GW中はあまり良いコンサートありませんでしたが、GW明けてからの週末は良いコンサートが目白押しで、先週はノット監督・東響の「大地の歌」を聴きそびれ、ルイージ指揮のN響は2回聴きたかったのですが、タイミングが合わずで残念でした。音楽評論家らのレビューに煽られて、カーチュン・ウォン指揮のマラ9を選択したのが間違いでした。カーチュンと日フィルの関係性は、想像より良くないことは、楽団員からのエピソード含め、先週の下記のブログに書きました↓。


一方で、契約が延長された影響もあると思いますが、ルイージとN響の関係性は良くなってきていると思います。今日は休憩無しのCプロで、コンサート開演前のN響メンバーによる室内楽がありました。ラヴェル「ラ・メール・ロワ」をN響の打楽器奏者で、作曲もしている竹島さんによる編曲で、クラリネット・ファゴット・トランペット・トランボーン・打楽器の5人による演奏です。冒頭部分はこれはラヴェルなのか少し把握できなかったのですが、徐々にラヴェルらしさが出ていました。この室内楽には私服のルイージが1階席で鑑賞していて、ルイージの音楽愛やN響メンバーへの敬意を感じました。


今日の曲目は38歳の若さで亡くなってしまったメンデルスゾーンです。メンデルスゾーンのオーケストラ曲を大別すると、情景的な曲(例: フィンガルの洞窟、スコットランド)と宗教的な曲(例: 交響曲第2番「讃歌」、エリヤ)に別れますが、前半の「夏の夜の夢」は前者、後半の「交響曲第5番」は後者になります。前半の「夏の夜の夢」は誰もが知っている有名曲が入ってますが、メンデルスゾーンが17歳の曲でまだ結婚していないのに、有名な結婚式の曲を書いてしまうところが、モーツァルトのような天才的な作曲家だと思います。《序曲》はルイージらしい快活なスタートで、オケの歌わせ方がとても上手いです。今日のコンマスは郷古さんですが、Vnセクションは本当に綺麗な音を出していました。《夜想曲》はホルンとファゴットによる協奏曲のように大活躍しますが、安心して聴いていられる安定感のある演奏で、そこにVnセクションの美しい演奏が加わり、この上ない幸福感を感じます。《スケルツォ》と《結婚行進曲》も同様に幸福感に満ちた演奏で、ドイツのオケのような重厚感のある低弦を加わって、重層的な演奏を堪能できました。


後半の交響曲第5番「宗教改革」は、昨年4月のムーティ指揮のウィーン・フィル定期演奏会で聴いたばかりで、あまり演奏されない交響曲と認識しております。ゲヴァントハウスのカペルマイスターになるためにユダヤ教からプロテスタントに改宗したと言われているメンデルスゾーン(ルター派の信者)がルターの宗教改革300周年記念のために作曲しました。彼の人生をかけたような作曲過程が全体として感じられ、前半の情景音楽とは異なる次元の崇高な音楽なのです。第1楽章の冒頭の金管はデュナーミクを効かせてながら進めていきますが、「ドレスデン・アーメン」は何度聴いても美しい旋律です。その後の提示分は荘厳な雰囲気の演奏でした。第2楽章でも、木・金管のデュナーミクがあり、美しい光景が思い浮かぶ素晴らしい演奏でした。第3楽章は一転して、哀愁感が漂う曲想になりますが、Vnセクションが美しく表現していました。そのまま第4楽章に入り、フルートの甲斐さんのソロが巧く決まり、N響の秀逸なアンサンブルによって、主部では神聖な雰囲気を出していました。メンデルスゾーンはイギリスに10回に渡って滞在したと言われていますが、この交響曲もイギリス滞在時に書かれており、どことなく、英国王室らしい旋律を感じることがあります。


今日の演奏は本当に美しいメンデルスゾーンで、昨年のウィーン・フィルと同じくらいのクオリティの演奏でした↓。


ですが、先週のルイージによる圧倒的なレスピーギと比べると、今日は低カロリーな曲で、先週のルイージはエネルギッシュで終演時は息が苦しそうでしたが、今日は楽勝な感じでした。また、後半は敬虔な宗教音楽の要素があるため、デュナーミクをつけることの違和感があります。要するにあまりいじらないで欲しかったです。そのため、先週に比べると、感動度合いが低くて、下記の評価になってしまいました(個人内相対評価ですので、ご了承ください)。 


幸福感に浸った後のNHKホール周辺は「沖縄まつり」のようで、先週同様に混雑しておりました。沖縄音楽もガンガン演奏されてました。


(評価)★★★ メンデルスゾーンの美しい演奏を楽しめました

*勝手ながら5段階評価でレビューしております

★★★★★: 一生の記憶に残るレベルの超名演 

★★★★:大満足、年間ベスト10ノミネート対象

★★★: 満足、行って良かった公演

★★: 不満足、行かなければ良かった公演 

★: 話にならない休憩中に帰りたくなる公演 

指揮 : ファビオ・ルイージ

曲目
メンデルスゾーン/「夏の夜の夢」の音楽-「序曲」「夜想曲」「スケルツォ」「結婚行進曲」
メンデルスゾーン/交響曲 第5番 ニ短調 作品107「宗教改革」