと繋がるような悪夢にうなされるようになったハリーは、ハリーのことを目の敵にしているスネイプ先生から、「閉心術」を習うよう、ダンブルドアに命じられることとなったのですが……。

はたして、暗躍するヴォルデモートの狙いはなんなのか? 魔法省の改革の嵐吹き荒れるホグワーツでのハリーたちの運命はいかに!?

とまあそんなお話です。「O・W・L試験」はかなり大変な試験で、ここで優秀な成績をおさめないと7年生の時に受ける「N・E・W・T試験」のための授業を取ることが出来なくなってしまうんですね。

しかも、「O・W・L試験」や「N・E・W・T試験」の成績というのは、そのまま就職の時にも使われるので、ある一定以上の成績を治めておかなければ、希望する仕事にはつけなかったりするわけです。

試験どころではない状況にもかかわらず、言わば将来を決める重要な試験を受けなければならないハリーたちは、本当に大変そうでした。

魔法省から来たアンブリッジ先生の横暴ぶりには、読んでいていらいらさせられるんですが、ロンの兄たちで、型破りな双子フレッドとジョージが豪快にぶちかましてくれるので、二人の行動にぜひ注目を。

明日もJ・K・ローリングで、『ハリー・ポッターと謎のプリンス』を紹介する予定です。