今週末からロイヤルオペラとMETオーケストラが来日公演を開始し、日本でオペラ三昧で過ごせそうですが、一昨日、2025年のウィーン国立歌劇場の9年ぶりの来日公演が発表になりました。この来日情報は当ブログでも速報的にお伝えしました。

25年に3月に神奈川県民ホールが取り壊し工事で閉館、26年5月に東京文化会館が大規模修繕で休館となり、どちらも近年の建設業界の人手不足と入札不調などで、いつオープンするかは不透明です。新国立劇場は海外オペラカンパニーの公演では貸しませんし、NHKホールは番組収録やN響定期などが優先されるので、海外オペラ公演向きではないです。しかも、ゴミ箱無し・食事禁止・アンコール提供無しの会場で、優雅なオペラは相応しくありません。このような会場不足で、来年のウィーン国立歌劇場来日公演は、超一流の海外オペラを東京で観れる稀有なチャンスになると思います。


来年のウィーン国立歌劇場の来日公演はある意味、東京文化会館の有終の美を飾る手前の素晴らしいプロダクションで構成されています。まず、O.シェンク演出の「ばらの騎士」は説明不要の豪華絢爛な舞台で、このオペラの決定版的な演出で、何度観ても飽きません。この演出で、C.クライバー、A.フィッシャー、ウェルザー・メスト、K.ペトレンコなどの指揮で鑑賞してますが、この演出の上を行くものは無いと思います。この公演を指揮するP.ジョルダンによると、公爵夫人はカミラ・ニールンド、オックス男爵はピーター・ローゼと聞いていて、歌手陣も豪華です。「ばら」と「フィガロ」のどちらか迷う場合は間違い無く、「ばら」の一択になります。P. ジョルダンはウィーン国立歌劇場音楽監督の任期が来シーズンまでですので、この機会は見逃せません。彼はドイツ語が母国語ですが、イタリア語や英語など語学が堪能で、まだギリギリ40歳代でエネルギッシュな方です。


一方で、「フィガロの結婚」は、個人的にはストーリーが今でも意味不明なので、あまり観たいオペラではないのですが、演出のバリー・コスキーは現代演出家で最も人気のある演出家の1人です。色彩感があって、ストーリー設定を踏まえた分かりやすいので定評があります。ウィーン国立歌劇場では、モーツァルトの「ポンテ3部作」を既に演出しているほど評価されていて、今年の10月にはコスキー演出のポンテ3部作がウィーンで公演される予定されてます。このフィガロは23年に新制作されたばかりです。指揮はベテランのオペラ指揮者のド・ビリーで、あまり派手な指揮をしない方です。歌手陣は今年10月の現地でのフィガロの歌手陣に近く、やや小粒感があり、知らない歌手が多いので、ここでは名前を列挙しないでおきます。つまり、ネトレプコのようなスター歌手は出ると聞いておりません。もちろん、これから変更の可能性もあります。


この来日公演は主催者のコスト管理のためか、公演日程を見ると、ハード・スケジュールで、「フィガロ」は土曜・日曜と連日ですし、「ばら」は1日のみ空けて公演になるので、かなりハードに見えます。今のところ、ダブル・キャストとは聞いていませんが、今回のロイヤル・オペラ来日公演は急遽、ダブル・キャストになりましたから、歌手の世界は何が起こるか分からないです。このハード・スケジュールだと、少しでも体調が悪いと来日せず、代役の出る可能性が高そうです。しかし、「ばら」に出演予定のニールンドが昨年4月にベルリンで「ばら」の公爵夫人を歌った2日後に、ウィーンで「ローエングリン」に出演したのを鑑賞したことがありますので、ハード・スケジュールで大役をこなせるパワフルな歌手もいるのだと思います。


〈ウィーン国立歌劇場2025年日本公演〉

「フィガロの結婚」
W.A.モーツァルト作曲
演出:バリー・コスキー
指揮:ベルトラン・ド・ビリー

photo: Wiener Staatsoper / Michael Poehn
2025年
10月5日(日)
10月7日(火)
10月9日(木)
10月11日(土)
10月12日(日)
会場:東京文化会館(上野)

「ばらの騎士」
R.シュトラウス作曲
演出:オットー・シェンク
指揮:フィリップ・ジョルダン
Der Rosenkavalier 2Akt_D5B3677 (c) Wiener Staatsoper_Michael Poehn.jpg      photo: Wiener Staatsoper / Michael Poehn
2025年
10月20日(月)
10月22日(水)
10月24日(金)
10月26日(日)
会場:東京文化会館(上野)